〈まとめ〉「健康経営優良法人2023」認定要件・費用に関する主な4つの変更点

最終更新日:2022年8月23日

2022年7月末、第6回目となる健康投資ワーキンググループが開催され、その中で「健康経営優良法人2023」の認定要件に関する素案の発表が行われました。

また、2022年8月22日には、健康経営優良法人の申請受付がスタート。

本記事では、健康経営が重要視される背景とあわせ、健康経営優良法人2023の費用・認定要件・選定基準に関する変更点をまとめています。


目次[非表示]

  1. 1.健康経営は「人的資本経営」の推進に欠かせない要素
    1. 1.1.健康に関する投資は「新しい資本主義」の中でも重要な要素
    2. 1.2.安全配慮義務のレベルを超えた活動で、組織の活性化を目指す
  2. 2.健康経営優良法人2023:申請費用・認定要件に関する主な4つの変更点
    1. 2.1.健康経営優良法人2023では、申請費用の有料化や認定要件等に変更点がある
      1. 2.1.1.変更点①:「申請料金の有料化」
      2. 2.1.2.変更点②(認定要件):「情報開示の促進」
      3. 2.1.3.変更点③(認定要件):「業務パフォーマンスの評価・分析」
      4. 2.1.4.変更点④(認定要件):「データ利活用の促進」
    2. 2.2.変更点①(申請費用):健康経営優良法人2023では申請費用が有料になる
    3. 2.3.変更点②(認定要件):情報/フィードバックシート開示の促進〈大規模法人〉
    4. 2.4.変更点③(認定要件):業務パフォーマンスの評価・分析〈大規模法人〉
    5. 2.5.変更点④(認定要件):データ利活用の促進〈大規模・中小規模法人〉
  3. 3.選定基準の変更点:中小規模法人部門(ブライト500)と健康経営銘柄
    1. 3.1.中小規模法人部門ブライト500の選定に関する2023年の変更点
      1. 3.1.1.●選定方法:健康経営優良法人2022
      2. 3.1.2.●選定方法案:健康経営優良法人2023
    2. 3.2.健康経営銘柄2023の選定基準はどう変わる?
    3. 3.3.健康経営優良法人2023の申請から認定までのスケジュール



健康経営は「人的資本経営」の推進に欠かせない要素

健康に関する投資は「新しい資本主義」の中でも重要な要素

「人的資本経営」というキーワードが注目されるようになりました。

人的資本経営を推進する上で、健康投資・健康経営に注力することは欠かせない要素とされています。

岸田内閣が提唱する「新しい資本主義」の中でも、従業員の活力や生産性の向上につながる取組み、労働環境の改善といった健康投資は、非常に重要な要素であることが述べられています。

また、人的資本経営と健康経営の関連性については、日本経済新聞にて掲載された伊藤邦夫氏(一橋大学CFO教育センター長)と畠山陽二郎氏(経済産業省前商務・サービス審議長)との対談でも大きく取り上げられ、話題となりました。


安全配慮義務のレベルを超えた活動で、組織の活性化を目指す

その伊藤邦夫氏がまとめた「人材版伊藤レポート2.0」では、人的資本経営における健康経営の重要性についても記されています。

同レポートでは、安全配慮義務のレベルを超えた安全確保・健康保持を推進していくことが、社員のエンゲージメントを向上させ、ひいては企業イメージや生産性、業績の向上に期待できるとされているのです。

これには、身心の健康だけでなく「従業員が熱意・活力をもって働ける環境を実現する」といった、ウェルビーイングの視点も大切になります。

人的資本への投資は、教育訓練費等が発生するため、短期的にはコストとしてとらえられがちですが、中長期的な視点でみると、財務指標の改善・資本効率の向上といった、企業価値の向上につながるものであります。

出典:経済産業省「健康・医療新産業協議会 第6回健康投資WG 事務局説明資料」


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健康経営優良法人2023:申請費用・認定要件に関する主な4つの変更点

健康経営優良法人2023では、申請費用の有料化や認定要件等に変更点がある

2022年7月末、健康投資ワーキンググループにおいて「健康経営優良法人2023」に関する今後の運営(民営・有料化)と、認定要件の素案が公表されました。

2022年度との主な変更点は大きく分けて以下の4つとなります。


変更点①:「申請料金の有料化」

それまで国が運営していた健康経営優良法人であるが、2023年度より民営化によるサービス向上を目指すことと、運営コストとして申請料金が導入(有料化)されるようになる。


