【離職率を下げるには?】高くなる理由や離職防止に効果的な方法を解説!平均はどれくらい?
離職率を下げるには、まずは各企業で離職の要因を分析することが大切です。要因に合わせた対策を講じることで、離職率の改善が期待できます。
待遇への不満やキャリアパスへの不安以外に、近年ではメンタルヘルス不調による離職が増えており、ストレスチェックの実施など産業保健活動への取組が重要視されています。
従業員が働きやすい職場づくりをすることで、生き生きと安心して働くことができるでしょう。
本記事では、離職率が高くなる理由と対策について詳しく解説。さらに健康経営に取り組んで離職率を抑えた企業事例も紹介します。
日本企業の離職率の平均は?
令和4年の雇用動向調査結果の概況では、離職率の平均は15.0%でした。これは業種や就労形態によっても異なるので、あくまで目安としてお考え下さい。
離職率の計算式は次の通りです。
離職率(%)=離職者数÷常用労働者数×100 |
常用労働者数には、無期雇用者と有期雇用者の両方が含まれます。
参考:令和4年雇用動向調査結果の概況|厚生労働省
新卒3年目の離職率は32.3%
厚生労働省によると、令和2年3月卒業の新規大学卒就職者における就職後3年以内の離職率は、32.3%でした。
離職率の高い業種から上位5つを紹介すると次の通りです。
▼新規大学卒就職者における就職後3年以内の離職率(上位5業種)
業種 |
離職率 |
宿泊業、飲食サービス業 |
51.4% |
生活関連サービス業、娯楽業 |
48.0% |
教育、学習支援業 |
46.0% |
医療、福祉 |
38.8% |
小売業 |
38.5% |
「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します|厚生労働省」をもとに作表
最も離職率が高い宿泊業や飲食サービス業では、2人に1人以上が3年以内に離職していることになります。
終身雇用制度の崩壊とキャリア観の変化
終身雇用制度の崩壊によって、企業がキャリアを提示するのではなく、社員自らがキャリアを考えるようになりました。
株式会社パーソル総合研究所が実施した「従業員のキャリア自律に関する定量調査」では、キャリア自律度が高く、市場価値(自己認知)も高い若手ほど転職を希望する傾向が強くなるという結果が分かりました。
会社にはどのようなキャリアパスがあるのかを明確化させ、また従業員が望むキャリアプランを表明する機会を設けることが離職率の低下に繋がります。
参考:従業員のキャリア自律に関する定量調査|パーソル総合研究所
離職率の上昇で発生する4つのリスク
離職率の上昇で発生するリスクは次の4つです。
人材流出による生産性の低下
離職者の連鎖
企業イメージの低下
採用・教育コストの増加
それぞれについて解説します。
人材流出による生産性の低下
離職後、競合他社に転職した場合には自社で得たノウハウや顧客が他社へ流出するリスクがあります。顧客との関係性が企業ではなく個人で構築されている場合、担当変更に伴い取引が終了するケースも多いのではないでしょうか。
せっかくコストをかけて育成し、経験・実績を積んできた中堅層が離職していくことで、生産性の低下へと繋がるでしょう。
離職者の連鎖
離職者が増えると残った従業員が業務のフォローをする必要があり、残業時間の増加など労働環境が悪化する恐れがあります。業務負担を不満に感じる従業員が増えるとモチベーションが低下し、離職者の連鎖へと繋がる可能性があります。
企業イメージの低下
求職者はハローワークや就職四季報などを利用して、気になった企業の離職率を調べられます。離職率が高いと、労働環境や仕事内容についてマイナスなイメージを持たれるかもしれません。
また昨今は転職サイトなどを利用して、求職者が企業の口コミや評判を簡単に調べられるようになりました。離職者が増えてネガティブな口コミを投稿されることで、企業のイメージダウンに繋がる可能性があります。
採用・教育コストの増加
離職者の業務をカバーするために新しい人材を採用する必要があります。面接や選考に費やす人件費や、求人広告や人材紹介会社への支払いなど、離職率があがることでコストも増加していきます。
新規採用者に対しては企業のシステムや業務内容を覚えてもらうために、まずは教育が必要です。ビジネスマナーやマネジメントスキルなど、人手が足りていれば社員が講師をする場合もありますが、外部講師を招いて社外での研修をおこなうことで講師料や会場費などのコストがかかります。
離職率が高くなる5つの理由と対策方法
離職率が高くなる主な理由として、次の5つが考えられます。
- 労働時間が長く休日が少ない
賃金が低い
教育制度が整っていない
従業員同士の人間関係が悪い
健康経営に取り組んでいない
それぞれについて対策をご紹介します。
労働時間が長く休日が少ない
労働時間が長く休日が少ないと、従業員が労働条件に対して不満を抱えやすくなります。しっかりと休息を取り、メリハリをつけて働ける環境を整えましょう。
<対策1>長時間労働の削減
