禁煙成功率向上中!法人向け禁煙プログラムが効果を発揮する理由


2017年4月にリリースされた法人向けモバイルヘルスプログラム「ascure(アスキュア)禁煙プログラム」。まだ開始後1年を経たないながら、着実に成果が出ているという。しかも、日本を代表する大企業においてだ。

プログラムを導入した野村證券健康保険組合、第一生命保険株式会社にその経緯やメリットについて話をうかがった。


ascure(アスキュア)禁煙プログラムとは

ascure(アスキュア)禁煙プログラム」は、「治療アプリ」を開発するキュア・アップが慶應義塾大学と共同開発した「ニコチン依存症治療アプリ」の知見をもとに、「法人向け専用アプリ」に加え、禁煙指導員、医薬品(ニコチンパッチ)により、禁煙挑戦者を多面的にサポートするプログラムだ。(関連記事:アプリが“治療”する未来が近づいた! 日本初「スマホアプリの治験」、ニコチン依存症治療にて始まる


従来の禁煙プログラムでは、通院や指導の時間以外は支援が受けられず、支援の「空白期間」において挑戦者は孤独な闘いを強いられる。ascure(アスキュア)ではアプリが毎日、個人の状態に応じてガイダンスを行い、従来の「空白期間」においてもサポートを行うことを可能にすると共に、挑戦者が日々入力した禁煙日記のデータをベースに、禁煙指導員が個人の状態に合わせたカウンセリングも行う


ニコチン依存には身体的依存と心理的依存があるが、医薬品だけでは身体的依存にしか対処が難しい。ascure(アスキュア)では、ニコチンの身体的依存のみならず心理的依存に対しても総合的に介入していく

また従来の禁煙外来では、3ヶ月の治療期間が終了した後の3か月で多くの患者が再喫煙してしまうことから、6か月にわたるサポートを実施し、禁煙成功へと導く点も特徴だ。


少数精鋭で100%の成功率!喫煙年数が長い社員も手をあげた理由とは

野村證券健康保険組合の取り組み


ascure(アスキュア)禁煙プログラム(以下、ascure)を導入した野村證券健康保険組合 常務理事の播磨俊郎氏、嘱託の糸岡賢氏にお話をうかがった。

これまでも同健保組合では、野村證券や野村総研などの各事業主が健康管理センターに資料を置いたり、禁煙外来を勧めたりといった取り組みは行っていたという。

だが、禁煙対策の必要性は感じていながらも、禁煙外来が保険適用になって以降、逆に保健事業としては積極的には取り扱ってはおらず、世界禁煙デーに合わせてチラシを配ったりする程度であった。が、今回はトライアルとしてascureを導入し、10名の喫煙者が禁煙に取り組んでいる

「昨今多くの禁煙外来で処方されるチャンピックスは、即効性はあるものの、眠気やめまいを起こす副作用も報告されており、車を運転する営業社員も多いので、そのあたりは配慮が必要です。また、せっかく禁煙できても数か月後には約半数がまた喫煙してしまうことも課題でした。

ですが、キュア・アップさんが提案されたascureはじっくり時間をかけて身体的依存だけでなく、心理的依存も含めて本質的な禁煙を達成するというコンセプト。ニコチンパッチを使用するので、運転する社員が使っても問題ありません。キュア・アップの説明を聞いたところ、アプリで個々人に適した支援をするというコンセプトも新鮮でしたし、アプリによるこまめな介入が従来の支援の空白期間を埋め脱落者を減らす効果があるだろうとも考えられました。

とはいえ、即効性を求める人もいます。なので、今回はそういった人向けに、ascure以外でもう一社、チャンピックスを使ったプログラムも用意しました。「(他社プログラムで)すぐに禁煙したい」のか、それとも「(ascureで)じっくり確実に禁煙したい」のかという選択肢を提示し、希望に合った方を選び、手を挙げてもらうように案内しました。 “2つの中から自分で選んだ”という意識が、継続を後押ししてくれることも期待していました。」(播磨氏)。


テスト対象者は、特定保健指導の対象者で、かつ喫煙の項目が外れれば動機づけ支援に戻れる約200人を抽出した。対象となった200名は、40歳以上で喫煙者であるゆえに特定保健指導の「積極的支援」に該当することとなった社員、つまり喫煙の他に高い健康リスクを有する社員だ。1か月の募集期間で、各プログラムに約10名が手をあげ、参加案内がされた。

「結果的に、喫煙年数も長く“がんこ”でハイリスクな社員が、こちらの想定以上に新しいソリューションに興味を示して手を挙げてくれたことは、非常に良い成果だと思います。」(糸岡氏)。

