2023年度より義務化「化学物質管理者」とは?資格要件・選任のルールを紹介

化学物質の管理については、2023年4月より新たな規制がスタートし、その中では事業者による化学物質の自律的な管理および「化学物質管理者」の選任が義務付けられるようになりました。

本記事では、化学物質管理者の資格要件や選任のルールについて概要を紹介します。


2023年度より「化学物質管理者」の選任義務が発生

化学物質管理をめぐる近年の動向

化学物質の数は増加傾向にあり、現在、日本において工業的に使用されている化学物質の数はおよそ7万種類といわれています。

また、化学物質にまつわる事故の発生も跡を絶たず、国としても政省令を改正するなどして対応を行っており、2023年4月からは新たな化学物質規制がスタートしました。

従来は化学物質のリスク評価を国が行い、各種の予防規則等に追加した上で、その取扱いを法令で定める方式でしたが、今後の新しい化学物質規制では、事業者による自律的な化学物質管理が求められています。

そして、事業場における化学物質の管理については「化学物質管理者」が中心となって、適切な対応を行っていくことが義務化されています。

■よく読まれている関連記事■

  〈改正の3要点〉2023年4月より安衛法の「新たな化学物質規制」が施行 労働安全衛生法施行令の一部改正により、2023年4月より新たな化学物質規制の制度がスタートしています。本記事では、新たな規制の義務内容とその対応について、3つの要点でまとめています。 エムステージ 産業保健サポート



2023年4月よりの選任義務が発生する「化学物質管理者」とは

2023年度より、事業者による自律的なリスクアセスメントおよび化学物質管理に向け、その活動の実施体制を確立することも求められるようになりました。

その中で「化学物質管理者」の選任が義務化され、ばく露防止措置の実施管理、化学物質の自律的な管理まつわる各種の対応が挙げられています。

化学物質管理者とは、事業場における化学物質の管理に係る技術的事項を管理するものとして位置づけられており、リスクアセスメント等が義務付けられている危険性・有害性のある化学物質を取り扱うすべての事業場で選任しなければなりません。

化学物質管理者の職務については後述しますが、代表的なものはラベル・SDSの作成管理やリスクアセスメントの実施、化学物質の危険性や有害性を労働者に伝えること等も含まれます。

また、ばく露低減対策等の基本的な活動の他、労働災害発生時の対応や労働者の教育についても携わる必要があります。

ただし、従業員規模や取り扱う化学物質が多い事業場においては、これらの活動を化学物質管理者ひとりが行うことは難しい場合も考えられますので、その際は外部の専門家を活用することも推奨されています。


化学物質管理者の職務とは?

前述したように、化学物質管理者の職務は、化学物質の完治に係る技術的事項を管理することであり、その内容は大きく分けて2つあります。

一つ目は「自社製品の譲渡・提供先への危険有害性の情報伝達に関する職務」もう一点が「自社の労働者の安全衛生確保に関する職務」とされています。

また、厚生労働省の公表している「化学物質管理者講習テキスト」では、化学物質管理者の具体的な職務について以下①~⑦を挙げています。

なお、①のみ自社製品の譲渡・提供先への有害性伝達に関する職務であり、②~⑦については自社の労働者の安全衛生確保に関する職務の内容とされていますので、詳細と合わせて同テキストも確認しておきましょう。

▼化学物質管理者の職務(概要)

①    ラベル表示及び安全データシート(SDS)交付関連

②    リスクアセスメントの実施

③    リスクアセスメント結果に基づくばく露防止措置の内容及び実施に関すること

④    リスクアセスメント対象物を原因とする労働災害が発生した場合の対応

⑤    リスクアセスメントの結果等の記録の作成及び保存並びに労働者への周知に関すること

⑥    リスクアセスメントの結果に基づくばく露防止措置が適切に施されていることの確認、労働者のばく露状況、労働者の作業の記録、ばく露防止措置に関する労働者の意見聴取に関する記録・保存並びに労働者への周知に関すること

⑦    労働者への周知、教育に関すること


出典:厚生労働省「化学物質管理者講習テキスト」


化学物質管理者の選任に関するルール

化学物質管理者の選任ルール①:資格要件

化学物質管理者の選任義務については事業場の規模や従業員数の定めがありません。

つまり、化学物質を取り扱う事業場であれば、その規模の大小にかかわらず、たとえ小規模な事業場であっても化学物質管理者の選任が必須とされています。

その他、化学物質管理者の選任についてはいくつかのルールがあり、具体的には化学物質管理者の権限や選任後の内容に関するものです。


化学物質管理者の資格要件

化学物質管理者になれる人は「化学物質管の管理に係る技術的事項を担当するために必要な能力を有すると認められる者」とされています。

リスクアセスメント対象物を製造する事業場においては厚生労働大臣が示す内容にしたがった専門的講習(下表)を受講しなければなりません(リスクアセスメント対象物の製造事業場以外では、専門的講習受講等の資格要件はありません)

なお、化学物質管理者の講習については中央労働災害防止協会が運営しているものがあり、同協会のホームページから講習へ申し込むことができます。

化学物質管理者の専門的講習

出典:厚生労働省「化学物質管理者講習テキスト」


化学物質管理者の選任ルール②:選任後のルール

化学物質管理者は事業場内の労働者から選任することが求められていますので、衛生管理者と同様に、社内の人材に担当してもらうことが一般的です。

また、化学物質管理者は、選任すべき事由が発生してから14日以内に選任する必要があり、事業者は選任した化学物質管理者に対して、前述した「化学物質管理者の職務(①~⑦)」の権限を与えなければなりません。

そして、化学物質管理者を選任した際はその旨を関係労働者に周知する必要があります。具体的な方法は、化学物質管理者の氏名を事業場の見やすい場所に掲示すること等が挙げられています。

なお、化学物質管理者に求められる職務およびその内容については、本記事に記載したもの以外にも多岐に渡っていますので、必ず専門のテキスト等をチェックしておくようにしましょう。

株式会社エムステージでは、産業医や保健師の紹介からメンタルヘルス領域まで、産業保健のあらゆるお悩みに対応するサービスを展開しています。人事労務課題にお困りの方はぜひ一度お問い合わせください。

  エムステージ 産業保健トータルサポート 1,900企業とサービスご契約中です!官公庁、大手企業から中小企業・スタートアップまで幅広くご活用中です。産業医・産業保健師の選任、ストレスチェック、メンタルヘルス・ハラスメント研修、外部相談窓口等。メンタル不調者(休職者・離職者)の増加、健康経営有料法人の取得に向けて、ストレスチェックの結果活用、など企業のニーズにお応えします。 エムステージ 産業保健トータルサポート



サンポナビ編集部

サンポナビ編集部

企業の産業保健を応援する『サンポナビ』編集部です。産業医サポートサービスを提供している株式会社エムステージが運営しています。 産業医をお探しの企業様、ストレスチェック後の高ストレス者面接でお困りの企業様は、ぜひお問い合わせボタンからご相談ください。

関連記事


\導入数4,600事業場!/エムステージの産業保健サービス