長時間労働のリスクと最近の動向~多様な働き方に対応する~

労働衛生コンサルタント
日本医師会認定産業医
中澤 祥子

働き方改革関連法が2019年4月から順次施行され、早3年が経ちました。

働き方改革という考え方が浸透してきていると感じています。こちらの法律で時間外労働の上限規制ができたため、以前に比べて総労働時間が減った企業も多いのではないかと思います。

今回は長時間労働のリスクや最近の動向について述べています。

目次[非表示]

  1. 1.長時間労働の悪
  2. 2.個人としての対応策
  3. 3.長時間労働の最近の動向と注意点



長時間労働の悪

ところで、なぜ、長時間労働が悪なのでしょうか?それは、長時間労働によって健康に悪影響があるだけでなく、会社全体にも影響を及ぼしうるからです。


長時間労働によってその個人には脳梗塞や心筋梗塞などの脳心臓疾患が発症したり、精神障害が発症したりするリスクがあります。

もともとある動脈硬化が、長時間労働などの労働負荷によって自然の経過を超えて脳心臓疾患を発症することがあり、業務に起因する病気として労災認定されます(文献1)

また精神障害は外部からのストレス(仕事によるストレスや私生活でのストレス)とそのストレスへの個人の対応力の強さとの関係で発症に至ると言われていますが、発病が仕事による強いストレスによるものと判断された場合労災認定されます(文献2)


これらの病気により、入院・治療が必要になったり、後遺症が残ったり、最悪の場合死亡したりなど個人の影響がある一方、会社としても人手不足になったり、ブラック企業の烙印を押されてブランドイメージの低下がおこるなど、多大なリスクがあります。


個人としての対応策

ただ「どうしてもここが踏ん張り時」という繁忙期や、締め切りに追われている状況もあると思います。その際にも、どうか睡眠時間は死守していただきたいです。

最低でも6時間と言われていますが、適正な睡眠時間は人によってだいぶ異なります。


また、長時間労働で産業医面談を行うこともあります。法令上は80時間以上でご本人の申し出がある際に産業医面談を行わなければなりませんが、会社によっては、規則を定めて一定以上の時間外労働時間において産業医面談を必須にしているところもあります。


産業医面談だけで根本的な労働時間抑制をすることは難しいものの、ご本人の体調を確認するために、また面談をきっかけに組織的な長時間労働削減対策を考えるために必要ではないかと筆者は考えています。


長時間労働の最近の動向と注意点

現在、パワーハラスメント対策が事業主の義務となっていますが、2020年5月に、心理的負荷による精神障害の労災認定基準が改定となり、パワーハラスメントが基準として追加されました。

一方、2021年9月に脳心臓疾患の労災認定基準が一部改正となっています。

以前は労働時間について、発症前1か月間に100時間または2-6か月平均で月80時間を超える時間外労働で、脳心臓疾患の発症との関連性が強いという基準でしたが、改正後は労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することとなっています(文献3)


つまり、上記労働時間の水準に至らなくてもそれに近い時間外労働があり、加えて休日のない連続勤務や、交代制勤務、深夜勤務など、労働時間以外の負荷要因を加味して総合的に判断されるということです。会社としてさらに厳密な労働時間管理を行う必要が出てきているといえるでしょう。


また、現在は多様な働き方があります。1つの企業で働くだけでなく、副業したり、Uber eatsなどのギグワーカーとして働く人もいたりするでしょう。またクラウドワーカーという、ネット上の仲介サービスを通して、業務を受注するサービスもあります。

そのため、企業としては安全配慮のためにも、雇用している従業員が違う勤務先で勤務しているかなどを可能であれば定期的に聞き取りをした方がいいと思います。現在、物価の上昇があるにも関わらず、賃金上昇が見込めないため、上記のような手軽な仕事が人気となっています。今後もこの動向に注意が必要です。


なお、2020年9月労働者災害補償保険法が改正されました。複数の事業場で勤務している場合(事業主が同一でない複数の事業場に同時に使用されている)で、時間外労働が複数事業場で合計して上記条件になり、脳心臓疾患を発症した場合複数労働業務災害として労災認定される可能性があります(文献4、5)


これらの情報をもとに、引き続き注意をしながら個人・組織の労働時間管理を行っていただけますと幸いです。


【参考文献】

1 脳・心臓疾患の労災認定 過労死等の労災補償Ⅰ

2 精神障害の労災認定

3 脳・心臓疾患の労災認定基準を改正しました

4 労災保険給付の概要

5 複数業務要因災害として考えられる例

文章出典株式会社イーウェル「健康コラム」より寄稿

中澤祥子

中澤祥子

労働衛生コンサルタント、日本医師会認定産業医、 社会医学系専攻医、産業衛生学会専攻医。

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