ウェルネス経営とは?メリットと実践法を紹介
近年、企業においては「ウェルネス経営」という取り組みが注目を集めています。健康経営と同じく、ウェルネス経営を企業活動に取り入れることには様々なメリットがあるといわれています。
本記事ではウェルネス経営の概要と実践法について紹介しています。
目次[非表示]
- 1.ウェルネス経営の概要
- 1.1.ウェルビーイング・ウェルネスとは
- 1.2.企業から注目されるウェルネス経営
- 2.ウェルネス経営のメリットと実践法
- 2.1.ウェルネス経営のメリット
- 2.2.ウェルネス経営の進め方①
- 2.3.ウェルネス経営の進め方②
ウェルネス経営の概要
ウェルビーイング・ウェルネスとは
ウェルネスを理解するためには、その用語を包括するウェルビーイングという概念を知ることが必要です。
世界保健機関(WHO)の憲章における「健康の定義」では、〈健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあること〉とあります。
ウェルビーイングという言葉は、単に身体が健康的な状態であることのみならず、精神的および社会的にも満たされた状態であり、「幸福」や「いきいき」といった概念も含んでいると考えられています。
そして、ウェルネスという用語は、米国の医師、ハルバート・ダン氏が1961年『輝くように生き生きしている状態』と提唱したのが最初の定義とされており、病気の有無や身体の状態のみによって健康をとらえるのではなく、より広義に健康をあらわすものです。
企業から注目されるウェルネス経営
近年では、企業において「ウェルネス経営」への注目が高まっています。
ウェルネス経営は、従業員が健康的かつ幸福感やいきいきとした状態で働くことのできる職場環境を整備することとされています。
よって、ウェルネス経営は安全衛生におけるリスクマネジメントにとどまらず、従業員の不調予防をはじめ、生産性の向上が見込める等、多くのメリットがあるのです。
同様の用語として「健康経営」や「人的資本経営」というものがあり、健康経営は従業員の健康にフォーカスした取り組みが多く、ウェルネス経営はより深く働く人の健康や幸福等を目指しているという違いもあります。
ただし、近年では「健康経営優良法人」の認定項目においても、従業員のエンゲージメントに関する評価指標が組み込まれる等、組織の活性度も注目されています。
また、もう一つの「人的資本経営」は、人材を資本として捉えるという考えであり、1776年にイギリスの経済学者アダム・スミスがその著書『国富論』の中で記した一節が起源とされています。
この考え方は、後にアメリカの経済学者であるゲイリー・ベッカー等によって「人的資本(ヒューマンキャピタル)」という言葉で定義されることになります。
その後、2001年にOECD(経済協力開発機構)の報告書では、人的資本を「個人的、社会的、経済的厚生の創出に寄与する知識、技能、能力及び属性で、個々人に備わったもの」と定義を拡大しました。
近年では、中長期的な企業価値向上に向けた人材戦略と位置づけ、ESGの観点から関心が高まりつつあり、企業においてもその重要性が注目されています。
ウェルネス経営のメリットと実践法
ウェルネス経営のメリット
前述したように、ウェルネス経営は様々なメリットがあり、働く人にとって職業生活を健康的に過ごすことができることだけでなく、経営的な面でも多くのメリットがあると考えられています。
具体的には、ウェルネス経営を推進することによって、株主や投資家などのステークホルダーや事業所の所在地域等からのイメージアップや評価が向上することが考えられ、株価などにも好影響を与えることされています。
ウェルネス経営のメリットは、従業員の心身の幸福が維持・増進されるため、休職や退職といった事態の防止につながり、企業の発展に寄与するといわれています。
また、働く人の不調を予防できることから、医療費等の経費削減にも期待ができるのです。
このように、ウェルネス経営には、単に従業員の健康を維持するというメリットだけでなく、体調不良を理由とした人材の流出を防ぐことや、企業のブランドイメージ向上や医療費の削減といったメリットが挙げられています。
ウェルネス経営の進め方①
ウェルネス経営が注目される背景には、我が国の労働人口の減少や、「働き方改革」を端にした長時間労働の削減など、健康的かつ効率的に働くための施策としての一面もあるようです。
また、ウェルネス経営や健康経営等への取り組みは、人材採用の面でも有利に働くことが多いため、企業においては投資の観点で活動しているケースも増えています。
ウェルネス経営の実施については決められたルールが設けられているわけではありません。よって、まずは人事労務や経営層が取り組む内容を策定し、経営トップからウェルネス経営推進のメッセージを発信するようにして始めることもあります。
このメッセージ発信が重要となる理由は、ウェルネス経営が人事部門や経営層だけでは実現できないことにあり、そこには必ず従業員それぞれの協力があって成し遂げることができるものだからです。
ただし、ウェルネス経営を推進するためにはその土台ともいえる健康経営への取組も欠かせないものになります。
ウェルネス経営の進め方②
ウェルネス経営を推進していくためには、その担当者を配置することが肝要です。
取組を進めている企業では、人事労務部門等にCWO(Chief Wellness Officer/最高健康責任者)やCHRO(Chief Human Resource Officer/最高人事責任者)と呼ばれるポジションを配置することもあります。
大企業であれば、CHROは自社の従業員とのコミュニケーションのほか、投資家等のステークホルダーとのコミュニケーションを主導する役割を持ちます。
そして、代表取締役などの経営陣とも定期な議論を行い、経営戦略とのつながりを意識しつつ取組みを進めるケースが一般的です。
ウェルネス経営は、主に大企業などで取り入れられているケースが多くありますが、中小企業であっても有効な手立てとなります。
これは、大企業に比べて中小企業では従業員個人の能力や生産性が経営に与える影響も大きいといえる環境であるためです。
■よく読まれている関連記事■