〈インタビュー〉現役保健師に、企業での仕事内容や「やりがい」をきいてみた
取材:サンポナビ編集部
保健師が企業でできること。健康相談・健診結果関連業務・保健指導etc
――はじめに、プロフィールをお聞かせください。
株式会社エムステージに所属している産業保健師の吉野祐希と申します。
産業保健師として入社後、現在は業務委託という形で企業に訪問し、保健師業務をしております。
――企業にはどの程度の頻度、訪問しているのでしょうか。
私の場合では、週4日・1日6時間程度、企業に訪問しています。
また、エムステージに在籍している他の保健師は「週に1日」「月に2日」など、訪問先企業のオーダーに合わせた形で訪問し、保健師としての活動をしています。
――訪問先の企業では、どのような活動をされているのでしょうか。
保健師の基本的な活動は、職場巡視を通じて、社員が働きやすい職場を考えたり、健診結果のチェックをしたりすることが中心になります。
また、社員の方々に衛生委員会で健康に関する講話を行うことや、新入社員に対して研修をすることもありますね。
衛生講話のテーマについて企業の担当者の方と調整を行うのも、保健師の仕事です。
そしてもう一つ大切なのが、従業員の方からの「健康に関する相談窓口」としての活動があります。
また、最近では、新型コロナウイルスの影響もあり、部分的にリモートで保健師活動を行うこともあるのですが、企業からの要望に合わせて、柔軟に対応しています。
――健康に関する相談窓口とは、どのような活動でしょうか。
訪問先企業の従業員の方々から、心身に関する健康相談を受け付ける窓口としての活動です。
従業員の方たちには、私の駐在する健康管理室の連絡先が公開されていますので、もし何か健康に関して不安なことがあれば、どんなささいな事でも受け付けています。
これは、心身の健康の変化を「黄色信号」のうちに気付くためにとても大切な活動だと考えています。
もし仮に、そういった相談があった場合には、専門職の立場から的確に産業医へ情報共有ができます。
産業医の先生は訪問される時間も限られていますので、われわれ保健師が「身近な専門職」として、日頃から職場の状況の把握に努めています。
\保健師が産業医と企業をつなぐ!/《企業向け》産業保健師の紹介/選任サービス
産業医を最大限に活用するためにも欠かせない、産業保健師の役割
――一般的に、企業には産業医がいますよね。産業保健師との役割の違いとはどんなものでしょうか。
基本的な役割については、一般的な病院と同じ構造です。
医師がいて、看護師がいて、患者さんがいますよね。
これを「産業医」「保健師」「従業員」という立場に置き換えると、その役割が分かりやすいと思います。
看護師の方が、接する機会が多いですよね?
また、病院での役割と同じように、産業医(医師)との連携が欠かせません。
先ほども申しましたように、産業保健師は「身近な医療の専門職」と言い換えることもできます。
日頃、私たち保健師が収集した情報を、適切に産業医と共有し、課題の解決に向けた活動をしています。
このようにすることで、産業医の活動を最大限に有効活用することも目的のひとつなのです。
――先ほどの話にすこし戻りますが、衛生講話のテーマはどのようにして決めているのでしょうか。
訪問先企業の担当者の方と打ち合わせをして、企業のニーズをくみ上げてテーマを選出するようにしています。
それだけでなく、現場をよく知っているエムステージのコーディネーター(※)から情報提供を受けることもあります。
例えば「今、人事の分野ではこんなことを知りたがっているよ」ですとか「これからの季節だとこんなテーマが喜ばれるよ」といったところにもアンテナを張っています。
また、衛生講話で使用するスライド資料も私たち保健師が制作しています。
※エムステージの「産業保健サポートサービス」には、企業と産業医を繋ぐ「コーディネーター」がおり、スケジュール管理や各種調整業務を行っています。
――衛生委員会の資料を見させていただきましたけど、すごい完成度ですね。
もともと、高校で美術を専門として学んでいましたので、その時の経験が活かせているのだと思います。
その後、半ば「急ハンドル」を切って、看護系の大学に入り、看護師・保健師の道を目指すようになりました。
あまりの方向転換で、高校の担任の先生はびっくりしていましたが…(笑)。
また、衛生委員会の資料は、エムステージに所属する保健師がチームになって制作しています。
アイディアや意見を出し合い、ビジュアルだけでなく、しっかり企業の活動に貢献できる資料を目指しています。
医療現場で実感したのは「産業保健・一次予防」の大切さ
――エムステージに所属する保健師のチームについて教えていただけますか。
エムステージには、東京本社だけでなく地方支社にも保健師が所属し、それぞれが各地の企業へ訪問しています。
また、チームの活動として、実務に関する研修を行っています。
企業での実務経験が豊富なメンバーが中心となり「労働衛生・産業保健の基礎的知識」をまとめたチェックリストを制作。その後は、学習の効果測定のためにテストも行っています。
訪問先の企業から信頼して業務をまかせていただけるよう、サービスの質を向上させるための努力は日頃から欠かしません。
こうした活動は、産業保健師のメンバーでとても仲良く取り組んでいます(笑)。
――なぜ、吉野さんは産業保健師の世界へ進もうと考えたのでしょうか。
以前、私は大学病院の救命救急センターに勤務していました。その時の経験が産業保健師の仕事につながっています。
救急救命センターに搬送されてくる患者さんには、生活習慣病の悪化が原因の方が多く「もっと早い段階で予防ができていれば、重症化せずに済んだのではないか…」と考えることが多かったのです。
そこで、産業保健の世界に飛び込むことを決意しました。
医療機関での経験があったからこそ、産業保健師として、病気の「一次予防」に取組みたいという気持ちになったのだと思います。
――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
皆様がご存知のように、企業には産業医を選任する義務がありますが、保健師を活用するかどうかは自由なのです。
しかし、最近では新型コロナウイルスの流行があり「より一層、衛生活動を強化したい」と考える企業も増えており、同時に保健師のニーズの高まりを感じています。
その期待に応えられるよう、今後も努力していきたいと思います。
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