変更点②(認定要件):「情報開示の促進」

人的資本に関する非財務情報の開示・評価の動向を踏まえ、経営層のコミットメントや施策のアウトプットに関する定量的な情報について、フィードバックシート一括開示項目に追加する。


変更点③(認定要件):「業務パフォーマンスの評価・分析」

業務パフォーマンス指標を活用した健康経営の効果の見える化を促進するため、アブセンティーズム、プレゼンティーズム、ワークエンゲージメントの経年変化や測定方法に関する開示状況について問われるようになる。


変更点④(認定要件):「データ利活用の促進」

効果的・効率的な保健事業の実施のため、企業から保険者に対する「40歳未満の従業員の健診データの提供」について問う。また、健診情報等PHRを個人がマイナポータル等で閲覧可能となる環境の整備及び周知に係る取組みについても問われるようになる。


それぞれの詳しい内容については以下で紹介します。


変更点①(申請費用):健康経営優良法人2023では申請費用が有料になる

健康経営優良法人2023の申請には、運営コストとして大規模法人部門で88,000円(税込)、中小規模法人部門では16,500円(税込)の費用が発生するようになっています。

また、今後の民営化を見据え、日本経済新聞社が補助事業者として選定されました。

これらの変更により、今後は「⑴健康経営に関する情報のプラットフォーム構築」や、求職者向けあるいは投資家向けの媒体における「⑵健康経営優良法人に関する情報発信」といったサービス向上のねらいがあります。

そして、この民営化には、将来的に民間事業者が独自の「健康経営」認証を行うための仕組みづくり、認証取得ビジネスへの拡大等へ発展することが期待されています。

⑴健康経営の情報プラットフォーム構築(ポータルサイト「ACTION!健康経営」のコンテンツの拡充)

・法人規模や地域・業種別に他社の手本となる企業の事例紹介(ユニークな施策を行う中小企業、先進モデルとなる大企業)

・公共性の高い関係団体主催のイベント情報の告知

・健康経営によって得られるアウトカムに関する調査研究の紹介

・各種ステークホルダー視点での特集の掲載(「投資のプロはフィードバックシートをこう見る」等)

・本年度の申請方法や注目のキーワードに関するレクチャー

・地方自治体や金融機関等が提供するインセンティブ情報の一覧 等


⑵健康経営優良法人に関する情報発信

・健康経営優良法人認定の申請受付開始に関する告知広告(配布用チラシとしてのデータのダウンロードも可能とする予定)

・日本経済新聞紙面等での令和4 年度上位認定法人名の発表

・大手転職、就職サイトとのタイアップ企画

・健康経営を日本企業のブランドとして発信する国際シンポジウムの開催 等

出典:経済産業省「健康・医療新産業協議会 第6回健康投資WG 事務局説明資料」


変更点②(認定要件):情報/フィードバックシート開示の促進〈大規模法人〉

認定要件に関する一つ目の変更点は、大規模法人を対象とした「情報開示の促進」です。

2022年3月には経済産業省のウェブサイト上で2,000法人分の評価について一括開示が行なわれました。

また、メンタルヘルス不調や女性の健康等といった健康課題への対策に関する取組みに加え、従業員間コミュニケーションやワークライフバランス等の取組み状況に関する偏差値も開示されています。

そして、健康経営優良法人2023では、開示情報のさらなる活用に向けて、このフィードバックシートに定量的な項目の追加が検討されています。

内容については国際的な非財務情報開示の推奨項目や、基準検討委員会、投資家等の意見を踏まえたものが考えられていますが、具体的には次の2点が挙げられています。

⑴:経営層の関与を示すものとして「経営会議での議題化の内容・回数」

出典:経済産業省「健康・医療新産業協議会 第6回健康投資WG 事務局説明資料」


⑵:社内への浸透をしめすものとして「健康経営施策への従業員の参加率」

出典:経済産業省「健康・医療新産業協議会 第6回健康投資WG 事務局説明資料」


変更点③(認定要件):業務パフォーマンスの評価・分析〈大規模法人〉

認定要件に関する二つ目の変更点も対象は大規模法人のものです。

ここでのキーワードは「企業による自発的な分析の促進」と「共通指標データの収集」。

「企業による自発的な分析の促進」について、前年と同様、従業員のアブセンティーズムとプレゼンティーズム、ワークエンゲージメント等に関する測定の状況が問われることに変更はありません。