健保としては、何とか禁煙にトライして欲しい人達ではあったが、「禁煙に取り組んでみませんか」と正論で呼びかけるだけでは効果がないと判断。そこで対象者へのメッセージにも工夫を凝らし、「寿命が戻る」「家族が喜ぶ」など、身近な例で禁煙によるメリットを挙げるとともに、禁煙できないのは意志の問題ではなく、ニコチン依存の状態なので適切な支援を受ければ卒煙できますよ!というメッセージを打ち出したのだ。


アプリとカウンセリングの合わせ技できめ細かく寄り添い、脱落者は皆無

ascureの要は、きめ細かく患者に寄り添うところにあると播磨氏は感じている。

「多くの禁煙外来で処方されるチャンピックスはニコチン受容体をブロックする医薬品で、たばこを吸ってもおいしくなくなる作用があり身体的依存には有効です。が、一方で、医薬品では心理的依存に対する介入は十分ではありません。そのため、治療、医薬品の使用期間が終わると一般の禁煙外来と同様、再喫煙してしまう懸念があります。

一方、ascureが用いるニコチンパッチは効果としては控えめとも言われますが、その分アプリと指導の介入頻度・支援の手厚さで心理的依存までフォローすると。禁煙は孤独な闘いです。1人でニコチンの離脱症状と戦わなければならないし、喫煙環境も異なるので、ascureのような一人ひとりに合わせたアプリとカウンセリングによる丁寧なアプローチが重要なのです」。


参加者のアプリの利用率は7~8割と高い。アプリに慣れていない年代の参加者が多いことにも配慮して入力項目を最小限に絞り、慣れれば20秒ほどで完了するようにしたことが功を奏した。

カウンセリングをする指導員は、アプリから得られるデータを事前に見られるため、挑戦者の状態を把握し、指導の準備をした上でカウンセリングに臨める。カウンセリングが始まってから経過を聞く従来の形だと、特にうまくいっていない方の場合、聞き出すだけでも10~15分経ってしまうが、ascureでは事前に確認ができているので、その時間もアドバイスとその実践のすり合わせに使うことができるのだ。

糸岡氏も「再喫煙は防ぎたい。その点ascureは、2か月の医薬品の使用期間が終わったあとも4か月しっかり介入し、ニコチンへの心理的依存に対してサポートしてくれる」と評価する。


ascureを開始して3か月を経過する社員も出てきたが、脱落者は皆無だ。満足度調査も10点中9点を超えている。「友人を紹介したい」「次はいつスタートするのか」という声も上がっているほどだ。健保組合どうしのつながりもあることから、この成果に関心を持つ健保組合も出てきているという。

プログラム開始から半年経つとテストデータも揃うので、効果がデータとして明示されることになる。播磨氏は「対象者の基準を設定して、これからも禁煙プログラム参加者を募集していきたい。また禁煙の啓発活動として、成功事例も伝えていければと考えています」と意欲を示した。


これまで低調だった禁煙キャンペーンの打開策!全社員から参加者を募集

第一生命の取り組み


次に第一生命保険株式会社人事部健康増進室の大桑京子氏、竹田桂子氏にお話をうかがった。

第一生命が、中期経営計画で社員の喫煙率の低下を数値目標として掲げ、禁煙対策に本格的に取り組みはじめたのは2013年から。当時はまず、喫煙率を下げるために禁煙キャンペーンを行った。1か月禁煙にチャレンジしてもらうというもので、チャレンジャーはサポーターの声かけを受けながら二人三脚で禁煙に取り組み、成功者とそのサポーターを表彰した。

また、禁煙外来の費用補助も実施した。特に2016年からは、成功者には禁煙外来の保険適用の有無などの条件にかかわらず、かかった費用は全額補助するという思い切った取り組みだった。しかし、禁煙外来での成功者数も禁煙キャンペーンの参加者数も思うように伸びなかったという。

「成功率が高いといわれ期待していた禁煙外来でも成功率が上がらなかったのは、事業所が全国各地に点在しているため禁煙外来を受診したくても近くにないという地理的制約、そして当社社員の8割が女性営業職であるため、育児や家事による時間的制約2つが大きな原因ではないかと考えられました。禁煙キャンペーンも低調で、別の効果的な手を打つべきではないかと危機感を持っていました」(大桑氏)


そんなときに提案されたのがascureだった。オンラインで禁煙支援ができるascureなら、禁煙外来を受診したくてもできなかった社員も禁煙に取り組んでくれるのではないかと、第一生命健康保険組合と共同で導入を決めた。何より大きな決め手となったのは、プログラムの内容だ。保健師でもある竹田氏はこう説明する。

