〈まとめ〉改正女性活躍推進法の「行動計画」と「情報公表」ポイントを紹介
わが国では急速な人口減少が進み、労働者の数も比例して減少しています。
そのような中では、ダイバーシティの推進として、女性の活躍が欠かせません。
改正された「女性活躍推進法」について、人事担当者が知って起きたいポイントをまとめました。
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改正女性活躍推進法:義務内容と3つのポイント
人事がおさえておきたい「改正 女性活躍推進法」ポイント3つ
結婚・妊娠・出産といったライフイベントが発生しても、女性が働き続けられる環境を目指した職場づくりに取り組むことが企業の義務になっています。
2019年5月、女性活躍推進法等の法律が一部改正され、同年6月より施行されました。
改正された女性活躍推進法で、人事が知っておきたいポイントは、大きく分けて次の3つです。確認しておきましょう。
ポイント1:常時雇用する労働者の人数によって義務内容のレベルが異なる
ポイント2:取組みついては「行動計画」と「数値目標の設定」が重要になる
ポイント3:女性活躍に関する「情報公表」を行う必要がある
女性活躍推進法が適用される企業の雇用人数と義務内容
改正された女性活躍推進法は、企業が雇用している人数によって義務の内容が異なっています。
そのラインは常時雇用する労働者の数が「101人以上300人以下」と「301人以上」で分かれていますが、まずは義務となる4つの取組みについて見ておきましょう。
●女性活躍推進法で義務となる4つの取組み内容
(1)自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析
(2)1つ以上の数値目標を定めた行動計画の策定、社内周知、公表
(3)行動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出
(4)女性の活躍に関する1項目以上の情報公表
出典:厚生労働省「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」
そして、雇用する労働者が「101人以上300人以下」の場合は、この4つの取り組みを行うことが2022年4月1日より義務となります。
なお、労働者が100人以下の場合には、上記(1)から(4)の取組みが努力義務となっています。
労働者301人以上の企業で義務となる「行動計画の策定」「数値目標」の内容
「行動計画の策定」では“2項目”の数値目標を設定する必要がある
労働者が301人以上いる企業の場合、取り組む義務の内容が細かく設定されています。
中でも、先ほど記載した「(2)1つ以上の数値目標を定めた行動計画の策定、社内周知、公表」では、単に行動計画を策定するだけでなく、数値目標も設定する必要があります。
具体的には、次の①・②の区分の中からそれぞれ1項目ずつ(計2項目)選択、数値目標を設定しつつ行動計画を策定します。
① 女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供
以下の項目の中から1つ選択し、数値目標の設定と行動計画を策定します。
■採用
…採用した労働者に占める女性労働者の割合 など
■配置・育成・教育訓練
…男女別の配置、教育の状況 など
■評価・登用
…管理職に占める女性労働者の割合 など
■職場風土・性別役割分担意識
…セクシュアルハラスメント等に関する各種相談窓口への相談状況 など
■再チャレンジ(多様なキャリアコース)
…男女別の職種又は雇用形態の転換・中途採用の実績 など
■取組の結果を図るための指標
…男女の賃金の差異
出典:厚生労働省「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」
〇数値目標の設定例
上記の中から項目を選択し、数値目標を設定します。
数値の目標については、例えば「新規・中途の採用者に占める割合を〇%以上とする」「すべての部署で女性の割合を〇%以上にする」といった形で定めます。
②職業生活と家庭生活の両立に資する雇用環境の整備
■ 継続就業・働き方改革
…男女の平均継続勤務年数の差異
…10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男⼥別の継続雇用割合
…男女別の育児休業取得率及び平均取得期間
…男女別の職業生活と家庭生活との両立を支援するための制度(育児休業を除く)の利用実績
…男女別のフレックスタイム制、在宅勤務、テレワーク等の柔軟な働き方に資する制度の利用実績
…労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況
…労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況
…有給休暇取得率
出典:厚生労働省「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」
〇数値目標の設定例
こちらも同じく、項目の選択と目標数値の設定が必要です。
例として「男女の勤続年数の差を〇年以下にする」「フレックスタイム制の利用率を上げ、〇%以上にする」といった形で設定します。
改正女性活躍推進法における義務「情報公表」とは
女性活躍推進に関する「情報公表」で知っておきたい“2項目”
企業における女性活躍の情報を公表することで、優秀な人材の確保につながるだけでなく、取り組みを進めることは離職の防止にもつながります。
労働者が301人以上いる企業では先ほどの「行動計画・数値目標の設定」と同様、次の①・②の区分の中から2つの項目を選択した上で、女性活躍に関する情報の公表が義務化されています。
① 女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供
…採用した労働者に占める女性労働者の割合
…男女別の採用における競争倍率
…労働者に占める女性労働者の割合
…係長級にある者に占める女性労働者の割合
…管理職に占める女性労働者の割合
…役員に占める女性の割合
…男女別の職種又は雇用形態の転換実績
…男女別の再雇用又は中途採用の実績
出典:厚生労働省「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」
〇〈情報公表の例〉職業生活に関する機会の提供
例えば「採用者の占める男性・女性労働者の割合」を選択した場合には、次のような形式で情報を公表します。
〈職種〉〈男性〉〈女性〉
・営業職:56% 44%
・技術職:49% 51%
・事務職:25% 75%
・パート:31% 69%
② 職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備
…男女の平均継続勤務年数の差異
…10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男⼥別の継続雇用割合
…男女別の育児休業取得率
…労働者の一月当たりの平均残業時間
…有給休暇取得率
出典:厚生労働省「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」
〇〈情報公表の例〉「職業生活と家庭生活の両立」に関する雇用環境の整備
例えば、以下のようにして労働者の1か月あたりの平均残業時間を公表します。
各種の情報には、雇用管理区分ごとに公表する必要があります。
○営業職 :20.8 時間
○技術職 :19.2 時間
○事務職 :10.5 時間
○派遣社員:0.25 時間
※注意点:「行動計画の策定・数値目標の設定」そして「情報公表」については、それぞれ雇用の管理区分(正社員・契約社員など)によって公表を行う必要がありますので、事前に確認しましょう。
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改正された女性活躍推進法、主に人事担当者が知っておきたいポイントについて紹介しました。
働く女性を支援するためには、産業保健の機能を充実化させることも大切ですので、あわせて推進していきましょう。