企業のメンタルヘルスケアの取り組み事例を紹介!基本やメリットも解説
生産人口減少や高齢化に伴い、人手不足や採用難などの課題を抱える企業が増えています。そこで、従業員の確保や生産性の向上を図る手段の1つとして、健康経営に力を入れる企業が目立つようになりました。
従業員が健康で働き続け、生産性を維持・向上できる環境を作るためには、メンタルヘルスケアに取り組んで健康経営を推進することが大切です。
本記事では、メンタルヘルスケアに取り組むメリットや方法について、データや事例を交えて詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.企業が実施するメンタルヘルスケアの基本
- 1.1.3つの目的による分類
- 1.2.4つのケア
- 2.企業がメンタルヘルスケアに取り組むメリット
- 2.1.生産性の向上につながる
- 2.2.離職率の低下につながる
- 2.3.ハラスメントを予防できる
- 3.メンタルヘルスケアに関する企業の取り組み事例
- 3.1.ストレスチェックの活用
- 3.2.産業医との連携やEAPの導入
- 4.カスタマーハラスメントへの対策
- 5.企業がメンタルヘルスケアに取り組む場合の具体的な内容
- 5.1.職場コミュニケーションの活性化
- 5.2.職業性ストレス簡易調査票の活用
- 5.3.ミーティングの活用
- 5.4.エリア保健師を設置して健康管理体制を整備
- 5.5.メンタルヘルス関連の研修会を実施
- 5.6.全員面談の実施
- 6.企業事例を参考にメンタルヘルスケアに取り組もう
企業が実施するメンタルヘルスケアの基本
企業が実施するメンタルヘルスケアには、従業員が健康に働けるようにサポートすることや、サポート活動を円滑に進めるための仕組み作りに取り組むことがあります。
3つの目的と4つのケアからなるので、それぞれについて解説します。
3つの目的による分類
メンタルヘルスケアの予防は、3段階に分かれています。各段階において、予防の方針が次のように示されています。
- 一次予防:メンタルヘルス不調の未然防止
二次予防:メンタルヘルス不調の早期発見と適切な対応
三次予防:職場復帰支援
3段階の予防を前項で示した4つのケアと対応させ、継続的・計画的に実施することが重要です。各予防に対応するケアと施策内容を示すと次の通りです。
予防 |
対応するケア |
施策内容 |
一次予防 |
セルフケア・ラインによるケア |
労働者のストレスマネジメントの向上 |
二次予防 |
事業場内産業保健スタッフ等によるケア |
労働者のストレスマネジメントの向上 |
三次予防 |
事業場外資源によるケア |
職場復帰支援プログラムの策定 |
4つのケア
メンタルヘルスケアは、次に示す4つのケアで構成されます。
セルフケア:労働者自身による取組
ラインによるケア:管理監督者による取組
事業場内産業保健スタッフ等によるケア:産業医や衛生管理者、保健師等による取組
事業場外資源によるケア:事業場外の機関・専門家による取組
以上は企業で行われるメンタルヘルスケアの基本とされており、それぞれには担当者が割り当てられます。各ケアの担当者が協力して、事業所の産業保健を推進します。
次の記事ではメンタルヘルスケアの基本を解説していますので、参考にしてください。
メンタル対策のキホン「4つのケア」とは?教材の紹介と活動のポイント
企業がメンタルヘルスケアに取り組むメリット
企業が従業員のメンタルヘルスケアに取り組むと、企業成長に繋がるさまざまなメリットが期待できます。企業がメンタルヘルスケアに取り組むメリットは、次の通りです。
生産性の向上につながる
離職率の低下につながる
ハラスメントを予防できる
それぞれについて詳しく解説します。
生産性の向上につながる
メンタルヘルスケアを実施すると、従業員の心身を安定させ、判断力や思考力を高いレベルに保つ効果が期待できます。仕事のパフォーマンス向上やモチベーションにも繋がるため、企業の生産性向上に寄与するでしょう。
NTTデータの調査報告書によると、従業員のパフォーマンス向上を目的にメンタルヘルスケアを行う企業は半数以上に上ります。
引用:令和3年度ヘルスケアサービス社会実装事業 調査報告書|株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所 ライフ・バリュー・クリエイションユニット
離職率の低下につながる
