【解説】衛生委員会をオンラインで開催するための要件と注意点とは
2020年8月より、オンラインによる衛生委員会の開催が許可される通達が厚生労働省から出ました。
しかし「オンライン衛生委員会」にはいくつかのルールと注意点があります。
本記事では通達をやさしく解説していますので、人事・衛生担当の方はチェックしておきましょう。
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2020年8月、衛生委員会のオンライン開催がOKに。その要件とは
開催の延期期間が終了し、オンライン開催が認められた
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、2020年6月末までは衛生委員会の開催延期も可能でしたが、2020年7月からは衛生委員会を毎月開催することが義務付けられています。
また、衛生委員会は委員が対面で行うことを基本としていましたが、2020年8月に出された厚生労働省の通達により、オンラインでの開催が認められることになりました。
通達には、衛生委員会をオンラインで実施する際の要件と注意点が記載されていますので、一つずつ紹介していきます。
●基本的な考え方
安全委員会等は、事業者が講ずべき安全衛生対策の推進について、事業者に対して意見を述べさせるために設置・運営されるものであり、労使が協力し合い、事業場における安全衛生に係る事項について、十分に調査審議を尽くすことが必要不可欠である。
近年の急速なデジタル技術の進展に伴い、情報通信機器を用いて安全委員会等を開催することへのニーズが高まっているが、情報通信機器を用いた開催においても、事業場における安全衛生に係る問題の十分な調査審議が確保されるよう、事業者は、事業場の実情に応じた適切な方法により、安全委員会等の設置・運営を行う必要がある。
出典:厚生労働省「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第 17 条、第 18 条及び第 19 条の規定に基づく安全委員会等の開催について」より一部改変
衛生委員会をオンラインで「開催」するためには?
オンラインで衛生委員会を「開催」するために知っておきたい情報通信機器のルール。
衛生委員会をオンラインで開催するためには、情報通信機器を適切に使用することが要件として定められています。
要件の内容は、安定した映像・音声の送受信が可能であることや、個人情報の漏えい防止などが挙げられています。
また、具体的な内容については、次の①~③の要件をすべて満たしている必要があります。
安全でスムーズな衛生委員会にするために、使用する情報通信機器についてチェックしておきましょう。
●衛生委員会をオンラインで行うために必要な情報通信機器の要件
①(安全)衛生委員会を構成する委員が容易に利用できること
②映像・音声の送受信が常に安定し、委員が円滑に意見交換できること
③取り扱う個人情報が外部に漏えいすることを防ぎ、外部からの不正アクセス防止の措置をとること
衛生委員会をオンラインで「運営」するためには?
オンラインでも円滑なコミュニケーションがとれるよう、適切な運営を
衛生委員会をオンラインで運営する際の要件とは、端的に言えば、情報通信機器を使用した場合でも委員同士が円滑にコミュニケーションを取ることが可能な環境であること。そして、必要事項について調査審議が可能であることです。
そして、もう一つは、衛生委員会の開催期間や委員への資料共有をはじめ、意見の表明方法、委員の意見が異なる場合の調整方法、調査審議の結果を踏まえた事業者への意見提出の調整方法などが定められています。
クリアしなければならない衛生委員会の運営要件についてですが、すべての要件を満たす必要はありませんので、以下の通達でチェックしておきましょう。
衛生委員会をオンラインで「運営」するための要件
衛生委員会の運営については、次の①または②いずれかの要件を満たす必要があります。
①円滑な意見交換と調査審議に関する要件
対面により衛生委員会を開催する場合と同じように、委員同士の円滑な意見交換等が即時に行われ、必要な事項についての調査審議が尽くされていること。
また、音声通信やチャット機能による開催については、調査審議に必要な資料が確認でき、委員同士の円滑な意見交換等及び必要な事項についての十分な調査審議が可能であること。
②委員の意見共有・表明・調査審議に関する要件
上記①の要件によって開催することが原則になります。また、委員同士の円滑な意見交換や、必要な事項に関して十分な調査審議が可能となるように、以下の3つの方法についても項目が定められています。
- 開催期間、各委員への資料の共有方法及び意見の表明方法
- 委員相互で異なる意見が提出された場合の調整方法
- 調査審議の結果を踏まえて事業者に対して述べる意見の調整方法等
この3つについては、以下の⑴~⑷の事項に留意し、衛生委員会で事前に定められていれば、電子メール等を活用した即時性のない方法により開催することとして差し支えないとされています。
(1) 資料の送付から委員が意見を検討するための十分な期間を設けること。
(2) 委員からの質問や意見が速やかに他の委員に共有され、委員間で意見の交換等を円滑に行うことができること。その際、十分な調査審議が可能となるよう、委員全員が質問や意見の内容を含む議論の経緯を確認できるようにすること。
(3) 委員からの意見表明等がない場合、当該委員に対し、資料の確認状況及び意見提出の意思を確認すること。
(4) 電子メール等により多数の委員から異なる意見が提出された場合等には委員相互の意見の調整が煩雑となることから、各委員から提出された意見の調整に必要な連絡等を行う担当者を予め定める等、調査審議に支障を来すことがないようにすること。
出典:厚生労働省「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第 17 条、第 18 条及び第 19 条の規定に基づく安全委員会等の開催について」より一部改変
オンラインの衛生委員会でも「議事録」の作成が必要
「オンライン衛生委員会」でも議事録をお忘れなく
オンラインで衛生委員会を開催する場合でも、「議事録」の作成と保存は必要となります。
労働基準監督署による「臨検」があった場合には、衛生委員会の議事録のチェックが入ります。
ですので、例えば「衛生委員会の様子を録画しているから、議事録は作らなくてもいいか」というのはNGです。
衛生委員会を開催したら、オンラインであっても必ず議事録を作成し、適切に保管する必要があるのでくれぐれも注意しましょう。
「はじめての衛生管理者ガイドブック」や「衛生委員会の議事録フォーマット」など、産業保健業務に役立つ資料は以下のリンクからご確認いただけます。
資料ダウンロードは無料ですのでお気軽にお役立てください。
●衛生委員会「議事録」に関する記事はこちら