【書評】労働者向けの本に学ぶ、会社がしてはいけないこと


みなさんはじめまして!

地方の中小企業で管理職として人事・総務を中心に担当しています能瀬と申します。

いち現場スタッフ、管理職の目線で、人事労務担当の皆様におすすめの本をご紹介したいと思います

能瀬 博之(のせ・ひろゆき)


広島大学卒業。

新卒で入社した地方の中小企業で2年目から採用・教育を担当し、現在13年目。

その他、総務、広報、ISOなど幅広く携わるマルチプレイヤー。27歳で始めたマラソンが趣味で、最近は視覚障害者の伴走やトレイルランニングにハマっている。

第1回目は、新任労務担当者の方にぜひ読んでほしい本です。

9割の会社はバカ 社長があなたに知られたくない「サラリーマン護身術」

9割の会社はバカ 社長があなたに知られたくない「サラリーマン護身術」

著者:石原壮一郎、三矢晃子

価格:予価1100円+税

出版社:飛鳥新社


トラブルの解決方法をQ&A形式で解説

本書は、「サラリーマン護身術」というタイトルの通り、労働者向けに書かれた本で、会社でのハラスメント、メンタルヘルス、労働法規などのトラブルに遭遇した際の、解決方法がQ&A形式で解説されています


Qの例をあげると「サービス残業の多さに納得できない。労基署にチクりたいが、自分が言ったとバレないようにするには?」や「親の介護が必要な状態に。仕事との両立は難しそうだが…」、「実際はクビなのに『自己都合退職』にしておくからと言われた。承諾すべき?」といった、とても具体的なものばかり。

そんな質問に対して、特定社会保険労務士​​​​​​​が労働に関する専門家として正しい知識を解説。一方、コラムニストで自称“大人力のプロ中のプロ”であるコラムニストのもう1人の著者が、「会社に勝つ」ためではなく、大人としてどう周りを動かし、状況を快方に向かわせるかをアドバイスしています。

労務法規のトピックが分かる

「会社はバカ」と一見会社を挑発しているかのような本ですが、人事労務担当者におすすめしたいのには理由があります。手に取ってみると、最近の労務法規のトピックを学ぶのに最適ということが分かります。


最近は人手不足が深刻化しており、新任人事・労務担当者や新任管理職への教育に頭を悩ませている会社も多いのではないでしょうか。弊社でも新任管理職教育が十分とは言えず、労務管理上の最低限の知識をどのように周知していくかが課題となっています。

本書では労基法をはじめとした労働法規から、ハラスメントやメンタルヘルスといった、人事労務担当者、管理職なら知っておくべき内容が集約されているので、最低限の知識を身に付けることができます。また、3択式のQ&A形式となっているので、集合研修をする際に本書をもとにグループワークを行い、労務管理に関しての考え方を擦り合わせるのもいいと思います。

リスクにつながる種を把握しよう

労働者視点で書かれているため、われわれ会社側から見ると、各項にさまざまなトラブルの種が書かれている点もポイントです。

日本ではここ15年ほどの間、労働関係の民事訴訟事件、労働審判事件が急増しています。

2001年に2,119件だった民事訴訟事件件数は、2017年(速報値)には3,526件に。労働審判事件は統計開始の2006年に877件だったものが、2017年(同)には3,369件と4倍近くに膨れ上がっています(労働政策研究・研修機構(JILPT)|早わかり グラフでみる長期労働統計|Ⅶ 労使関係 図3-1 労働関係訴訟、労働審判) 。

また、2017年度に総合労働相談コーナーに寄せられた相談は、110万件。そのうち25万件を占める民事上の個別労働紛争相談は、4件に1件以上が「いじめ・嫌がらせ」によるものです。次いで「自己都合退職」「解雇」と続いており、上位三つだけで6割弱に及びます(厚生労働省「個別労働紛争解決制度の施行状況」)。


企業は今、”正しくない”ことを行えば、「ブラック企業」としてSNSなどにさらされ、民事訴訟・労働審判を起こされるリスクを常に背負っています。

本書で会社として、管理職として「してはいけないこと」の共通認識を持つとともに、掲載されている事例をもとに万が一、労務トラブルが起きてしまった時にどの様に対応するかを考えてみるのもいいのではないでしょうか。


文/能瀬博之 編集/サンポナビ編集部


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