残業100時間、公務員はブラック最前線?/元公務員の働き方日記
こんにちは、元公務員ライターの新美です!「楽」「残業なし」といったイメージの強い公務員ですが、実は残業が月100時間を超えるブラック部署もあることをご存知でしょうか?
人事労務担当者の方にとっても、「楽と思われているけど実はブラック」という働き方は、なかなか興味深いのではないでしょうか。
今回は私の実体験を通して、公務員の働き方の実態と、“自分にとって最適な働き方”を見つけるヒントをお伝えしたいと思います!
執筆者プロフィール:新美 友那(にいみ ともな)
法政大学卒業後、5年間某市役所に勤務。より自分に合った働き方を求め、2017年7月よりフリーライターとしてのキャリアをスタート。現在はライター・編集・講師として活動中。転職相談も受付。中学~大学まで陸上部に所属しており、マラソンが趣味。
最近話題の「公務員の長時間労働」は本当だった
ニュースなどで言われているように、公務員も実は最近、その長時間労働が問題視されています。精神的理由により休職している国家公務員の割合は、民間企業の約3倍という見解もあるほど…。市役所・区役所などの地方公務員も、同じく休職者が多めです。
元国家公務員の友人に聞いた話では、精神バランスを崩してしまい、結果「ハンコを押すだけの係」を日々の仕事として繰り返す人もいたんだとか。私のいた自治体でも、休職を繰り返す職員や、出勤はするもののメンタル気味で異動ができず、何年も同じ部署にいる職員がいました。
こういった「メンタル問題」は、人間関係はもちろん、長時間労働からも起こりえます。実は私も公務員時代、残業が月に100時間以上ある部署にいて、死にそうになりながら働いていた時期があります。
「公務員は楽」「9時~5時で帰れる」というイメージは、実際とは全く異なります。今回は私が体験した公務員の働き方や転職への転機、働き方への思いなどについてお話したいと思います。
公務員時代の働き方~激務に異動にてんやわんや~
私の公務員時代は、激務部署にいたり、イレギュラーな異動が多かったりと、他の公務員より少し過激な働き方だったかもしれません。
まず新人時代は、スポーツ系の部署に配属されました。「興味ある分野で仕事ができる!」と喜んだのもつかの間、そこは残業が月100時間を超えることもある、激務部署だったのです…。
月100時間の残業はさすがに頻繁にはありませんでしたが、月60~80時間の残業は普通でした。また、その課は私の他は全員働き盛りの男性で、その中で女性1人で同じような時間だけ働くというのは、体力的にも精神的にもかなり大変でした。
土日は市内のイベントに出展して広報活動を行ったり、視察に行ったりしていたので、ほぼ毎週土日出勤がありました。むりやり代休は取れましたが、仕事がたまるので出勤後にまた大変な思いをする…という悪循環。幸いなことに人には恵まれ、仕事自体は楽しかったのですが、入庁前の「公務員イメージ」とのあまりのギャップに、少し疑問を感じていました。
その後、部署がなくなるため年度途中に異動になったのですが、異動先は10年目の先輩が急に辞めたポジション。当時2年目の私に務まるはずもなく、課長の作ってくださった手順書だけを頼りに、毎日手探りで仕事をしていました。
「ちょっと理不尽だな…」と思いながらも、「この先数年はお世話になるだろうし、頑張ろう!」と前向きに過ごしていたところ、半年後の4月、なぜかまた別の部署に異動になりました。通常の異動サイクルは数年おきなので、急に辞めてしまった先輩の穴埋めだったのかもしれません。
ついにメンタル崩壊。働き方が合わないのでは?と気づく
次の異動先は経理の部署で、私も同期も「絶対に向いてないだろ…」と絶句するほど、うっかりしがちな私には不向きな配属でした。案の定あまり成果は出せず、部下をよく叱ることに定評のある上司に毎日怒鳴られ、私のメンタルは崩壊寸前でした。
周りの人も助けてくれたのですが、一度業務中に涙が止まらなくなったことがあり、「このまま勤め続けるのはもう無理だ」「周りにも迷惑をかけてしまう」と、この頃から転職を考え出すようになりました。もちろん、公務員以上に待遇のいい仕事はほとんどありませんし、公務員から民間への転職はかなり厳しいということはわかっていました。しかし、
・公務員は数年おきに異動があり、また激務部署へ行く可能性もある
・異動希望は3年に一度しか出せず、出しても異動先はほとんど考慮されない
・そもそも、新人を2年間に2度も人事都合で異動させることへの不信感
ということから、この仕事は辞めようと、自分に合う転職方法を3年ほど探しました。