長時間労働を削減するには、まずは労働時間の実態を正しく把握しましょう。サービス残業の有無についても確認することが大切です。正しい労働時間が管理できていない場合は、勤怠管理システムの導入を検討しましょう。
誰がどれだけの業務を抱えているのか、無駄な作業がないかオペレーションを見直すのもおすすめです。
<対策2>年次有給休暇取得の促進
従業員に十分な休暇を与えるためにも、年次有給休暇の取得を促進しましょう。労働基準法では次の条件を満たす従業員に対しては有給休暇を与えることが定められています。
- 雇い入れの日から6か月経過していること
その期間の全労働日の8割以上出勤したこと
また厚生労働省では、令和7年までに有給休暇の取得率70%を目指しています。有給休暇を付与するだけでなく、休暇を取得しやすい職場の環境づくりも必要です。
参考:「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更について|厚生労働省
<対策3>テレワークやフレックスタイム制の導入
テレワークやフレックスタイム制を導入すると、従業員がライフスタイルに合わせた働き方ができるため、離職率の低下が期待できます。テレワークガイドラインによると、フレックスタイム制は始業と終業の時刻を従業員が決めることができるため、テレワークになじみやすい制度とされています。
テレワークとフレックスタイム制を組み合わせて、従業員が働きやすい職場を目指すのもおすすめです。
参考:テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン|厚生労働省
賃金が低い
従業員の成果を適切に評価し、賃金に反映させることで離職率の低下が期待できます。評価制度の見直しや賃上げの他にも、福利厚生の充実によってエンゲージメントの向上が期待できます。
<対策1>ベースアップ
ベースアップとは社員の基本給を一律で底上げすることです。従業員全体の賃金水準を引き上げるため、効果が広範囲に及びます。ただし経営が悪化した際に引き下げることが難しいため、慎重に判断することが大切です。
政府がベースアップを支援する制度として、賃上げ促進制度があります。大企業や中堅企業は全雇用者の給与等支給額の増加分の最大35%の税額控除が可能です。また中小企業は最大45%の税額控除ができます。
参考:賃上げに取り組む経営者の皆様へ|経済産業省
<対策2>福利厚生の充実
家族手当の支給や、フィットネスジムや託児施設の利用、社員旅行など、法定外の福利厚生を手厚くすることで、仕事におけるモチベーションだけでなく、プライベートの時間の充実にも繋がります。ワークライフバランスが改善され、離職率を下げる効果が期待できます。費用負担を抑えたい場合には、福利厚生代行サービスの利用がおすすめです。
教育制度が整っていない
教育制度が整っていないと、従業員がキャリアについて不安を覚えるため、離職率が上がる可能性があります。研修制度を導入したり、面談を実施したりして教育制度を整えましょう。
<対策1>研修制度の導入
階層別に必要な能力を身に着けられるスキルアップ研修や、今後の目標や行動計画を明確化させるキャリアデザイン研修など、従業員に必要な研修制度を整えましょう。
講義タイプの研修以外にも、ワークショップタイプの研修を取り入れることで、従業員同士のコミュニケーションが進み、価値観の変化やエンゲージメントの向上などが期待できます。
また新入社員に教育担当者を付ける場合は、教育担当者と現場の上司とで教える内容を統一しましょう。教育担当者と現場で教えることが異なると、新入社員が混乱して教育がうまくいかない可能性があります。
<対策2>面談の実施
面談を実施してキャリアプランについて話し合うと、従業員がキャリアをイメージできるようになるため、モチベーションの向上につながります。
キャリアプランについて話し合う場合は、上司が従業員から興味や価値観、考え方を聞き出す姿勢で臨むことが大切です。キャリアプランが固まったら、積極的に従業員のキャリアアップをサポートすると、従業員が企業で働くことに魅力を感じ、離職率の低下に繋がるでしょう。
従業員同士の仲が悪い
従業員同士の人間関係が悪いと、職場に対してストレスを抱えるため離職率が高まります。社内コミュニケーションツールを導入したり、管理職のマネジメントスキルの向上を図ったりして対策しましょう。
<対策1>社内コミュニケーションツールの導入
社内コミュニケーションツールを導入する場合は、ビジネスチャットや社内報ツールを検討するとよいでしょう。ビジネスチャットではメールのような形式的な挨拶を省略するケースが多いため、従業員同士が気軽にコミュニケーションを取りやすくなります。
またWeb上で使える社内報ツールは、社内報に対してリアクションやコメントを残せます。社内報を通してコミュニケーションを取れるため、一般的な紙媒体の社内報と比較して従業員同士の関係性を良好に保ちやすいと考えられます。
<対策2>管理職のマネジメントスキルの向上
