〈2023年度開始〉改訂された「騒音障害防止ガイドライン」の要点を紹介

「騒音障害防止のためのガイドライン」がおよそ30年ぶりに改訂され、2023年4月よりスタートしました。

改訂されたガイドラインでは、騒音障害防止対策の管理者を選任することや、保護具を選定する際のルールが示されています。

本記事では、改訂されたガイドラインの概要と、実施の要点をまとめています。

目次[非表示]

  1. 1.2023年4月「騒音障害防止のためのガイドライン」改訂
    1. 1.1.30年ぶりに「騒音障害防止ガイドライン」が改訂
    2. 1.2.騒音障害防止ガイドラインの該当する作業場
    3. 1.3.騒音障害防止ガイドラインの要点
      1. 1.3.1.▼騒音障害防止対策に関する管理者選任を追加
      2. 1.3.2.▼騒音レベルの新たな測定方法を追加
      3. 1.3.3.▼聴覚保護具の選定基準を明確化
      4. 1.3.4.▼騒音健康診断における検査項目の見直し
      5. 1.3.5.▼騒音健康診断における検査項目の見直し


2023年4月「騒音障害防止のためのガイドライン」改訂

30年ぶりに「騒音障害防止ガイドライン」が改訂

職場における騒音は、人体にとって有害な作業環境のひとつです。騒音に関する健康障害を防止するため、平成4年には「騒音障害防止のためのガイドライン」が策定され、国をあげて騒音防止に努めてきました。

しかしながら、業種によっては取組みが進んでいないと考えられる作業場も多く、また、ガイドライン策定後にも技術の発展や知見の蓄積があったことから、同ガイドラインは見直しが行われ、2023年度より改訂版が策定されています。

また、職域においては改定されたガイドラインの周知を図るだけでなく、その内容に則って保護具の活用や作業環境の整備にあたる必要があります。

適切な対策が出来ていないことは、騒音性難聴をはじめとした業務上疾病や労働災害の発生につながるおそれがあるため、十分な注意が求められています。


騒音障害防止ガイドラインの該当する作業場

前述した騒音性難聴のように、業務中に大きな音に曝されつづけることは、正常な耳の機能が損なわれる恐れがあります。

以下の別表1あるいは2に当てはまる作業場では、ガイドラインに則った活動が必要とされています。

また、以下の別表に該当しない作業場であっても、騒音レベルが高いと考えられる業務を行う場合には、同ガイドラインに基づいた騒音障害防止の対策を講じることが推奨されています。

(別表第1)

(1) 鋲打ち機、はつり機、鋳物の型込機等圧縮空気により駆動される機械又は器具を取り扱う業務を行う屋内作業場

(2) ロール機、圧延機等による金属の圧延、伸線、ひずみ取り又は板曲げの業務(液体プレスによるひずみ取り及び板曲げ並びにダイスによる線引きの業務を除く。)を行う屋内作業場

(3) 動力により駆動されるハンマーを用いる金属の鍜造又は成型の業務を行う屋内作業場

(4) タンブラーによる金属製品の研磨又は砂落としの業務を行う屋内作業場

(5) 動力によりチェーン等を用いてドラム缶を洗浄する業務を行う屋内作業場

(6) ドラムバーカーにより、木材を削皮する業務を行う屋内作業場

(7) チッパーによりチップする業務を行う屋内作業場

(8) 多筒抄紙機により紙をすく業務を行う屋内作業場


(別表第2)

(1) インパクトレンチ、ナットランナー、電動ドライバー等を用い、ボルト、ナット等の締め付け、取り外しの業務を行う作業場

(2) ショットブラストにより金属の研磨の業務を行う作業場

(3) 携帯用研削盤、ベルトグラインダー、チッピングハンマー等を用いて金属の表面の研削又は研磨の業務を行う作業場

(4) 動力プレス(油圧プレス及びプレスブレーキを除く。)により、鋼板の曲げ、絞り、せん断等の業務を行う作業場

(5) シャーにより、鋼板を連続的に切断する業務を行う作業場(6)

