よくわかる「生理休暇」取得時のルールと法律・罰則に関する注意点を紹介
健康的に働き続けるためには、有給休暇をはじめとした各種の休暇制度を適切に活用しつつ、お仕事に取り組むことが大切になります。
本記事では、生理休暇の法的なルールの概要とともに、取得時の注意点や企業における対応について解説しています。
目次[非表示]
労働基準法等における生理休暇の要点
生理休暇とは
生理休暇とは、法で定められた休暇制度です。
生理に関連する不調時に休暇を取得できるものであり、「生理日の就業が著しく困難」な場合は、休業することが認められる法定休暇です。
個人によってその差があるとはいうものの、人によっては生理中に貧血をはじめ、腹痛・頭痛・倦怠感などの不調が生じ、業務にあたることが困難になってしまうことが考えられます。
また、こうした不調の状態で業務に取り組むことさらなる体調不良を引き起こすおそれもあるため、無理をせず休暇を取得することが推奨されており、女性の健康保護を目的としてつくられた制度といえます。
月経困難症(PMS)の際には、基本的に生理休暇を使用することはできませんが、企業によっては、PMSの際にも生理休暇を取得可能としているケースもあるようです。
▼PMS(premenstrual syndrome )とは
PMSとは、月経困難症のことです。月経前の数日から10日程度の期間に起こる身体的または精神的な症状であり、月経がはじまることで症状が緩和されるものをいいます。
生理休暇の法的概要
生理休暇は労働基準法の第68条に定められた休暇であり、事業場において適切に利用されないことは企業にとって罰則の対象にもなり得るため、十分な注意が必要です。
まず、取得者が注意したい点についてです。生理休暇は生理を理由として、毎月の生理日であれば自由に休暇が取れるというものではありません。前述したように「生理日の就業が著しく困難」である場合にのみ適用されるものです。また、生理と偽ってこの休暇を取る、いわゆる不正取得は禁じられています。
企業側が注意しなければならない点は、生理休暇を取得させない場合の罰則です。
具体的には、労働者から生理休暇の取得請求があった際に、これを妨げるあるいは退ける等の行為をすることは労働基準法第120条1号にて禁止されており、生理休暇の取得請求があった場合は受け入れる必要があります。
なお、生理休暇の取得を妨害するなど、企業が違反した場合には30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
▼労働基準法第68条
(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)
第六十八条 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない
▼労働基準法第120条
第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。一 第十四条、第十五条第一項若しくは第三項、第十八条第七項、第二十二条第一項から第三項まで、第二十三条から第二十七条まで、第三十二条の二第二項(第三十二条の三第四項、第三十二条の四第四項及び第三十二条の五第三項において準用する場合を含む。)、第三十二条の五第二項、第三十三条第一項ただし書、第三十八条の二第三項(第三十八条の三第二項において準用する場合を含む。)、第三十九条第七項、第五十七条から第五十九条まで、第六十四条、第六十八条、第八十九条、第九十条第一項、第九十一条、第九十五条第一項若しくは第二項、第九十六条の二第一項、第百五条(第百条第三項において準用する場合を含む。)又は第百六条から第百九条までの規定に違反した者
生理休暇の取得と給与に関するルール
生理休暇の取得に関するルール
次に、生理休暇の付与・取得のルールについてです。
生理休暇を取得できる労働者の方は限定されていません。つまり、正社員だけでなく、契約社員・パート・アルバイトなど、全ての雇用形態の方が取得可能です。
また、企業も「生理休暇は1か月に1日のみ取得可」など、取得日数に制限を設けることはできません。この背景には、生理にまつわる不調の程度や苦痛、期間には個人差があるからと考えられています。
なお、生理休暇は1日単位だけでなく、半日や時間単位でも請求することが可能です。
これらのルールに関しては、会社ごとの就業規則に記載されていることが一般的ですので、内容を確認してみてください。
「就業規則に生理休暇の項目がない」という場合であっても、休暇の取得は法で定められていますので、労働者から申出があれば、会社はそれを拒否することはできません。
生理休暇時の給与に関するルール
生理休暇を取得した日の給与の取り扱いについては、企業によってその対応はまちまちといえます。それは、生理休暇取得時の給与支払いに法的ルールは存在しないためです。
つまり、生理休暇時の給与を支払わない無給扱いの休暇とするか、有給の休暇とするかは企業の判断に委ねられているのです。
厚生労働省が行った「令和2年度 雇用均等基本調査」によれば、生理休暇中の賃金を「有給」とする事業所の割合は29.0%で、全体としてみると7割程度の事業場では無給扱いとなっていることが分かります。ただし、平成27年時には25.5%であったことと比較すると、有給とする割合はこの数年間で増加しています。
ちなみに、同調査の令和2年の結果をみると、生理休暇を有給の休暇として取り扱っている事業場の65.6%が「全期間100%支給」としているようです。
生理休暇が適切に活用されるための要点
生理休暇の取得による不利益な取り扱いは禁止
労働基準法では、生理休暇の取得によって労働者が不利益となることを禁じています。
具体的には、生理休暇を取得したことで、その日を欠勤扱いとすることをはじめ、昇給・賞与査定時の対象から外すことや、皆勤手当がある場合に不支給(あるいは減額)とすること等は禁止されています。
その他にも、結果的に生理休暇取得を抑制することにつながる就業規則の建付けや、ルールを設けることも望ましくありません。
また、上司・管理職が男性従業員である場合は、生理休暇の取得を申出づらいことも考えられます。
実際に、日本医労連 女性協議会が2022年に9,155人を対象として行った調査によれば「生理休暇を取っていない」と回答した人は7,573人であり、多くの方が取得していないことがわかりました。
また、生理休暇を取得しなかった理由については以下のようになっています(複数回答)。
▼生理休暇を取得しなかった理由
- 「周りが誰も取っていない」43.9%
- 「必要ない」32.4%
- 「仕事が多忙で雰囲気としてとりづらい」27.8%
- 「人員不足」18.8%
- 「上司に言いづらい」18.5%
生理休暇を周知し、取得しやすい環境整備を
このように、生理休暇を制度として導入するだけでは足りないケースも考えられます。よって、適切に休暇を利用してもらうためには、社内における周知啓発や環境整備が大切になるといえます。
先ほども紹介した厚労省の調査「令和2年度雇用均等基本調査」を見てみると、女性労働者がいる事業所のうち、生理休暇を請求した人がいた事業所の割合は3.3%と少ない状況です。
また、その背景には、社内における周知啓発が不足していることも予想されています。前述した日本医労連の調査結果では「(生理休暇の)制度があることを知らなかった」(11.2%)という回答が1割以上にものぼっています。
環境の整備としては「生理休暇」という名称では申出づらいケースが考えられることから、企業によっては「ウェルネス休暇」等の名称に変更し、取得がしやすいような工夫を行っているケースもあるようです。
生理中、体調不良の状態で業務に取り組むことは健康的にも好ましくないため、企業・個人それぞれが適切に運用していけるようにしましょう。
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