女性の健康(子宮頚がん・HPVワクチン編) ~キャッチアップ接種が始まっています!アップデート!!~

日本医師会認定産業医・労働衛生コンサルタント(保健衛生)
松本 理



子宮頸がんは20代から増え始め、40歳代が最も多く新たな診断を受ける「就労世代の女性に多い」ことが特徴のがんです。

他の多くのがんは年齢とともに増加することを考えると、特殊ながんといえるでしょう。女性の就労率が70%を超えた現代では、職域で対策されるべきがんの一つとして注目を集めています。

画像出典:厚生労働省「HPVワクチンに関するリーフレット(令和4年(2022年))」


日本では年間約1.1万人が子宮頸がんと診断され、約2.900人が死亡します。日本人女性の73人に1人が、生涯のうちに子宮頸がんと診断されます。

子宮頸がんの原因のほとんどは、性的接触によってHPV(ヒトパピローマウィルス)に感染し、それが持続することです。

性交経験のある方の過半数は、一生に一度はHPVに感染機会があるといわれます。HPVに感染すると、一部の人で異形成とよばれる前がん病変が出現し、数年をかけて浸潤がんへ至ります。


子宮頸がんを防ぐには

①HPVへの感染を防ぐこと(HPVワクチン)

②子宮頸がん検診を受けること

の2つが非常に重要です。


1. HPVへの感染を防ぐ(HPVワクチン)

HPVワクチンによって、子宮頸がんや異形成(前がん病変)のリスクが下がることが国内外の研究で示されています。
YOKOHAMA HPV PROJECTによる日本人女性を対象とした研究では、HPVワクチンを1回でも接種した20代女性において、中等度異形成(CIN2+)の発生リスクが76%、高度異形成(CIN3+)の発生リスクが91%減少したことが報告されています。

画像出典:YOKOHAMAHPV PROJECT


HPVワクチンには、
2価ワクチン:子宮頸がんの約60-70%の原因でとなるHPV16・18型の感染を予防
4価ワクチン:HPV 16,18型とHPV6,11型(膣や外陰部にできる良性の病気である尖圭コンジローマ(がん化は稀)の原因の一部となるHPV)の感染を予防
9価ワクチン(HPV6,11,16,18,31,33,45,52,58型の感染を予防)があります。

このうち、2価と4価は日本での公費接種(小学校6年生-高校1年までは無料の定期接種)が推奨されており、9価も2021年の2月から、自費であれば接種可能となりました。

令和4年4月から、HPVワクチンの積極的勧奨が再開されます。それと同時に、接種の積極的勧奨が差し控えられ、接種を逃してしまった1997年4月2日~2006年4月1日の方向けにキャッチアップ接種が始まります。
(詳細:
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000918718.pdf)

この方たちは2022年現在、16~25歳であり、就労世代の方も多く含まれています。
ぜひ、職場でもキャッチアップ接種についての情報提供をお願いいたします。


2. 子宮頸がん検診を受ける

子宮頸がんの検査は「細胞診」と呼ばれるもので、国の指針で「20歳以上の女性を対象に2年に1回」の実施が推奨されています。
特に推奨されるのは20~69歳の女性です。医師がブラシやへらなどで子宮頚部の細胞を採取することで検査しますが、5分程度の短時間の検査で痛みもほとんどありません。婦人科にかかったことのない方は恥ずかしい気持ちもあるかもしれませんが、一度受けてみれば2回目以降は大変な検査ではないことがわかると思います。

また、同じく子宮頸がんの検査としてHPV検査があります。子宮頸部から採取した検体からHPVの型を調べ、子宮頸がんを起こしやすいハイリスク型のHPVに感染していないかを調べる検査です。HPV 検査では進行したがんだけでなく、前がん病変や子宮頸がんを起こしやすいタイプのHPVの持続感染の状態・一過性感染の状態まで検出されるため、早い段階で前がん病変を発見できる、より感度の高い検査手法として注目されています。

ただし、HPV検査を導入することで、進行したがんへの罹患率を下げる効果はあるものの「疑陽性」(本来はがんではないのに、がんの疑いがあると診断されてしまうリスク)が高くなってしまうことがわかっています。
職域でHPV検査を導入している企業も少なくないと思われますが、この点には注意が必要です。検査で陽性となった場合には、精密検査につなげて正しい診断を受けることが重要になります。そのためには、社内の産業保健職や人事労務担当者が情報をアップデートして適切に伝えていくことが必要になるでしょう。

情報のアップデートにはぜひ、こういったコラムもお役立てください。


▼引用参考文献
1.厚生労働省.
平成28年簡易生命表の概況.
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life16/dl/life16-15.pdf
2.厚生労働省.
令和2年版 厚生労働白書.
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/19/dl/all.pdf
3.厚生労働省 スマートライフプロジェクト
4.厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット
5.厚生労働省健康局総務課 生活習慣病対策室 コミュニケーションの手引き


文章出典:株式会社イーウェル「健康コラム」より寄稿




松本理

松本理

(まつもと・さとみ)日本医医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント、産業保健法務主任者

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