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【2024年4月施行】保護具着用管理責任者の選任義務化とは?

2023年から化学物質の管理方法の方針が転換し、企業には自律的管理が求められるようになりました。その一環として、2024年4月より、「保護具着用管理責任者」の選任が義務化されました。

本記事では、保護具着用管理責任者の資格要件や企業に求められる義務化への対応を解説します。同じく2024年4月よりスタートした、保護具の着用義務範囲の拡大についても説明していますので、参考にしてみてください。

今までと何が変わる?保護具着用ルールの変更

今までと何が変わる?保護具着用ルールの変更

2024年4月の改正により、皮膚等障害化学物質等の製造 ・取扱い時に「不浸透性の保護具の使用」 が義務化されました。改正前との変更点を解説します。

皮膚等障害化学物質も対象に


従来は、「特別規制対象物質」のみ保護具の着用が義務とされていましたが、改正により「皮膚等障害化学物質(1,064物質)」にも範囲拡大されました。そのため、皮膚等障害化学物質に該当する物質を取り扱っている場合、保護具の着用が必要です。

対象が拡大された皮膚等障害化学物質は、以下のように皮膚刺激性有害物質、皮膚吸収性有害物質の2つに分類されます。


種類

特徴

皮膚刺激性有害物質       

皮膚や眼に障害を与える恐れが明らかな化学物質で、皮膚炎などの局所的な影響があるもの。

皮膚吸収性有害物質

皮膚からの吸収や侵入により、健康障害が生じる恐れが明らかな化学物質。意識障害やがんの発病など、全身に影響を及ぼす。


上記のように、健康被害を起こす恐れがあることが明らかな物質の製造または取り扱う場合は、保護具の着用が義務づけられます。厚生労働省がまとめている不浸透性保護具使用義務物質リストを参考に、業務上で該当物質が使用されているかを判断しましょう。

参考:労働安全衛生法の新たな化学物質規制│厚生労働省

不浸透性の保護具とは

保護具は、有害物と直接接触しない不浸透性の皮膚障害等防止用保護具の使用が義務づけられています。例えば、保護衣や保護手袋、履物、保護眼鏡など、化学物質から身体を守るための保護具です。

保護具は、一般的な手袋や履物などとは性質が違うため、適切なものを選定する必要があります。保護具着用管理責任者が中心となって、作業環境や条件に応じて、適切な保護具の選定を行っていきます。

参考:皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル(概要)│厚生労働省

選任義務化となる「保護具着用管理責任者」とは?

選任義務化となる「保護具着用管理責任者」とは?

従来は、有害な化学物質を労働安全衛生法で規制していましたが、2022年の労働安全衛生法関係法令の改正により、自律的管理を企業に求めるようになりました。自律的管理とは、国が定めた基準内で、事業者が化学物質に関するリスクを独自に評価して管理する方法です。

自律的管理の一環として、2024年4月から選任が義務化されたのが保護具着用管理責任者です。
保護具着用管理責任者の職務内容や他の責任者との位置づけについて解説します。

参考:皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル│厚生労働省

保護具着用管理責任者の職務内容

保護具着用管理責任者は、保護具の選定や使用方法の教育、保守管理を行う役割があります。

1.適切な保護具の選定

従業員が安全な保護具を使用できるよう、適切な保護具を選定します。保護具の選択が適切でないと、従業員が化学物質に暴露する量が多くなり、健康上の悪影響が生じる恐れがあります。

以下は、保護具として代表的な化学防護手袋の選定ポイントです。作業の環境や方法を考慮しながら適切な保護具を選定しましょう。

  • 作業内容と時間、取扱い物質を確認する
  • 保護具材料の耐透過性データや性能を確認する
  • 必要に応じて詳細をメーカーに問い合わせる

2.適切な使用方法の教育

労災防止のため、従業員が保護具を正しく使用できるように教育します。具体的には、以下のような内容のチェックリストを作成し、使用ルールの遵守を徹底してもらうとよいでしょう。

  • 着用前の穴あきやサイズのフィット感、アレルギーの確認を実施する
  • 設定した使用時間を遵守する
  • 化学物質が付着しない方法で着脱する

3.日常的な保守管理

保護具の性能が保たれるよう、日常的に保守管理を行う役割も求められます。適切な環境下で保管されていないと、劣化し十分な性能が得られない可能性があるからです。保護具が十分に機能するよう、以下のような保守管理を行います。

  • 予備保護具の在庫確認
  • 二次曝露を防ぐ廃棄ルールの設定
  • 乾燥した環境下での保管

参考:皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル(概要)│厚生労働省

保護具着用管理責任者の位置づけ

化学物質管理者のリスクアセスメントの結果に基づく措置として、従業員に保護具を着用させる場合には、保護具着用管理責任者の選任義務が生じます。化学物質管理者の指示のもと、保護具着用に関する施策を中心となって行います。

新たな化学物質管理における事業場内の体制

出典:皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル│厚生労働省

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保護具着用管理責任者の選任条件

保護具着用管理責任者の選任条件

保護具着用管理責任者は、以下の6つの条件を満たせば選任の対象となります。保護具着用管理責任者の選任の必要が生じた日から、14日以内に選任する必要があります。

  1. 化学物質管理専門家の要件に該当する者
  2. 作業環境管理専門家の要件に該当する者
  3. 労働衛生コンサルタント試験に合格した者
  4. 第1種衛生管理者免許もしくは衛生工学衛生管理者免許を受けた者
  5. 作業主任者技能講習を修了した者(特定化学物質、金属アーク溶接、有機溶剤、鉛、四アルキル鉛)
  6. 安全衛生推進者講習を受講した者

事業場規模や選任人数に規定はありませんが、職場ごとの事情に合わせて複数人を選任することが望ましいとされています。
また、保護具の選定や使用に関する教育などの管理業務を行うため、社内で一定の権限を持つ従業員が適しているでしょう。

参考:労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行について│厚生労働省

資格を持つ従業員がいない場合は講習の受講が必要

上記6つの条件を満たす従業員がいない場合は、以下の保護具着用管理責任者教育カリキュラムという専門的講習を受講する必要があります。全国の講習機関にて、対面やオンライン形式にて実施されていますので、早めに受講しましょう。

保護具着用管理責任者教育カリキュラム

出典:皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル│厚生労働省

選任後は社内へ周知・啓発を

保護具着用管理責任者の選任に関して、労働基準監督署への報告義務はありません。しかし、責任者の氏名を職場内のわかりやすい位置に掲示するなど、周知を図る必要があります。
他にも、責任者に腕章や帽子をつけてもらうと、従業員も一目でわかりやすいでしょう。

また、職務内容に沿って、保護具選定に関する決定権や適切な使用方法に対する指導など、適切な権限を与えます。責任者が円滑に保護具着用管理業務に取り組める仕組みをつくりましょう。

化学物質による健康障害防止には産業医との連携が重要

保護具着用への配慮は、従業員の健康を守るために重要な施策です。しかし、化学物質の性質を把握した保護具選定や保守管理など、専門性が高く、判断できないケースもあるでしょう。

社内での対応が難しい場合は、産業医との連携が有効です。化学物質管理者や保護具着用管理責任者とともに職場巡視を行い、医学的見地からの助言が可能です。産業医と連携し、従業員の健康を守る施策に取り組んでいきましょう。

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