ストレスによる腰痛の特徴や対処法とは?心因性腰痛のチェック方法も解説!

ストレスと腰痛には相関があることが、国民生活基礎調査のデータ解析をもとにした研究で報告されています。また心理的ストレスと腰痛の因果関係を示すメカニズムも複数存在します。

日頃から原因不明の腰痛に悩まされている場合、ストレスが原因の可能性もあるのではないでしょうか。

この記事では、ストレスによる腰痛の特徴や対処法、チェック方法について解説します。ストレスによる腰痛が疑われる場合は、参考にしてください。

目次[非表示]

  1. 1.ストレスと腰痛の相関について
  2. 2.ストレスによる腰痛のメカニズム
    1. 2.1.身体化による血流不足
    2. 2.2.脳の痛みを感じる機能の不具合
    3. 2.3.心理的ストレスによる姿勢バランスの崩れ
  3. 3.ストレスによる心因性腰痛の特徴
    1. 3.1.病院の検査で異常が見つからない
    2. 3.2.症状に一貫性がない
  4. 4.ストレスによる心因性腰痛をチェックする方法
    1. 4.1.BS−POP
      1. 4.1.1.【医師用】
      2. 4.1.2.【患者用】
  5. 5.ストレス性の腰痛への対処法
    1. 5.1.病院を受診
    2. 5.2.生活習慣の改善
    3. 5.3.認知行動療法
  6. 6.ストレスによる腰痛と思ったら医師に相談しよう

ストレスと腰痛の相関について

ストレスと腰痛について相関があることが、データ解析をもとにした研究で明らかになりました。

同研究では、1995年と2001年の国民生活基礎調査から抽出されたデータを解析。その結果、1995年に調査されたデータの解析でストレスと腰痛には相関があると結論づけられました。
(参考:ストレス自覚度ならびに社会生活指標が腰痛・関節痛 ,肩こりに及ぼす影響:都道府県別デー タの解析|竹内武明らの研究)

国民生活基礎調査とは、国民の保健や医療、福祉、年金、所得などに対して行われる大規模調査で、厚生労働省によって実施されます。

同調査のなかには、ストレスの自覚や疾患について問う項目があり、研究ではそれらの問いへの回答結果をもとにデータ解析が行われました。データ解析は単相関分析と重回帰分析の2パターンで実施されました。

単相関分析の結果によると、2001年の国民生活基礎調査のデータではストレスと腰痛に相関は見られませんでしたが、1995年に関しては相関があったと報告されています。

一方、重回帰分析による解析では、2001年と1995年の両年でストレスと腰痛の相関がみられました。

以上からストレスと腰痛には相関があると考えられます。次にストレスによって腰痛を発症するメカニズムについて解説します。

ストレスによる腰痛のメカニズム

ストレスによる腰痛のメカニズムには、主に次の3つが考えられます。

  • 身体化による血流不足
  • 脳の痛みを感じる機能の不具合
  • 心理的ストレスによる姿勢バランスの崩れ

ストレスが腰に対してどのような影響を与えるのかを理解するためにも、以上のメカニズムを参考にしてください。

身体化による血流不足

身体化により腰の筋肉で血流が不足すると、腰痛を発症します。

心理的ストレスが原因で脳機能に不具合が起きると、「身体化」と呼ばれる現象が起こることがあります。身体化とは、体に起こるストレスに対する反応で、動悸や胃腸の不調、睡眠障害などは身体化の結果起こる症状です。

さらに身体化によって起こる症状のなかには、筋肉の血流不足があります。筋肉の血流が不足すると、酸素欠乏や老廃物の蓄積が起こり、痛みを発する物質が産まれます。痛みを発する物質が、知覚神経を刺激することで筋肉に痛みを感じるのです。

身体化によって腰の筋肉で血流が不足して発痛物質が生じると、腰痛を発症します。

脳の痛みを感じる機能の不具合

ストレスが原因で脳の痛みを感じる機能に不具合が生じると、痛みを感じにくくする仕組みがうまく働かずに慢性的に、腰痛を抱えることがあります。

脳が正常である場合、痛みの信号が脳に伝わると、それと同時にドーパミンが放出され、μオピオイドと呼ばれる物質も放出されます。μオピオイドは鎮痛薬にも使われていて、μオピオイド受容体に作用して痛みを抑える働きがあります。

しかし人間の脳はストレスを受けると、ドーパミンが放出されにくくなります。ドーパミンが放出されないことで痛みを抑える作用のあるμオピオイドも放出されなくなり、腰に慢性的な痛みを抱えてしまうのです。

心理的ストレスによる姿勢バランスの崩れ

心理的ストレスを受けると姿勢のバランスが崩れて、物を持ち上げたときなどにぎっくり腰を発症することがあります。姿勢のバランスが崩れた状態とは、背中や腰を丸めたような猫背の姿勢です。

またぎっくり腰は、腰に突然強い痛みを感じて動けなくなる状態で、急性腰痛とも呼ばれます。

姿勢のバランスが崩れた状態で物を持ち上げると、腰椎椎間板にかかる負担が増加して腰痛につながる可能性があります。

オフィスワークによる腰痛については、次の記事を参考にしてください。

  〈腰痛と仕事〉オフィスワークの腰痛はストレスが原因?適切な対応策を解説 働く人にとって、冬場は特に注意が必要な腰痛。パソコンを使用する際の姿勢や腰痛を予防する体操など、オフィスワーカーが知っておきたい腰痛予防の知識と、職場での対応を解説します。 エムステージ 産業保健サポート