動力により鋼線を切断し、くぎ、ボルト等の連続的な製造の業務を行う作業場

(7) 金属を溶融し、鋳鉄製品、合金製品等の成型の業務を行う作業場

8) 高圧酸素ガスにより、鋼材の溶断の業務を行う作業場
(9) 鋼材、金属製品等のロール搬送等の業務を行う作業

(10) 乾燥したガラス原料を振動フィーダーで搬送する業務を行う作業場

(11) 鋼管をスキッド上で検査する業務を行う作業場

(12) 動力巻取機により、鋼板又は線材を巻き取る業務を行う作業場

(13) ハンマーを用いて金属の打撃又は成型の業務を行う作業場

(14) 圧縮空気を用いて溶融金属を吹き付ける業務を行う作業場

(15) ガスバーナーにより金属表面のキズを取る業務を行う作業場

(16) 丸のこ盤を用いて金属を切断する業務を行う作業場

(17) 内燃機関の製造工場又は修理工場で、内燃機関の試運転の業務を行う作業場

(18) 動力により駆動する回転砥石を用いて、のこ歯を目立てする業務を行う作業場

(19) 衝撃式造形機を用いて砂型を造形する業務を行う作業場

(20) バイブレーター又はランマーにより締め固めの業務を行う作業場

(21) 振動式型ばらし機を用いて砂型より鋳物を取り出す業務を行う作業場

(22) 動力によりガスケットをはく離する業務を行う作業場

(23) 瓶、ブリキ缶等の製造、充てん、冷却、ラベル表示、洗浄等の業務を行う作業場

(24) 射出成型機を用いてプラスチックの押し出し又は切断の業務を行う作業場

(25) プラスチック原料等を動力により混合する業務を行う作業場

(26) みそ製造工程において動力機械により大豆の選別の業務を行う作業場

(27) ロール機を用いてゴムを練る業務を行う作業場

(28) ゴムホースを製造する工程において、ホース内の内糸を編上機により編み上げる業務を行う作業場

(29) 織機を用いてガラス繊維等原糸を織布する業務を行う作業場

(30) ダブルツインスター等高速回転の機械を用いて、ねん糸又は加工糸の製造の業務を行う作業場

(31) カップ成型機により、紙カップを成型する業務を行う作業場

(32) モノタイプ、キャスター等を用いて、活字の鋳造の業務を行う作業場

(33) コルゲータマシンによりダンボール製造の業務を行う作業場

(34) 動力により、原紙、ダンボール紙等の連続的な折り曲げ又は切断の業務を行う作業場

(35) 高速輪転機により印刷の業務を行う作業場

(36) 高圧水により鋼管の検査の業務を行う作業場

(37) 高圧リムーバを用いてICパッケージのバリ取りの業務を行う作業場

(38) 圧縮空気を吹き付けることにより、物の選別、取り出し、はく離、乾燥等の業務を行う作業場

(39) 乾燥設備を使用する業務を行う作業場

(40) 電気炉、ボイラー又はエアコンプレッサーの運転業務を行う作業場

(41) ディーゼルエンジンにより発電の業務を行う作業場

(42) 多数の機械を集中して使用することにより製造、加工又は搬送の業務を行う作業場

(43) 岩石又は鉱物を動力により破砕し、又は粉砕する業務を行う作業場

(44) 振動式スクリーンを用いて、土石をふるい分ける業務を行う作業場

(45) 裁断機により石材を裁断する業務を行う作業場

(46) 車両系建設機械を用いて掘削又は積込みの業務を行う坑内の作業場

(47) バイブレーター、さく岩機、ブレーカ等手持動力工具を取り扱う業務を行う作業場

(48) コンクリートカッタを用いて道路舗装のアスファルト等を切断する業務を行う作業場

(49) チェーンソー又は刈払機を用いて立木の伐採、草木の刈払い等の業務を行う作業場

(50) 丸のこ盤、帯のこ盤等木材加工用機械を用いて木材を切断する業務を行う作業場

(51) 水圧バーカー又はヘッドバーカーにより、木材を削皮する業務を行う作業場

(52) 空港の駐機場所において、航空機への指示誘導、給油、荷物の積込み等の業務を行う作業場


出典:厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドライン」


騒音障害防止ガイドラインの要点

2023年度に改訂された騒音障害防止ガイドラインの要点は次のようになっています。

  • 騒音障害防止対策に関する管理者選任を追加
  • 騒音レベルの新たな測定方法を追加
  • 聴覚保護具の選定基準を明確化
  • 騒音健康診断における検査項目の見直し など

以下にて、それぞれ一つずつ見ていきましょう。


▼騒音障害防止対策に関する管理者選任を追加

事業者は、安全衛生推進者や衛生管理者等から、騒音障害防止対策の管理者を選任することが求められています。そして、ガイドラインの事項について取り組ませることが定められています。

なお、建設工事現場等において、元方事業者は、関係請負人が本ガイドラインで定める事項を適切に実施できるよう、指導および助言を行う必要があります。

騒音障害防止対策の管理者は、労働者に対して聴覚保護具の正しい使用方法を指導し、また適切に使用されているかを目視で確認します。


▼騒音レベルの新たな測定方法を追加

前述した別表1に掲げる作業場についてです。事業者は、騒音レベルが一定(85dB)以上の場合は、騒音源の低騒音化・遮蔽などの改善措置を実施すること。

そして、測定は6か月ごとに1回、定期的に行うことのほか、工程や作業方法の変更があった場合にはその都度、騒音レベルを測定します。なお、測定した結果を記録と3年間保存することが定められています。

また、別表2に掲げる作業場においても詳細なルールが定められているため、必ずガイドラインの原本も確認しておきましょう。


▼聴覚保護具の選定基準を明確化

続いて聴覚保護具についてですが、事業者が保護具を選ぶ際にも規格をクリアしたものを選ぶ必要があります。

具体的には、日本産業企画(JIS)T8161-1に規定する試験方法によって測定された遮音値が目安となり、必要かつ充分な遮音値のもの選定することが定められています。

注意点としては、必要以上に遮音値の大きい保護具を使ってしまうと、かえって周囲の音を聴くことや、必要な会話が出来なくなってしまうことが考えられます。

危険作業等においてはこういった点に気をつけましょう。


▼騒音健康診断における検査項目の見直し

出典:厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドライン」


▼騒音健康診断における検査項目の見直し

定期健康診断(騒音)における4000ヘルツの聴力検査の音圧については、これまでの40dBから25dBおよび30dBに変更となりました。

雇入れ時または配置替えといったタイミングや、定期健康診断(騒音)の二次検査での聴力検査に、6,000ヘルツの検査が追加されています。

なお、健康診断の結果の評価に基づいて症状が認められるような場合には、騒音作業に従事する時間の短縮や配置転換など、必要な措置を講じます。

そして、この健康診断の結果については5年間の保存義務があり、事業者の義務となっています。

騒音障害防止ガイドラインの要点について紹介しました。

平成4年の策定時から30年ほどが経過し、新たな取り組みが必要となる場面も出てきましたが、騒音性難聴をはじめとした労働災害や業務上疾病の正しい対策として、新たなガイドラインに則った活動が必要になります。

また、産業医による職場の騒音測定を通じ、改善点を見つけていくことも良い方法の一つと考えられます。



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