〈産業医コラム〉-2021新年-「認知」を変えてストレス抵抗力を高める


                                                 産業医科大学 産業衛生教授

浜口伝博

新年おめでとうございます。

とは言いながらも、コロナが解決しないではどうも晴れやかな気分にはなれません。実際、昨年から続く様々な社会規制や制限(遠隔勤務、出社頻度制限、会食禁止、Goto中止等)で、私たちは心も制限された状態になってしまっています。

外に出ない、人に会わない、移動しない、活動しない、といった「しない」活動は、本来人が好むはずの人との交流をさまたげるものだけに、強いられることはストレスでしかありません。

つまり昨年1年間は、国民全体がストレスを受け続けた1年間だったと言えます。


人がストレスを受けたとき、それがどのように人の健康に影響を与えるか、についてはすでに膨大な研究がされています。おもしろいのは、同じストレスがあっても皆が同じ反応を起こすわけではないということです。

実際に、同じストレス状況であっても、体調不変な人がいる一方で、体調を崩して寝込んでしまう人もいます。いったいその差はどこから来るのでしょうか。

このメカニズムを簡素化して説明しているのがNIOSHモデル(米国立労働安全衛生研究所)です。このモデルがいうには、ストレスが本人にふりかかったとき、個人ごとに「年齢、性別、性格、認知等」が違い、本人を取り囲む「社会的支援(上司、同僚、家族)」が異なるので、これら2種類のストレス緩和機能の強弱により結果が異なってくると説明しています。

要は、ストレスを受ける側の個人の力量や個人を取り囲む人の環境が、どのくらいクッションとして機能しているのかが分かれ目のようです。


さてここで気づく必要があります。このクッション機能には、自分で「変えられる要素」と「変えられない要素」があるということ。

「変えられない要素」には、あなたの「年齢、性別、性格」があり、自分以外の人たちである「社会的支援(上司、同僚、家族)」も自分の思い通りに変えることはできません。

大切なことはこれら「変えられない要素」に拘泥しないで、「変えられる要素」に注目することです。何かというと、それは「認知」。あなたの「認知」を変えることでストレス結果を変えられることになります

簡単に言えば、いかにストレスがあっても「認知」を変えていく。例えば、「いつまでも続くわけではない」「素晴らしい未来がまっている」「自分は超えられる」「これで自分は成長できる」「希望がある」「まだ負けたわけではない」などととらえ、自分自身のストレス抵抗力を上げること。往々にして人はストレスにさらされると、認知は悲観的な方向に流されやすい傾向があります。


ここで「認知」を変える簡単な方法をお伝えしましょう。それはポジティブワードを意図的に多用すること。

「ありがとう」「元気だね」「明るいね」「希望があるね」「わぁ、すごい」「やるねぇ」「感謝している」などを日常的に使うこと。口に出た言葉は他人に伝わり、自分にも反射して自分自身の自信と気分快適、そしてストレス抵抗力が高まります。

つまり、気分やモードが変わるので、それはそのままストレス克服力へとつながります。

さあ、言葉を変えて、気分を変えて、新年の開始です!

浜口伝博

浜口伝博

(はまぐち・つたひろ) 産業医科大学医学部卒業。病院勤務後、(株)東芝(1986~1995)および日本IBM(株)(1996~2005)にて専属産業医として勤務。その後、Firm & Brain(有) を設立し開業型の産業医として独立。大手企業を顧客企業としてもち、統括産業医、労働衛生コンサルタントとして活躍するかたわら政府委員や医師会、関係学会の役員を務めながら、産業医科大学をはじめ、慶應義塾大学医学部、順天堂大学医学部、東海大学医学部にて教鞭をとっている。

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