どん底時代を助けてくれたのは、保健師さん
ちなみに、当時の私の体調にも大きな変化が表れていました。最初の部署では眠気や疲れと戦うくらいだった朝も、一時期はそれに加え吐き気と戦いながら出勤していました。
特に寝不足でもないのにぎりぎりまで起きられず、起きてから20分で支度をして出る始末。昼休みも終わりに近づくと絶望的な気持ちになり、職場でも急に涙が止まらなくなったり、日曜の夜は寝付けず深夜3時頃までベッドの中で起きたりしていました。
当時は健康相談室という、学校で言う保健室のような場所に度々訪れ、保健師さんに話を聞いてもらっていました。その方は職員でありながらも、職員のメンタルケア対象とした保健師として独立した立場にいたので、社内の人間関係のしがらみにとらわれておらず、フラットな立場で話を聞いてくれました。それだけでとても心が軽くなったことを覚えています。
急に辞めたりせず円満に退社できたのは、あの保健師さんのおかげかもしれません。当時は本当にありがとうございました。
悩み、そして転職へ
そもそも私は、「あたたかい家庭を作りたい」→「家族に時間を取れる仕事に就きたい」→「民間より残業が少ない公務員がいい」と考え市役所に就職したのですが、働いてみたら実情は違いました。
人間関係には恵まれた方だと思うのですが、「税金を無駄にしない」=「間違いは許されない」という市役所独特の社風に合わず、「そもそも私には組織に属さない働き方が合っているのでは?」と長い間悩んでいました。
そんな時、SNSでフリーランスなどの「自由な働き方」をしている人たちを見つけました。そして、そういった働き方を学ぶ「田舎フリーランス養成講座」というフリーランス講座を発見。
即見学しに行き、主催者との面談で「時間や場所、仕事の進め方など、自分の適性に合った働き方をしている人たちが現実にいる」ということを知り、「私の求めていた働き方はこれだ」と衝撃を受けました。そして転職を決心し、次の日には上司に退職を伝えました。
昨年6月に「田舎フリーランス養成講座」を受講後、7月から現在に至るまで、フリーライターとして活動しています。
そもそも自分に合った働き方とは?働き方改革への疑問
今話題の「働き方改革」では、「長時間労働の改善」「非正規と正社員の格差是正」など様々な対策が打ち出されていますが、その中で私は特に「柔軟なキャリアパス(働き方)の構築」が重要だと思います。
現代の日本では、「組織に勤める働き方」がかなりの多数派ですが、そもそも、組織で働くこと自体が辛い人も多いのではないでしょうか。私のように、個人で働くことで幸せになる人は、実はたくさんいると思います。
アメリカでは、2020年までに労働者の50%がフリーランスになるという調査(ナショナル・ポスト調べ)もあるほど、フリーランスは確立された働き方です。「会社員の働き方」だけを改善しても、会社勤めに向かない人の辛さはなくなりませんよね。まずは、「働き方の選択肢を広げる」ことが重要ではないでしょうか。
一方で、今の日本でも労働人口の約17%がフリーランスとして働いており(ランサーズ調べ)、2017年にはフリーランスの損害賠償や所得補償を行う「一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」が発足するなど、「新しい働き方」への可能性が高まっています。
「会社員としての働き方」を一律に改善していくというより、一人一人が自分に最適な働き方を探り、常に最適化していく努力が必要なのではないでしょうか。
また、組織側も「終身雇用」「人事権の独占」といったによる単線型のキャリアパスを見直し、「転職への理解」「適性検査による適材適所の配置」など、柔軟なキャリアパスを実現すべく社員一人一人と歩み寄る姿勢が重要だと思います。そうすれば、私のように就職でミスマッチが起きても修正しやすく、個人も組織も働きやすい社会に近づくのではないでしょうか。
そんな“自分にとって最適な働き方”を探る過程で、個人でも組織でもないフラットな立場で相談できる保健師・産業医などの存在はとても頼りになります。以前の私のように悩まれている方は、ぜひ相談されてみてはいかがでしょうか。
そして組織側も、社員がよりよく健やかに働けるよう、保健師・産業医などを通して社員一人一人の意見をくみ取り、運営に反映していくことが重要ではないかと思います。
文/新美友那 編集/サンポナビ編集部
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