管理職のマネジメントスキルのなかでも重要なスキルの1つとしてコミュニケーション能力が挙げられます。自組織のチームを円滑に運営させるだけでなく、他部門との連携をとったり、経営陣と部下の仲介役として経営方針やビジョンを正しく部下に伝えたりする必要があります。
管理職のコミュニケーション能力を向上させることで、従業員同士の信頼関係の構築につながるでしょう。
また、人間関係の悪化はメンタルヘルス不調の原因にもつながります。メンタルヘルス対策として管理監督者に求められる「ラインによるケア」の重要性を理解することも大切です。
普段から部下の行動や発言に関心を持ち、勤務態度や業務効率など「いつもと違う」様子の部下に気づき、声かけをしたり産業医に相談をさせたりすることで、部下の健康状態をケアします。
参考:e-ラーニングで学ぶ 15分でわかるラインによるケア|こころの耳
健康経営に取り組んでいない
「健康経営」とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。安心して長く働いてもらうためには、会社が従業員の健康状態を把握し、働きやすい環境を整えることが大切です。
<対策1>会社の課題にマッチした産業医を選任する
会社の課題にマッチした産業医を選任するためにも、まずは健康経営に関する自社の課題を洗い出すことが大切です。ストレスなどメンタルヘルス不調による休職者が多い会社であれば、メンタルヘルスに詳しい産業医を選任したり、女性が多い会社であれば女性特有の健康課題やキャリアについて詳しい産業医を選任したりするのが良いでしょう。
産業医選任の詳しい手順については、次の記事で解説しています。
<対策2>ストレスチェックサービスの活用
健康経営を推進する上では、ストレスチェックを実施してメンタルヘルス不調を未然に防ぐことが大切です。現在は各種サービスを利用して、ストレスチェックを効率化する企業も見られます。
株式会社クレスコ様の場合、弊社提供の「Co-Labo」をメンタルヘルス不調の早期発見と早期対応に役立てています。個別の結果と集団分析レポートがわかりやすいことから導入していただきました。
セルフケアの重要性を啓発したり、ラインケアの一環として管理職向けに職場環境を改善するためのポイントを伝えたりして従業員の健康リテラシー向上にも有効活用できています。
〈企業事例:株式会社クレスコ様〉ストレスチェック「Co-Labo」を活用し、きめ細かなメンタルヘルス不調対策を実施
また、健康管理システム「HealthCore」を導入するのもおすすめです。紙の健診データをPDFで送るだけでデジタル化し、健診機関ごとに異なる様式や判定基準を健診標準フォーマット(※1)に自動で統一します。Co-Laboのストレスチェックデータなど、複数の健康データを掛け合わせて判断することで、健康リスクの早期発見に繋がります。
※1 健診関係10団体で構成する日本医学健康管理評価協議会が総意で推進している電子的標準様式
株式会社エムステージでは、2023年10月より健康管理システム「HealthCore」の提供を開始しました。資料ダウンロードは無料ですのでお気軽にお役立てください。
健康経営に取り組んだことで離職率が低下した企業事例
ここでは、三鷹倉庫様と丸井グループ様の事例を紹介します。
株式会社三鷹倉庫様
株式会社三鷹倉庫様は、産業保健活動を強化しながら、出産後や子育て中の女性スタッフが働きやすい職場づくりを目指すことで離職率を低く抑えることに成功しています。
産業保健活動を強化する中で特に力を入れた取組が、健康診断とストレスチェックです。これらの取組は産業保健活動の土台になると考えていることから、健康診断の受診率とストレスチェックの受検率100%を目指して、対象者全員に受診・受検を義務化しました。
また産業医の選任にも力を入れられており、弊社エムステージの産業医選任サービスを活用していただき、感染症やメンタルヘルス不調へのサポート体制を整えました。
〈企業事例:三鷹倉庫様〉フレキシブルな働き方と福利厚生・産業保健体制の充実化で、従業員の健康をサポート
株式会社丸井グループ様
株式会社丸井グループ様は、ウェルネス経営に取り組まれて離職率の抑制に成功しました。企業文化の変革と社会のしあわせが目的のウェルネス経営は、従業員の健康を目指す健康経営も目的達成のために重要なひとつです。
健康経営にかかる費用や時間をコストとして捉えるのではなく、従業員の疾病予防や職場の活性化、企業文化の醸成など企業にとって大きな恩恵を受けられる投資として捉え、積極的に健康経営に取り組んでいます。
その結果、残業時間を削減することで年間の残業代を25.9億円削減でき、離職率も6.8%から2.3%へと大幅に抑制できました。
離職率を下げるには健康経営への取組が重要
離職率を下げるには健康経営に取り組んで、メンタルヘルス不調や各種疾患に罹患する従業員を減らすことが大切です。
今回は健康経営への主な取組として、産業医の選任やストレスチェックサービスの活用について紹介しました。実際に健康経営に取り組んで離職率を低下させた事例もお伝えしましたので、ぜひ参考にしてください。
健康経営に関する基本情報を確認したい場合は、弊社のお役立ち資料をご利用ください。