〈9つの要件〉産業医面談・面接指導をオンラインで実施するためのポイント
最終更新日:2021年7月12日
新型コロナウイルスの流行によって、企業における「働き方」のみならず、産業医の活動にもオンラインやリモートへ移行する流れが起こりました。
リモートによる衛生委員会が許可されたことは記憶に新しいですが、産業医による面談(面接指導)も、リモートによる実施が可となりました。
要件・注意点等について解説していきます。
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2020年11月:産業医面談の「原則対面」ルールが変更。オンラインで行うことが可能に
〈2020年11月〉産業医の「オンライン面談(面接指導)」が可能に
休職・復職や長時間労働者などに向け、産業医は面接指導を行うことが決められています。
これまで、産業医と労働者が”面と向かって”話し合うことが一般的だった面接指導ですが、2020年には、新型コロナウイルス感染症の対策やオンライン化の推進等を目指し、産業医による面接指導もオンラインで行うことが認められるようになりました。
ただし、産業医がオンラインで面談を行う際には、いくつかの満たすべき要件があり、これらをクリアしている必要があります。
本記事を通じて確認しておきましょう。
●「情報通信機器を用いた労働安全衛生法」とは?
産業医による面接指導については「情報通信機器を用いた労働安全衛生法(※)」にて定められています。
同法では、産業医による面接指導について、これまで原則的に“直接対面で行うこと”を定めていました。
しかし、2020年11月の改正により、面接指導に関する「原則対面」の箇所が削除され、オンラインによる面接指導が認められています。
※「情報通信機器を用いた労働安全衛生法」第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項
オンライン面談では、産業医と労働者で円滑なやりとりができなければならない
産業医が労働者と面談を行う際には、労働者とのやりとりやその様子(表情、しぐさ、話し方、声色など)から、労働者の疲労・ストレス・その他心身の状態を把握し、その情報を元に指導や就業措置等の判断を行う必要があります。
オンラインで面接指導を行う場合も同様に、円滑なやりとりにより心身の状態を把握することが可能であることが求められます。
また、面接指導を行う産業医から要望があった場合には、直接対面による面接指導を実施することが定められています。
〈要件①~④〉産業医のオンライン面談「医師(産業医)」に関する4要件
オンライン面談で「産業医(医師)」に求められる4つの要件
オンラインで面接指導を実施する際には、満たすべきいくつかの要件があります。
これを大きく分けると「産業医(医師)に関する要件」と、「使用する情報通信機器に関する要件」の2つになります。
まずは、オンラインで面接指導を行う「医師(産業医)」に関する要件について。
2020年11月に厚労省による通達を要約すると、次の①~④のいずれかに該当していることが望ましいとしています。
要件①「自社(※)の事業場で選任している産業医である」
要件②「少なくとも過去1年以上、自社の産業医として健康管理業務に携わっている」
要件③「過去1年以内に、産業医として自社の事業場を巡視した経験がある」
要件④「過去1年以内に、産業医として面接対象者に面接指導を実施したことがある」
※ここでの「自社」とは面接指導の対象となる労働者が所属する事業場をいいます。
上記①~④は要約です。詳細については、厚労省の通達(以下)を確認しておきましょう。
●面接指導をオンラインで実施する際「医師(産業医)」がいずれか満たすべき4要件
① 面接指導を実施する医師が、対象労働者が所属する事業場の産業医である場合
② 面接指導を実施する医師が、契約(雇用契約を含む)により、少なくとも過去1年以上の期間にわたって、対象労働者が所属する事業場の労働者の日常的な健康管理に関
する業務を担当している場合。
③ 面接指導を実施する医師が、過去1年以内に、対象労働者が所属する事業場を巡視したことがある場合。
④ 面接指導を実施する医師が、過去1年以内に、当該労働者に指導等を実施したことがある場合。
出典:厚生労働省「基発1119第2号(令和2年11月19日)」より一部改変
〈要件⑤~⑦〉産業医のオンライン面談「情報通信機器」に関する3要件
オンラインで面接指導を行う際「情報通信機器」に求められる3つの要件
産業医の面接指導をオンラインで行う場合、情報通信機器にも満たすべき要件があります。
大まかに言えば、スムーズな面談を実現するための要件と、セキュリティに関する要件です。
使用する情報通信機器が次の⑤~⑦の3つすべての要件を満たしている必要があります。
要件⑤ 医師と労働者が相互かつ円滑に表情・顔色・声・しぐさを確認できること
要件⑥ 情報セキュリティが確保されていること
要件⑦ 情報通信機器の操作が容易に利用できるものであること
上記⑤~⑦は要約です。詳細については、厚労省の通達(以下)を確認しておきましょう。
●面接指導をオンラインで実施する際「情報通信機器」が満たすべき要件
⑤面接指導を行う医師と労働者とが相互に表情、顔色、声、しぐさ等を確認できるものであって、映像と音声の送受信が常時安定しかつ円滑であること。
⑥情報セキュリティ(外部への情報漏えいの防止や外部からの不正アクセスの防止)が確保されること。
⑦労働者が面接指導を受ける際の情報通信機器の操作が、複雑、難解なものではなく、容易に利用できること。
出典:厚生労働省「基発1119第2号(令和2年11月19日)」より一部改変
〈要件⑧~⑨〉産業医のオンライン面談「実施方法等」に関する2要件
オンラインで面談を行う際「実施方法等」に求められる2つの要件
産業医がオンラインで面談を行う際には、その実施方法についても要件をすべて満たしている必要があります。
具体的には次の⑧、⑨の2点ですが、事前に周知しておくことと、プライバシーへの配慮が重要になります、
要件⑧ オンライン面接指導の実施方法を衛生委員会等で審議し、労働者に周知しておく
要件⑨ オンライン面接指導の内容が第三者に知られないよう、プライバシーに配慮すること
上記⑧~⑨は要約です。詳細については、厚労省の通達(以下)を確認しておきましょう。
●面接指導をオンラインで実施する際「実施方法等」について満たすべき要件
⑧情報通信機器を用いた面接指導の実施方法について、衛生委員会等で調査審議を行った上で、事前に労働者に周知していること。
⑨情報通信機器を用いて実施する場合には、面接指導の内容が第三者に知られることがないような環境を整備するなど、労働者のプライバシーに配慮すること。
出典:厚生労働省「基発1119第2号(令和2年11月19日)」より一部改変
緊急時にも対応できる体制を整備しておくこと
オンライン面接指導の際、産業医(医師)が緊急を要する徴候を把握した場合でも対応できる体制を整備しておくことが求められています。
具体的には、近隣の医師等や事業場の産業保健スタッフが対応できることが必要になります。
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「そもそも産業医が活動してくれない・・・」
という場合には、産業医の交代を検討することも検討しましょう。
企業には、従業員の健康を守る(安全配慮義務)責任と義務があるからです。
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オンラインで面接指導を実施する際の要件について解説しました。
2021年1月には2度目の緊急事態宣言も発令され、今後の産業保健活動はリモート化が進むことが想定されますので、オンライン面接指導の導入も検討してみましょう。