〈がんと仕事〉もし従業員が「がん」になったら会社はどう対応する?~治療と仕事の両立支援~

がんと診断された人や、病気を抱えながら働く人の中には、仕事を理由に適切な治療が受けられない場合や、病気について職場の理解・支援体制が不足しているケースも多く、結果として離職に至ってしまう現状があります。

職場で「治療と仕事の両立支援」の体制を整備することは、働く人の安心感やモチベーションの向上につながり、優秀な人材の離職を防ぎます。

「もし、従業員ががんになったら?」企業の対応について解説します。

従業員が「がん」になっても働ける環境を整備するには?


かつては「不治の病」と呼ばれていたがん。しかし、医療の進歩によって今では「長く付き合う病気」に変わりつつあります

また、がんとの「付き合い方」にも変化が訪れ、現在では治療をしながら仕事を続けるケースも増えています

働く意志を持っている労働者にとっては働くことが「生きがい」にもなるため、本人が希望する場合には、企業からの支援が求められます

そのためには、まず社内の環境を整備することが大切です。

がん(病気)に対する会社の基本方針を示す

「治療と仕事の両立支援」の第一歩は、「がんになっても働き続けられる職場」というメッセージを企業が表明することです。

衛生委員会などで話し合いを行った上、会社として両立支援に対する基本方針や、具体的な対応方法などのルールを作成し、従業員全員へ周知します。

社内では両立支援の大切さや意義を共有し、従業員が「治療と仕事の両立」をしやすい風土をつくります

また、両立支援は、がんと診断された労働者本人からの申出からはじまりますので、社内の相談窓口を明確にしておくとことも重要です。

休暇制度・勤務制度などの就業規則を整備する

がんの治療が始まれば、業務への影響が考えられます。通院や手術といったスケジュールに企業が対応できるよう、あらかじめ以下のような休暇制度や勤務制度を整備しておきます。

1.休暇制度

時間単位の年次有給休暇:労働基準法に基づく年次有給休暇は、1日単位で与えることが原則ですが、労使協定を結ぶことで1時間単位の付与が可能になります(上限は1年で5日分まで)。

傷病休暇・病気休暇制度:入院治療や通院のため、年次有給休暇とは別に休暇を付与するもの。事業者が自主的に設ける法定外の休暇です。なお、その間の給与・賃金についてもあらかじめ設定しておくことが望まれます。

2.勤務制度

  • 時差出勤制度:ラッシュ時を避け、身体への負担が少ない時間帯に出勤を可能とする制度
  • 短時間勤務制度:療養中、療養後の負担を軽減する目的で、所定労働時間を短縮する制度
  • テレワーク(在宅勤務):パソコンなどの情報通信機器を活用した、場所にとらわれない働き方
  • 試し出勤制度:勤務時間や勤務日数を短縮し、ゆるやかな職場復帰を促す制度

※法制度ではなく、すべて事業者が自主的に設ける制度です。

従業員から「がん」だと告げられたとき、最初に何をすべきか


従業員から「がんと診断された」と申し出があったら、まずは従業員の気持ちを聞きます。従業員本人に働く意志があり、なおかつ治療をしながら仕事を続けることが可能な状態であれば、上司・人事担当者・産業医といった関係者が協力し、両立支援を開始します。

関係者それぞれが「治療の状況」「主治医・産業医の意見」といった情報を共有しながら、円滑に対応していくことが求められます。

両立支援に必要な「情報」を集める

従業員がはじめにすることは、「支援に必要な情報」を主治医から収集し、事業者に提出することです。

なお、従業員本人から「情報収集が難しい」「書類の作成が出来ない」といった相談を受けた場合には、人事労務担当者や産業保健スタッフが代行するなど、支援を行うことも考えます。

