【2021年】ご存知?新設された「パワハラ労災」認定基準&具体的事例を解説
(最終更新日:2021年7月6日)
2020年6月、いわゆる「パワハラ防止法」が施行されました。
そして、それにあわせる形で「精神障害の労災認定基準」にパワーハラスメントの項目が追加されています。
「パワハラ労災の認定基準って?」
「どんな行為がパワハラ労災になる?」
といったテーマについて、人事として知っておきたい注意点・ポイントを紹介します。
2020年6月、労災認定の基準に追加された「パワハラ」その内容は?
2020年6月「パワハラ」が精神障害の労災認定基準として追加された
2020年5月末、厚労省は精神障害に関する労災認定の基準を改定し、新たに「パワハラ」の項目が追加されました。
そして、このパワハラの項目を追加した労災認定の基準が2020年6月より適用されます。
2020年6月よりパワハラ防止法(労働施策総合推進法)が施行されたことにあわせた形と考えられます。
本稿では、パワハラの労災認定基準が明確化したことを踏まえ、労災認定の基準について解説するとともに、過去の判例から注意点を紹介します。
労災認定基準「心理的負荷評価表」の具体例に追加された“パワハラ“
精神障害の労災認定基準には「業務による心理的負荷評価表」というものが用いられます。
また、理的負荷評価表には「出来事の類型」「具体的出来事」という項目があり、この中に“パワーハラスメントが追加されたのです。
これまでは「達成困難なノルマが課された」「退職を強要された」などといった名称の項目が存在していましたが”パワーハラスメント”という表現はされてきませんでした。
しかし、今回の改正により「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」といった内容の項目が追加されています。
このように「パワーハラスメント」という名称を追加した背景には、労災請求の容易化や審査の迅速化への期待があるようです。
パワハラ労災の認定基準となる「具体例」の3段階評価
〈上司から部下〉パワハラによる精神障害の労災認定基準
では、上司からのパワーハラスメントによって、部下が精神障害を発症してしまった場合には、どのような基準で労災認定されるのでしょうか。
それを知るためには、まず「パワーハラスメントの定義」について知っておく必要があります。
●パワーハラスメントの定義
労働施策総合推進法により、職場におけるパワーハラスメントとは(中略)以下の3つの要素をすべて満たす言動とされています。
1.優越的な関係を背景とした言動であって
2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
3.就業環境が害されるもの
出典:「精神障害の労災認定に関する専門検討会報告書」
〈具体例〉パワハラの労災認定基準「弱・中・強」の3段階で評価される
精神障害の労災認定基準は、行為がもたらす心理的負荷(ストレス)を「弱・中・強」の3段階で評価しています。
パワハラ労災の基準も同様に「具体的出来事」が3段階で評価されますので、部下を持つ上司・管理職などの方はしっかりチェックしておきましょう。
「精神障害の労災認定に関する専門検討会報告書」に示された具体例と、労災認定基準を一つずつ見ていきます。
●心理的負荷が「強程度」と評価される具体例
・ 上司等から、治療を要する程度の暴行等の身体的攻撃を受けた場合
・ 上司等から、暴行等の身体的攻撃を執拗に受けた場合
・ 上司等による次のような精神的攻撃が執拗に行われた場合
→人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃
→必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃
・ 心理的負荷としては「中」程度の身体的攻撃、精神的攻撃等を受けた場合であって、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった場合
●心理的負荷が「中程度」と評価される具体例
・ 上司等による次のような身体的攻撃・精神的攻撃が行われ、行為が反復・継続していない場合
→治療を要さない程度の暴行による身体的攻撃
→人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を逸脱した精神的攻撃
→必要以上に長時間にわたる叱責、他の労働者の面前における威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を
超える精神的攻撃
●心理的負荷が「弱程度」と評価される具体例
・ 上司等による「中」に至らない程度の身体的攻撃、精神的攻撃等が行われた場合
出典:「精神障害の労災認定に関する専門検討会報告書」
同僚からの”パワハラ”も労災として扱われる可能性
同僚どうしの間で発生した“パワハラ”は労災認定される?
前述したパワーハラスメントの定義では「優越的な地位」つまり、例えば上司から部下に対する言動を対象としたものが想定されています。
また、労災認定の基準である具体的出来事についても同様に「上司等から」という表現になっています。
しかし「上司と部下」という関係ではなくとも、同僚との間にハラスメントが発生するケースも存在するでしょう。
この部分については、具体例「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」にて、労災として評価されることが考えられます。
つまり「上司と部下の関係じゃないからパワハラにはならない」といったことはなく、人間関係には十分な注意が必要なことに変わりはありません。
人事が注意したい「同僚間のパワハラ労災」
先ほど〈上司から部下へのパワハラ〉労災認定基準としての具体例(弱・中・強)を記載しましたが、同僚間での“パワハラ”(いじめ・暴行・嫌がらせなど)も同様に、具体例が挙げられています。
特に人事担当者の方は「精神障害の労災認定に関する専門検討会報告書」に示されている具体例と「弱・中・強」3段階の評価を確認しておきましょう。
● 心理的負荷が「強程度」と評価される具体例
・ 同僚等から、治療を要する程度の暴行等を受けた場合
・ 同僚等から、暴行等を執拗に受けた場合
・ 同僚等から、人格や人間性を否定するような言動を執拗に受けた場合
・ 心理的負荷としては「中」程度の暴行又はいじめ・嫌がらせを受けた場合であって、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった場合
●心理的負荷が「中程度」と評価される具体例
・ 同僚等から、治療を要さない程度の暴行を受け、行為が反復・継続していない場合
・ 同僚等から、人格や人間性を否定するような言動を受け、行為が反復・継続していない場合
●心理的負荷が「弱程度」と評価される具体例
・ 同僚等から、「中」に至らない程度の言動を受けた場合
出典:「精神障害の労災認定に関する専門検討会報告書」
社内の各部門が連携し、パワハラ労災を防止する
パワーハラスメントによる労災が発生した場合に想定されることとして、従業員の精神的なダメージはもちろんのこと、企業のイメージダウンも避けられません。
そのため、パワーハラスメントを発生させない職場環境づくりが大切になってきます。
人事など担当者のみで対応することが難しい場合には、産業医に相談して参加してもらうことも効果的でしょう。
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2020年6月にはいわゆる「パワハラ防止法」が施行されるなど、パワーハラスメントに関しては大きな動きがあります。
部下を持つ上司・管理職の方だけでなく、人事担当者や衛生担当者などが最新の情報を入手し、職場で適切な対応を心がけることが大切です。
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