子育て支援に力を入れている企業の証「くるみん認定」

国認定のさまざまな”ホワイト企業マーク”について、非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構(SHEM)の木村誠理事長が、それぞれの取得のメリットや取得に必要な条件をシリーズで紹介します。

4回目は「くるみん認定」です。


木村 誠(きむら・まこと)


非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構理事長。

1968年、長野県生まれ。東洋大学法学部卒業。

1991年、第一生命保険相互会社(現第一生命保険株式会社)入社。2003年、株式会社ユニバーサルステージ設立。代表取締役(現任)

2015年、非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構(SHEM)設立

出生数が減少傾向にある中、子育て支援は個人と社会の双方にとって重要な課題となっています。そのような状況で誕生したのが子育てサポート企業を評価する制度「くるみん認定」です。

今回は、くるみん認定について、認定状況と取得のメリット、認定基準についてご説明します。

くるみん認定とは?

くるみんマーク

くるみん認定は、仕事と子育ての両立支援に取り組んでいる企業を認定する制度です。

「次世代育成支援対策推進法」に基づいて厚生労働省が実施しています。

くるみん認定を受けるためには、

・一定水準以上の育児休業取得

・育児に伴う時短勤務制度の設置

など、10の要件からなる「くるみん認定基準」を満たす必要があります。認定企業にはくるみんマークが付与され、自社製品やホームページ、求人広告などに使用することが可能です。

くるみん認定は「子育て支援企業」としての国からのお墨付きと言えるでしょう。

3,000以上の法人がくるみん認定を取得


くるみん認定数の推移

参照:厚生労働省

2007年度に428社だったくるみんの認定数は、年200~300社のペースで増え続け、2018年度には12月時点で3,000社を超えるほどに増加しています。また、東京証券取引所に上場している企業の約15%がくるみん認定企業であるなど、ホワイト企業マークの中でも特にメジャーな存在です。

ワークライフバランスに直結する子育て支援に、大きな注目が集まっていると言えるでしょう。

くるみん認定設立の経緯

厚生労働省がくるみん認定という制度を立ち上げて、企業の子育て支援を強化している背景には、長年にわたって続く少子化にあります。国内の出生数は減少傾向で、30年以上にわたって合計特殊出生率が2.0人を下回っています。人口減少は、国力の低下に直結する由々しき事態です。また、子育てのために夫婦のどちらかがやむを得ず会社を辞めてしまうのも、生産力の低下につながる大きな問題となっています。

法律により、子育て支援は企業の義務に

このような状況を受けて、2003年に成立・施行されたのが「次世代育成支援対策推進法」、通称・次世代法です。この法律により、常時雇用している従業員の数が100人を超える企業は、従業員の子育て支援について一般事業主行動計画を策定し、厚生労働大臣に届け出なければなければならなくなりました。企業にとって子育て支援は義務となったのです。

ただ、現状としてはこの義務を怠っても罰則がありませんので、法律としての強制力は弱いと言わざるをえません。そこで、子育てサポートに関する計画を策定し、一定の水準を満たす実績を持つ企業に対して「くるみん認定」という国のお墨付きを与えることで、産業界における子育て支援を促進させようとしているのです。

働き手も子育て支援を求めている

次世代法の成立と同じ2003年に独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施した「育児や介護と仕事の両立に関する調査」でも、子育てをしやすい職場を望む人が多いことが明らかになりました。

就学前の子供がいる雇用者男女に、仕事と育児の両立について聞いたところ、「うまく両立できている」と答えた労働者は3割程度に留まりました。反対に、育児または仕事の影響でもう片方に「満足していない」、あるいは「仕事と育児のどちらも中途半端で不満がある」という回答の合計は6割近くにも及んだのです。

参照:独立行政法人労働政策研究・研修機構

また、同調査では、仕事と育児を両立しやすくするために推進すべきと考える施策についても、就学前の子供がいる雇用者男女に質問しました。結果は次の通りです。

参照:独立行政法人労働政策研究・研修機構

「男性が育児に参加することへの職場や社会環境の整備」や「労働時間の短縮など、働きながら育児をしやすい柔軟な働き方の推進」など、労働環境の改善を望む回答が多いです。くるみん認定の発足は、働き手の切実な願いに呼応したものと言えるでしょう。

大きな改善が見えない子育て支援

働き手のニーズの一方で、産業界の育児支援の状況はいまだに芳しくありません。2017年に厚生労働省が実施した「雇用機会均等調査」によると、女性の育児休業取得率は83.2%という結果が出ており、2008年には90.6%を記録した近年の水準からすると低迷傾向にあります。男性にいたっては、過去最高の取得率にもかかわらず5.14%に留まっているのが現状です。