両立支援に必要な情報は以下の4つです。

1.症状、治療の状況

  • 現在の症状
  • 入院や通院の必要性とその期間
  • 治療の内容とスケジュール
  • 通勤、業務遂行に影響を及ぼす可能性がある症状、副作用

2.退院後または通院治療中の就業規則の可否に関する意見

3.望ましい修行上の措置に関する意見

  • 避けるべき作用
  • 時間外労働の可否
  • 出張の可否

4.その他、配慮が必要な事項に関する意見

  • 通院時間の確保、休憩場所の確保

※収集した情報は、会社で定めた様式を活用して提出しますが、様式がない場合には「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン(厚生労働省)」の様式集を参考にしてみてください。また、病気の症状、治療の状況といった個人情報の取り扱いには細心の注意が必要です。

「働くことが可能かどうか」産業医と検討する

次に、事業者は主治医から収集した情報を産業医へ提供し、意見をもらいます

その情報をもとに、産業医が「働くことが可能かどうか」を検討します。また、産業医が就業可能と判断した場合には、休暇制度や勤務形態など、働く上で必要な措置や配慮についても相談します。

※事業場に産業医がいない場合には、主治医から受けた情報を参考にします。

「仕事を続ける」と決めたら従業員に合わせたプランをつくる


事業者は、主治医と産業医の意見、従業員の意志をもとに「引き続き仕事をしてもらうかどうか」を考えます。そして、仕事をしてもらうと決めた場合には、従業員本人とよく話し合いの上、必要な配慮や支援の内容を検討し、「両立支援プラン」と「職場復帰支援プラン」をつくります。

「両立支援プラン」と「職場復帰支援プラン」の違いは休職の有無です。

休職しない場合には「両立支援プラン」にて対応し、入院などで休職する場合は「職場復帰支援プラン」で対応します。

なお、それぞれのプランをつくる際には、産業医・保健師などの産業保健スタッフや主治医と連携してプランを作成しますが、必要に応じて医療ソーシャルワーカー・社会保険労務士、産業保健総合支援センターの力を借りることも有効です。

「両立支援プラン」「職場復帰支援プラン」のつくり方と運用方法

「両立支援プラン」とは、治療をしながら働く労働者に対して企業が行う支援計画のことです。プランでは職場での具体的な支援の内容や、退院・面談といったスケジュールを決めます

「職場復帰支援プラン」では、プラン作成の前に、まず従業員を休職させるかどうかを決めます。そのため、最初に主治医や産業医から意見をもらいます。その上で事業者が「休職させる必要がある」と判断した場合には、休職に関する制度と休職可能期間、職場復帰の手順などの情報を従業員へ提供します。

その後、従業員からは休業申請書類を提出してもらい、「職場復帰支援プラン」を計画していきます。

1.「両立支援プラン」「職場復帰支援プラン」に盛り込む内容の例

  • 治療、投薬の状況や通院の予定
  • 変更になる業務の内容
  • 労働時間の短縮
  • 就業場所の変更
  • 定期的な休暇の取得等
  • フォローアップの方法とスケジュール(人事労務担当者や産業医などとの面談日について)
  • 職場復帰日(職場復帰支援プランのみ。退院や治療の終了と同時に、すぐ通常勤務に復帰できるとは限りませんので、注意が必要です)

2.プランを運用する際の注意点

一度策定したプランも、労働者の心身の状態によっては適宜内容を見直す必要があります。その際は、人事労務担当者や産業保健スタッフなどが組織的に支援することが望まれます。

また、がんにり患した労働者の治療やフォローなどによって、上司や同僚にも一時的に負荷がかかるため、可能な限り情報を開示し、理解を得ることも大切です。

※参考:「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン(厚生労働省)


いかがでしたでしょうか。

ここではがんを例に挙げて解説しましたが、「治療と仕事の両立支援」の環境を整備することは、がん以外の様々な病気にも対応できます

また、自社ですべての仕組みをつくることが難しい場合には、アウトソーシングすることも有効です。企業の産業保健を支援する株式会社エムステージでは、休職者の復職までの対応の仕組みづくりをサポートする「休職・復職サポートサービス」を提供しています。

がん患者の従業員が入院のために休職し、その後両立のために復職する際も、企業担当者・産業医と主治医が対応で迷わない体制づくりを支援します。

社内での体制を整備して、従業員が安心して働ける職場を目指しましょう。


※エムステージの提供する「休職・復職対応マニュアル」はこちらからダウンロードができます。



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