嘱託産業医の報酬相場は?専属産業医との役割の違い・選任の要点を紹介
(最終更新日:2022年12月12日)
従業員50人以上の事業場(本社、支社、営業所など)には、労働安全衛生法で産業医を選任することが義務付けられています。
選任する産業医を探すためにインターネットで情報収集をすると「紹介」「業務委託」「派遣」などさまざまな言葉が並んでいますが、これらの選任形態にはどのような違いがあるのでしょうか。
それぞれの違いと発生する費用、メリットなどの例をみてみましょう。
目次[非表示]
嘱託産業医と専属産業医の違いとは
従業員数に応じて嘱託産業医と専属産業医を選任する
労働安全衛生法で、従業員50人以上の事業場では産業医を選任することが義務付けられています。そして、その産業医の選任形態には「嘱託」と「専属」があります。
嘱託産業医は非常勤で、月1回程度事業場を訪問します。日本の多くの産業医の選任形態は嘱託です。
一方、多くの場合、専属産業医は常勤で週4日程度、事業場に勤務します。
従業員50人~999人の事業場は、月1回程度訪問する嘱託産業医の選任で問題ありませんが、従業員が1000人以上であれば、専属産業医の選任が義務になります。
また、以下の有害業務の場合は、従業員500人以上から専属産業医の選任が必要です。
1. 多量の高熱物体を取扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
2. 多量の低温物体を取扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
3. ラジウム放射線、X線その他の有害放射線にさらされる業務
4. 土石、獣毛等の塵埃又は粉末を著しく飛散する場所における業務
5. 異常気圧下における業務
6. 削岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
7. 重量物の取扱い等重激な業務
8. ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
9. 坑内における業務
10. 深夜業を含む業務
11. 水銀、砒素、黄燐、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、一酸化炭素、 二硫化窒素、亜硫酸、ベンゼン、アニリン、その他これらに準ずる有害物の ガス、蒸気、又は粉塵を発散する場所における業務
12. 病原体によって汚染のおそれが著しい業務
13. その他厚生労働大臣が定める業務
出典:労働安全衛生規則第 13 条第 1 項第 2 号
紹介会社を利用した「嘱託産業医」探しが増えている
産業医の紹介会社に相談してみることが選任の近道になる
選任する産業医を探す・紹介してもらう方法には、どのようなものがあるのでしょうか?
2022年現在、産業医を探す一般的な方法として以下のものが考えられます。
●産業医を紹介してもらう方法
・医師紹介会社に産業医の紹介を依頼する
・地域の医師会に相談する
・近隣の病院や診療所など医療機関に相談する・健康診断を実施している健診機関に紹介を依頼する
・社員の人脈で探す
以前は企業が地域の医師会、医療機関や健診機関に相談して産業医を探すことも多かったのです。
しかし、全国的な産業医選任のニーズが高まるとともに、こうした公的機関経由での産業医確保が困難になってきました。
そうした理由から、近年では産業医の紹介会社を活用するケースが増えてきています。
産業医の人材紹介会社の場合、登録している産業医の中から、その事業場の条件や希望に合った産業医をマッチングします。
産業医の紹介会社を比較する際には「産業医の登録数が多いこと」と「企業側の条件や希望をしっかりヒアリングしてくれること」を重視して紹介会社を選びましょう。
特に、産業医を初めて選任するという企業の担当者は、まずは紹介会社に相談してみることが選任への近道となるでしょう。
紹介会社の担当者は、企業の産業医選任事例をたくさん見ています。
ですので、自社の状況やニーズを伝えて、どのような産業医が合うのか相談するといいでしょう
嘱託&専属産業医の報酬相場と料金システムを調べてみた
専属産業医を「紹介」してもらう場合の一般的な相場と料金システム
産業医を探していると「紹介」「業務委託」「派遣」などさまざまな言葉が目に留まります。
これらのフレーズにはどのような違いがあるのでしょうか。
まず「紹介」は、特に民間の産業医紹介会社のサービスとしてよく見る言葉です。
一般的に、企業は紹介会社に「産業医の紹介」を依頼します。
産業医が紹介され、晴れて選任が決まった場合には、企業が産業医に支払う「年俸の一定割合の金額」を、紹介会社に紹介料として別途支払うシステムになっています。
これは、特に常勤である「専属産業医(社員1,000人以上)」を選任する際に利用することが多いサービスです。
2022年1月現在、専属産業医の年俸は1,000万~1,500万円が相場といわれています。
例えば、紹介料が年俸の30%の契約、産業医の年俸が1,000万円の場合であれば、紹介料として300万円を紹介会社に支払うことになります。
嘱託産業医へ「業務委託」する場合のメリットと相場・料金システム
次に嘱託産業医に「業務委託」する場合です。
従業員数1,000人未満の企業であれば嘱託産業医を選任することは先ほど説明しました。
「業務委託」は、1,000人未満の企業において、産業医の選任だけでなく、選任後も産業医の業務や企業の産業保健活動をサポートするサービスとして使われることが多いフレーズです。
ですので「これから嘱託産業医を選任したい」という企業はもちろん「紹介会社のサポートを受けながら職場の産業保健体制を整えていきたい」「せっかくだから健康経営にチャレンジしたい」という風に考えている企業におすすめです。
では、業務委託のメリットである「選任後も続く紹介会社のサポート」とは、一般的にどのようなものでしょうか?
紹介会社によって選任後のサポート内容はさまざまですが、例えば以下のようなものが挙げられます。サポートの多くは、企業の担当者にとって煩雑になりがちな業務負担を軽減する内容です。
●紹介会社が展開しているサポートの例
・産業保健に関わる書式提供
・産業医への必要情報提供
・産業保健の年間計画作成
・衛生委員会で取り扱うテーマの情報提供
・産業医⇔企業間のスケジュール調整、連絡代行
・産業医の活動書類の保管 など
「産業医」と「企業担当者」の間に入ってこれらのサポートを行うのは、紹介会社の専門コーディネーターであることが多いです。
つまり「書類の作成方法や保管に不安がある」「せっかく産業医が来てくれるのに、何を相談すればいいのかわからない」といった企業には、サポートが充実している業務委託がおすすめといえます。
そして、業務委託の料金システムですが、嘱託産業医選任時にかかる「選任料」と「月々のサポート料」を支払うケースが多いです。
産業医の「派遣」とは?
最後に「派遣」は、医療機関に所属する産業医が企業に訪問する場合によく使われる言葉です。
事業場がその医療機関と直接契約し、産業医を職場に派遣してもらう形式が一般的です。
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産業医の選任の際に、よく使われる言葉の違いがわかりましたか?
それぞれの特徴を踏まえて、どのような形式で産業医を選任した方がいいか、しっかり検討しましょう。
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