これから結婚や育児を控える求職者にとって、子育てと仕事を両立できるのかは大きな不安要素です。「制度として認められていても、仕事との兼ね合いや人間関係が原因で実際に取得するのは難しいのではないか」。そのような心配は当然です。だからこそ、育児をサポートする職場だと証明できることは、企業にとって大きな強みとなりえるのです。

くるみん認定取得で「目に見える子育てサポート企業」になれる

冒頭でご紹介したように、くるみん認定企業はくるみんマークを名刺や会社案内、求人広告、自社製品などに使用することができます。企業が育児に配慮しているわかりやすい目印になるため、採用活動においては強力なアピールポイントになるでしょう。

認定取得で社内体制の整備や離職率の低下も

従業員の子育て支援を充実させるためには、育児休業が発生しても業務が回るようしっかりと社内の体制が構築されている必要があります。くるみん認定取得の取り組みは、欠員が発生しても問題なく事業を遂行できる仕組みづくりとも言えるでしょう。これは子育てに限らず、企業の安定的な存続という面で非常に重要な要素です。

また、社内のサポート体制が整えば従業員の帰属意識も高まるため、定着率の向上にもつながります。大きなコストをかけて育てた人材を失わずに済むわけです。他にも「くるみん税制」と呼ばれる割増償却の適用や公共調達での加点評価など、くるみん認定を取得することでさまざまな優遇措置を受けられるメリットもあります

くるみん認定の認定基準は10項目

くるみん認定を取得するためには、以下10項目の認定基準を全て満たす必要があります。

【認定基準1】雇用環境の整備について、行動計画策定指針に照らし適切な一般事業主行動計画を策定すること

【認定基準2】行動計画の計画期間が2年以上5年以下であること

【認定基準3】行動計画を実施し、計画に定めた目標を達成していること

【認定基準4】平成21年4月1日以降に策定・変更した行動計画を公表し、労働者への周知を適切に行っていること

【認定基準5】男性の育児休業等取得について、次の①または②を満たすこと

①配偶者が出産した男性労働者のうち、育児休業等を取得した者の割合が7%以上であること

②配偶者が出産した男性労働者のうち、育児休業等および育児休業に類似した企業独自の休暇制度を利用した者の割合が15%以上であり、なおかつ育児休業等をした者の数が1人以上いること

【認定基準6】計画期間において、女性労働者の育児休業等取得率が75%以上であること

【認定基準7】3歳から小学校就学前の子を育てる労働者について「育児休業に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、 所定労働時間の短縮措置又は始業時刻変更等の措置に準ずる制度」を講じていること

【認定基準8】労働時間数について、以下の両方を満たすこと

①常勤の労働者等の法定時間外・法定休日労働時間の平均が各月45時間未満であること

②月平均の法定時間外労働60時間以上の労働者がいないこと。

【認定基準9】次のいずれかを具体的な成果となる目標を定めて実施していること

①所定外労働の削減のための措置

②年次有給休暇の取得の促進のための措置

③短時間正社員制度、在宅勤務、テレワークその他の働き方の見直しに資する多様な労働条件

の整備のための措置

【認定基準10】法および法に基づく命令その他関係法令に違反する重大な事実がないこと

くるみん認定までのフロー

くるみん認定までの流れについては、大きく6つのステップに分かれています。

①行動計画の策定

次世代法に基づき、目標、目標達成のための対策と計画期間を策定します。社内で仕事と子育ての両立の障害となっている事項や、従業員のニーズを把握することが大切です。

②行動計画を一般公表し、従業員に周知する

行動計画の策定からおおむね3カ月以内に実施します。一般公表の手段としては、厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」への掲載や自社サイトへの掲載などがあります。従業員への周知には社内掲示やメール送付などがいいでしょう。

③行動計画を策定した旨を届け出る

こちらも、行動計画の策定からおおむね3カ月以内に済ませるようにします。必要なのは策定届のみで行動計画自体の提出は不要です。都道府県の労働局へ、持参、郵送、電子申請などにより届け出ます。

④行動計画の実施

計画に沿った目標達成への取り組みを実施します。

⑤行動計画期間の終了後、くるみん認定の申請を行う

認定基準を満たしたら、都道府県の労働局に申請します。問題がなければくるみん認定取得となり、認定マークが付与されます。

まとめ

子育ては、ライフステージの中でも重要な時期です。その人生の一大イベントをサポートしてくれる企業に人気が集まるのは自然と言えるでしょう。「イクメン」という言葉がブームになったように、子育てに配慮した企業は男性にも人気があります。

くるみん認定の取得は、採用力の強化と人材の定着に非常に効果的な取り組みだと言えます。

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