ストレスによる心因性腰痛の特徴

ストレスによる心因性腰痛には、病院の検査で異常が見つからなかったり、症状に一貫性がなかったりする特徴があります。

病院の検査で異常が見つからない

腰になんらかの異常があれば、病院でレントゲンやMRIなどの検査を受けると、腰椎の変形や骨棘の形成、骨折、椎間板の変性などの原因がわかります。

一方でストレスによる心因性腰痛の場合、レントゲンやMRIを受けても異常が見つからない特徴があります。

症状に一貫性がない

心因性腰痛になると、特定の動きをした場合に痛みがあったり、無かったりして症状に一貫性が見られない点が特徴です。

一方で腰になんらかの原因を抱えている場合、一定時間の歩行や腰を曲げるなどの特定の動作により腰が痛くなるなどの一貫した症状が現れます。

ストレスによる心因性腰痛をチェックする方法

ストレスによる心因性腰痛を病院で判断する場合、BS−POP問診票によるチェックが実施されることがあります。BS−POP問診票とは「Brief Scale for Psychiatric Problems in Orthopaedic Patients」の略で、日本語では「整形外科疾患に対する精神医学的問題評価のための簡易質問票」と呼ばれます。

BS−POP

BS−POPには、医療従事者が患者を診てチェックする問診票と、患者自身がチェックして記入する予診票の2パターンがあります。

【医師用】

医師用の問診票には次の質問項目があります。

・痛みのとぎれることはない。
1.そんなことはない 2.時々とぎれる 3.ほとんどいつも痛む

・患部の示し方に特徴がある
1.そんなことはない 2.患部をさする 3.指示がないのに衣類を脱ぎ始めて患部を見せる

・.患肢全体が痛む(しびれる)
1.そんなことはない 2.ときどき 3.ほとんどいつも

・検査や治療をすすめられたとき、不機嫌、易怒的、または理屈っぽくなる
1.そんなことはない 2.少し拒否的 3.おおいに拒否的

・知覚検査で刺激すると過剰に反応する
1.そんなことはない 2.少し過剰 3.おおいに過剰

・病状や手術について繰り返し質問する
1.そんなことはない 2.ときどき 3.ほとんどいつも

・治療スタッフに対して、人を見て態度を変える
1.そんなことはない 2.少し 3.著しい

・ちょっとした症状に、これさえなければとこだわる
1.そんなことはない 2.少しこだわる 3.おおいにこだわる

【患者用】

患者用の問診票には次の質問項目があります。

・泣きたくなったり、泣いたりすることがありますか
1.いいえ 2.ときどき 3.ほとんどいつも

・いつもみじめで気持ちが浮かないですか
1.いいえ 2.ときどき 3.ほとんどいつも

・いつも緊張してイライラしていますか
1.いいえ 2.ときどき 3.ほとんどいつも

・ちょっとしたことが癪(しゃく)にさわって腹が立ちますか
1.いいえ 2.ときどき 3.ほとんどいつも

・食欲はふつうですか
3.いいえ 2.ときどきなくなる 1.ふつう

・1日のなかでは、朝方がいちばん気分がよいですか
3.いいえ 2.ときどき 1.ほとんどいつも

・なんとなく疲れますか
1.いいえ 2.ときどき 3.ほとんどいつも

・いつもとかわりなく仕事ができますか
3.いいえ 2.ときどきやれなくなる 1.やれる

・睡眠に満足できますか
3.いいえ 2.ときどき満足できない 1.満足できる

・痛み以外の理由で寝つきが悪いですか
1.いいえ 2.ときどき寝つきが悪い 3.ほとんどいつも

上記の問診票で心身の状態をチェックした際に、医師用で11点以上、もしくは医師用10点以上かつ患者用15点以上の場合にストレスなどの精神医学的問題点の関与が疑われます。ただし問診票で精神医学的問題点が疑われる場合であっても、内科や整形外科などの心理的ストレス以外の原因を疑うことも大切です。

ストレス性の腰痛への対処法


ストレス性の腰痛が疑われる場合、まずは病院を受診して適切な診察を受けましょう。病院で生活習慣の改善や認知行動療法を進められた場合は、それに取り組むことでストレス性腰痛の改善が期待できます。

病院を受診

病院を受診する際は、まずは整形外科を受診しましょう。整形外科でレントゲンやMRI検査を受けて、ストレス以外の原因がないかどうかを調べることが大切です。

整形外科で原因が分からなかった場合は、心療内科やペインクリニック、内科を受診すると腰以外の原因を調べてもらえます。

内臓の疾患が原因で腰痛が起こることもあるため、見過ごさないためにもまずは、病院を受診して適切な診断を受けましょう。


生活習慣の改善

ストレスによる腰痛が疑われる場合は、生活習慣の改善もおすすめです。たとえばウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を習慣にすると、心身の状態が整いストレス性の腰痛が軽減する場合があります。

またストレッチなどで腰や骨盤周りの血行を促進すると、腰痛が軽くなる効果が期待できます。無理をせずにできる範囲で運動習慣を身に付けるとよいでしょう。

認知行動療法

ストレス性の腰痛に対して認知行動療法が実施されることがあります。認知行動療法とは、ものごとに対する考え方に働きかけて、ストレスを感じにくくする治療法です。

ものごとに対する偏った考え方についてバランスを整え、ストレスにうまく対処できるようになります。

ストレス対策については次の記事も参考にしてください。

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ストレスによる腰痛と思ったら医師に相談しよう

ストレスによって血行不良や脳の不具合、姿勢のバランスの崩れがおこると腰痛になることがあります。

ストレスによる腰痛が疑われる場合は、まずは医師に相談してストレス以外の原因が隠れていないか検査してもらうことが大切です。

この記事では、ストレスによる腰痛への対処法も紹介しました。日頃からストレスを抱えて、同時に腰痛でも悩まされている場合は参考にしてください。

サンポナビ編集部

サンポナビ編集部

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