メンタルヘルスケアを実施して健康経営に取り組むと、人材を確保しやすくなります。健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に健康への取り組みを実践することです。
健康経営では、身体的な健康と精神的な健康の両方を管理する必要があるため、メンタルヘルスケアも重要な取り組みの1つです。
経済産業省の資料によると、健康経営に取り組む企業は他の企業に比べて離職率が低いことがわかりました。
健康経営度調査に回答した企業の離職率が全国平均を大きく下回ることから、健康経営を推進すると人材確保に繋がると考えられます。
ハラスメントを予防できる
メンタルヘルスケアを実践するためには、ハラスメントへの対策は欠かせない施策の1つです。そのためメンタルヘルスケアに取り組むこと自体が、必然的にハラスメントの予防にも繋がります。
厚生労働省の秋田労働局がメンタル関連の診療を行っている52の医療機関を介して、メンタルヘルス不調を抱える労働者に向けてアンケート調査を実施しました。
その結果によると、メンタルヘルス不調になった要因として、パワハラやセクハラを上げたメンタルヘルス不調者が合計で35%に上ることがわかりました。
引用:メンタル不調等に係る労働環境アンケート調査結果の概要について|厚生労働省 秋田労働局
以上のように、3人に1人以上がハラスメントによるメンタルヘルス不調に陥っているとする報告もあります。メンタルヘルスケアを実践して、ハラスメントの予防に努めることが大切です。
メンタルヘルスケアに関する企業の取り組み事例
メンタルヘルスケアに関する企業の取り組み事例について、次の3つを紹介します。
- ストレスチェックの活用
産業医との連携やEAPの導入
カスタマーハラスメントへの対策
弊社クライアントの事例をもとに解説します。
ストレスチェックの活用
「株式会社クレスコ」様は、AIやクラウドなどの先端技術を含むIT開発技術に取り組んでいます。
同社では、業務に慣れていない若手従業員を中心に社員のメンタルヘルスケアを実施しているようです。
具体的な施策として、ストレスチェックの充実化に注力されています。ストレスチェックを実施する際は、「Co-Labo」を利用して社員のそれぞれが自分のストレス状態を把握して、セルフケアを実践しやすい環境を整えています。
Co-Laboは、4万人以上のデータをもとに開発されたストレスチェックツールで、ストレスの状態や原因の測定ができ、人材開発や健康経営に役立つツールです。
ストレスチェック『Co-Labo』の詳細については、下記の資料をご覧ください。
産業医との連携やEAPの導入
「株式会社飯田組」様は、産業医との連携やEAPを通して、メンタルヘルス不調者のフォローに取り組んでいます。
同社は土地探しから企画提案、設計施工、アフターメンテナンスにいたるまで、建設に伴うサービスを一貫して提供する総合建設会社です。
社員の健康維持のための衛生委員会の活動やメンタル不調者への面談を中心に、産業医との連携を図るそうです。
さらにメンタルヘルス不調者が匿名で保健師や看護師に相談できるEAPの利用を、産業医と連携しながら開始しました。
EAPとは従業員支援プログラムとも呼ばれ、従業員のメンタルヘルスケアの一環として心身の不調をケアするプログラムです。
EAPの詳細については、次の記事で解説しています。
カスタマーハラスメントへの対策
人材サービスを全国展開する株式会社GREEN RIBBONは、従業員の平均年齢が27歳と若年層が多い点が特徴です。
同社では小売業の現場で働く人材を育成していることもあり、カスタマーハラスメント(顧客からのハラスメント)への対策が課題でした。
カスタマーハラスメントで起こるメンタルヘルス不調を予防するためにも、セルフケアとラインケアを学ぶための研修を開催しています。
また産業医選任にはこだわりを持って取り組んでおり、「小売業の現場での産業医経験を持つ医師」を探していました。
弊社に産業医選任を依頼して頂いたところ、希望にマッチする医師を見つけていただけました。それをきっかけに健康管理に関する専門的なアドバイスや産業医面談が充実し、産業保健の推進に役立っているようです。
産業医選任に関する詳細な資料は下記よりご覧ください。
企業がメンタルヘルスケアに取り組む場合の具体的な内容
企業がメンタルヘルスケアに取り組む場合の具体的な内容について、次の6項目を紹介します。
- 職場コミュニケーションの活性化