「医師によって開発されたプログラムなので、医学的な裏付けがあることに加えて、禁煙に導くアプローチがしっかりつくり込まれています。アプリによる介入と指導員のカウンセリングが6か月続くという、禁煙のためのサポートが万全なプログラムだと確信し、保健師としても安心してascureに任せられると思ったのです」。


第一生命では毎年10月に「健康増進月間」としてさまざまな健康増進のためのキャンペーンやイベントを行っている。それに合わせて、ascureを導入することを全社員に向けて打ち出し、参加者を募集した。現時点で社内の喫煙者は約2割だというが、エントリーしたのは230名。現時点で実際にプログラムをスタートしているのは80名で、その9割近くが40~50代を中心とした女性だ。

健康増進室としてもこれまでの禁煙対策に手詰まり感があったなか、果たしてどれくらい反響があるか心配していたが、これまでの禁煙キャンペーンと比べると、驚くほどの申し込みがあったと喜ぶ。エントリーがあった社員は、青森から鹿児島、高知など全国に分散しており、禁煙外来のない地方の人も多く、禁煙外来を受診したくてもできなかった社員へアプローチしたい」という思いが叶った

「ascureが参加への声かけをしやすいプログラムだったことも、参加者が集まった大きな要因だと思います。これまで禁煙には楽しくないイメージがありましたが、アプリを使って気軽にできることや通院しなくていいことがこれまでのイメージを変えたのではないでしょうか」(大桑氏)


個別化した指導が成功のカギ!プログラムはバージョンアップ中

健康増進室が行ったヒアリングでは、指導員のカウンセリングスキルについて高い評価の声が寄せられた。「状況を細かく聞いて気持ちを汲み取ってくれる」「時間をかけて丁寧なアドバイスをしてくださって心強い」などという声が上った。カウンセリングにかける時間は初回が40~45分、2回目以降でも30分。特に初回は、これまでの禁煙に失敗したシチュエーションを細かく聞き取るなどして、参加者の性格や弱みを把握しているという。

「周囲に喫煙者がいるのか」「いつもどういった場所で喫煙をしているのか」といった喫煙環境、過去に禁煙い失敗した時のシチュエーションなども聞き取り、その人に合わせたアドバイスがされるために、満足度も全体で10点中9点超えと高い。


ただ、カウンセリングをする指導員によって評価が上下する項目もある。そのため、キュア・アップでは週1回振り返りを行い、指導員のレベルアップやスキルの標準化にも取り組んでいる。また、対象者にホスピタリティを持って寄り添うことも重視している。禁煙に失敗するとこの人が悲しむからがんばろう』と対象者に思ってもらえるような信頼関係を築くことができるよう、指導員もスキルアップに熱心だ。

今の課題のひとつは、着実にたばこの本数は減っているが、そこからゼロまでもっていけていない、いわゆる「減煙」はできているが「卒煙」できていない人へのアプローチだ。完全禁煙へのひと押しをするため、カウンセリングの内容を「はげまし」中心から、モードチェンジするタイミングをいつにするか、も検討されている。

そして見逃せないのが、3割弱の脱落者だ。脱落する人をそのままにするのではなくどう引き上げていくのか、新しい対策を出してほしいとキュア・アップに要望していることを大桑氏は明かす。「せっかく手を挙げて参加してもらったからには、できるだけ6か月続けてほしい。営業職は狭い世界で口コミが広がりやすいので、成功すれば『あなたもやりなさい』と参加者が広がっていくはずです。」


こうした課題はありつつも、手応えも感じている。

「禁煙対策はいろいろとやってきましたが、これ以上私たちだけでできることには限界がありました。禁煙キャンペーンも1、2か月が限度。それに終了すると再喫煙に戻ってしまうのでは意味がありません。ascureのようなきちんとした仕組みがないと禁煙は成功しません。ascureは結果を出せるプログラムだと思っているので、なんとしても結果を出したいですね。」(大桑氏)

キュア・アップでは、こういった、プログラムを採用している企業からのフィードバックや利用者の声を受けて、プログラムをアップデートし、ascureバージョン2を4月リリースに向けて改修しているところだ。

遠隔禁煙プログラムの取り組みは動き出したばかりです。すぐに100%成功するものではないでしょうが、当社の意見がフィードバックされてプログラムが改良されていけば、他社にも広がっていくでしょう。そうなれば、当社も早めに取り入れて良かったと思えます。」と、竹田氏も期待を表す。

6か月のプログラム終了後、成果が出ていれば来期も継続していきたいと結んだ。


「禁煙」という、多くの企業が対策に苦労している分野で、先進的な試みをしている野村證券健康保険組合、第一生命保険株式会社の取り組みを紹介した。


文/坂口鈴香

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