しかし、2023年度からは、業務パフォーマンスの経年変化や測定方法に関する開示状況について問われることになっており、同時に「これらの情報をステークホルダーとの対話に活用することが望ましい」とされています。

出典:経済産業省「健康・医療新産業協議会 第6回健康投資WG 事務局説明資料」


また、法人間で比較可能(共通指標)なデータを収集し、業務パフォーマンスに関するデータを有している法人には結果を回答してもらうことになります。

ただし、回答は任意であり評価に用いられることはありません。

出典:経済産業省「健康・医療新産業協議会 第6回健康投資WG 事務局説明資料」


変更点④(認定要件):データ利活用の促進〈大規模・中小規模法人〉

最後は、データの利活用の促進に関する変更点です。これは大規模法人だけでなく、中小規模法人も対象となります。

ここでは「健診情報の活用」と「ヘルスリテラシーの向上」が大きなトピックになっており、2023年度からは、40歳以上の従業員のデータ提供だけでなく、40歳未満のデータについても提供が求められ、かつ、データの形式が問われるようになります。

出典:経済産業省「健康・医療新産業協議会 第6回健康投資WG 事務局説明資料」


また、従業員のヘルスリテラシー向上を促進するために、健診の情報等を電子記録として閲覧可能な環境が整備されているか、ということが問われます。

その背景には、官民双方で健診の情報やライフログといったPHR(パーソナルヘルスレコード)の利活用に関する検討が行われています。

出典:経済産業省「健康・医療新産業協議会 第6回健康投資WG 事務局説明資料」


選定基準の変更点:中小規模法人部門(ブライト500)と健康経営銘柄

中小規模法人部門ブライト500の選定に関する2023年の変更点

健康経営優良法人2023、中小規模法人部門(ブライト500)の選定方法については、既存の項目とウエイト配点が変更となります。

具体的には、既存の項目に加えてPDCAの取組み状況や経営者あるいは役員といった経営層の関与についても評価が行われるように変更される見込みです。

以下にまとめていますので、事前に確認しておきましょう。

なお、選択項目15項目中13項目以上適合していることが条件であり、その上でウエイトによる配点があり、上位500法人が選出されるということは変わりません。


●選定方法:健康経営優良法人2022

・健康経営の評価項目における適合項目数(ウエイト:3)

・健康経営の取組みに関する自社からの情報発信(ウエイト:3)

・健康経営の取組みに関する外部からの依頼による情報発信(ウエイト:1)


●選定方法案:健康経営優良法人2023

・健康経営の評価項目における適合項目数(ウエイト:3)

・健康経営の取組みに関する自社からの情報発信(ウエイト:3)

・健康経営の取組みに関する外部からの依頼による情報発信(ウエイト:1)

・〈追加〉PDCAに関する取組み状況(ウエイト:3)

・〈追加〉経営者・役員の関与の度合い(ウエイト:1)


健康経営銘柄2023の選定基準はどう変わる?

次に、健康経営銘柄2023の選定基準に関する変更点です。

2022年度までは「健康経営度が上位20%」の企業が候補となっていましたが、2023年度では「健康経営優良法人(大規模法人部門)申請法人の上位500位以内」が健康経営銘柄に選定されることが分かっています。

また、健康経営銘柄のブランドや価値を維持する観点から、1業種あたり最大5枠の法人が選ばれるシステムです。

ちなみに、同率が存在し業種5枠を超える場合には、その企業分の枠が設けられます。


健康経営優良法人2023の申請から認定までのスケジュール

健康経営優良法人2023の申請から認定までのスケジュールについては以下のようになっています。

・健康経営度調査回答期間:2022年8月22日(月曜日)~2022年10月14日(金曜日)17時

・健康経営優良法人2023(中小規模法人部門)認定申請期間:20224年8月22日(月曜日)~2022年10月21日(金曜日)17時

・選定・認定時期:令和5年3月頃の予定

以上、健康経営優良法人2023の主な変更点について、そのポイントを紹介しました。

2022年8月からは健康経営度調査等がスタートしましたので、申請に向けて準備を進めて行きましょう。

その際には、ポイントがまとめられたガイドブックもございますので、ぜひご活用ください。




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