- 職業性ストレス簡易調査票の活用
- ミーティングの活用
- エリア保健師を設置して健康管理体制を整備
- メンタルヘルス関連の研修会を実施
- 全員面談の実施
これからメンタルヘルスケアに取り組む際のヒントとして、参考にしてください。
職場コミュニケーションの活性化
在宅勤務やサテライトオフィスで勤務する社員を孤立させないように工夫すると、職場コミュニケーションの活性化に役立ちます。
具体的な取り組みとして、業務時間中の在宅勤務者がオフィスのモニターに移るようにすることが考えられます。そうすることで、在宅勤務者がオフィスで仕事をしているように感じて、孤独感を紛らわす効果が期待できます。同僚とも常に会話できるようにすることで、在宅ワークでも社員間のコミュニケーションを維持できます。
参考:事業場におけるメンタルヘルス対策の取組事例集|厚生労働省
職業性ストレス簡易調査票の活用
職業性ストレス簡易調査票を利用してストレスチェックを毎年実施すると、メンタルヘルスケアに役立ちます。
職業性ストレス簡易調査票は職場で簡単に使用できるストレス調査票で、社員自身が記入してストレスチェックを行います。
ストレスチェックで集計した結果は、職場全体の傾向として安全講習会の際に職員に共有するとよいでしょう。事業所で実施しているメンタルヘルスケアの実効性を測る指標の1つとしても活用できます。
参考:職場のメンタルヘルス対策の取組事例|こころの耳(厚生労働省)
ミーティングの活用
ミーティングを充実させて、メンタルヘルスケアに取り組むのもおすすめです。例えば、誕生日ミーティングを開いて、誕生日を迎えた社員が担当役員や総務部長と30分ほどコーヒーを飲みながら話す機会を設けている企業もあります。
誕生日にポジティブな言葉をかけてもらえることによって社員の気持ちが軽くなり、仕事に関する悩みや希望についても話してもらえるようです。
他にも1on1ミーティングを開き、上司と部下のコミュニケーションの機会を増やすと人間関係が円滑になり、メンタルヘルスケアに繋がる可能性があります。
参考:職場のメンタルヘルス対策の取組事例|こころの耳(厚生労働省)
エリア保健師を設置して健康管理体制を整備
従業員数1万人以上を抱える大企業になると、全国の拠点で働く社員の健康管理体制に課題を抱えるケースが見られます。その課題を解決する手段の1つとして、エリア保健師を設置する企業があります。
エリア保健師は九州エリアや関西エリアなどの地方ごとに1~2名ずつ配置され、産業医と連携しながら各エリアの情報を本社所属の保健師に共有します。
エリア保健師を設置するメリットの1つは、転勤する社員に対するフォローが途切れることなく、継続してメンタルヘルスケアを実施できることです。全国の社員に対して、公平な産業保健サービスを提供できる点も魅力です。
参考:職場のメンタルヘルス対策の取組事例|こころの耳(厚生労働省)
メンタルヘルス関連の研修会を実施
特定の時期にメンタルヘルス不調者が出やすい傾向が見られたら、その時期にセルフケアやラインケアに関する研修会を開くこともおすすめです。
またメンタルヘルスケアの窓口となる心理カウンセラーに研修を担当してもらうことで、カウンセラーと社員の繋がりを作れます。それが、メンタルヘルスに関する悩みを相談しやすい環境作りにも繋がります。
参考:事業場におけるメンタルヘルス対策の取組事例集|厚生労働省
全員面談の実施
メンタルヘルス対策の一環として、社員全員への面談を実施する方法も考えられます。全員に面談を実施することで、事業所内のさまざまな問題点が浮き彫りになり、有効な施策を講じられるという効果が期待できます。
全員面談を実施した企業の中には、経営者からのトップダウンによるスピード感を持った実施が実現した事例も報告されています。経営者が社内のメンタルヘルスに対して当事者意識を持つと、大幅にメンタルヘルスケアの改革が進むケースもあるようです。
企業事例を参考にメンタルヘルスケアに取り組もう
メンタルヘルスケアに取り組むためには、まずは基本を抑えることが大切です。3つの目的と4つのケアに分かれるので、それぞれについて理解を深めましょう。
またメンタルヘルスケアに取り組むと、生産性の向上や離職率の低下、ハラスメントの予防を図れます。企業ごとにさまざまな方法でメンタルヘルスケアを実施しているので、ぜひ実践してみてください。
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