小売業は「2度目の緊急事態宣言」に備えておく。特措法の解説と今後の企業対応


目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.「改正特措法」と「緊急事態宣言」の解説
    1. 2.1.「改正特措法」とは
    2. 2.2.「緊急事態宣言」とは
    3. 2.3.解除された「緊急事態宣言」小売業は2度目の宣言に備えておく
  3. 3.流行が続く中で小売り事業者が求められる対応
    1. 3.1.(1)産業医と連携した感染症対策~社内体制の構築
    2. 3.2.(2)小売りの現場で押さえておくべきこと(職場環境と衛生教育)
  4. 4.おわりに

はじめに

新型コロナウイルス感染症の流行が、世界各国で続いています。

日本でも4月7日に7都府県を対象として発出された「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」(以下、「緊急事態宣言」)は、その後、4月16日にその対象が全国に拡大され、外出自粛、そして業種によっては経済活動の縮小が求められるなど、国民生活および経済に大きな影響を与えました。

現在「緊急事態宣言」は解除されていますが、それは必ずしも新型コロナウイルス感染症の終息を意味するものではなく、流行の第二波までの小康期と考えておく方がよいでしょう。

なぜなら、新型コロナウイルス感染症には、今のところ有効なワクチンはなく、また抗ウイルス薬についても、効果が期待できるものを治療薬として実用化するためにその治療効果や安全性を検証している段階で、すべての患者に速やかに投与できる状況にはないからです。

本稿では、「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」(以下、「改正措置法」)および「緊急事態宣言」の内容を理解した上で、新型コロナウイルス感染症が流行する中で、小売り事業者が何を求められているか考えます。


「改正特措法」と「緊急事態宣言」の解説

「改正特措法」とは

日本では、病原性の高い新型インフルエンザ等感染症や同様の危険性がある新感染症が発生した場合に備えて、2012年5月11日に「特措法」が制定されています。

しかし、現在流行している新型コロナウイルス感染症は、「特措法」の対象となっていなかったため、これを追加する「改正特措法」が、2020年3月13日に成立し、翌3月14日に施行されています。


「緊急事態宣言」とは

「改正特措法」の対象となる感染症の爆発的流行拡大を防ぐために、次の2つの要件を満たす場合、「緊急事態宣言」が発出されます。

  1. 新型インフルエンザ等(国民の生命・健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものに限る)が国内で発生している
  2. 全国的かつ急速なまん延により、国民生活および国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある


解除された「緊急事態宣言」小売業は2度目の宣言に備えておく

すでに我々が見てきたように、「緊急事態宣言」は全国一律に発出されるのもではなく、対象区域と期間を示して発出されます。

発出後は、該当する地域の都道府県知事に対して、国民の生命および健康を保護し、また国民生活および国民経済の混乱を回避するために必要と考えられるさまざまな措置を講じる権限が与えられますが、これらの措置の内容は、都道府県によって異なり得ます。

新型コロナウイルス感染症は多くの国民が免疫を持たないことから長期化することが想定されています。

小売り事業者は、再度、「緊急事態宣言」が発出されることがあり、またその後、解除されることがあることを理解しておくことが重要です。

ただ、どのような状況下においても、食料品や医薬品など生活必需品の販売は、国民生活を適切に維持するために必要であることも忘れてはなりません。


流行が続く中で小売り事業者が求められる対応

これまで説明したとおり、一定期間、それもある程度長期間、新型コロナウイルス感染症の流行が続くことを想定しておく必要があります。

そこでは、「緊急事態宣言」が発出されているときはもちろん、それが解除された段階においても、小売り事業者は、ただ単に新型コロナウイルス感染症が流行する前の状態に戻るのではなく、この感染症が存在し続ける前提で、今後は産業医らと連携し、感染防止対策を講じつつ、事業を展開していくことが極めて重要です。


(1)産業医と連携した感染症対策~社内体制の構築

経営トップが率先して、新型コロナウイルス感染症に対する社内体制を構築し、さまざまな課題に対応することが極めて重要です。

また、感染防止対策はもちろん、流行中の事業継続については、衛生委員会や産業医など産業保健スタッフの活用を図ることが大切です。あわせて、どのような状況下においても、労働安全衛生関係法令を踏まえ、従業員の安全確保を最優先することが求められます。

新型コロナウイルス感染症など新たな感染症は、その流行の途中でウイルスが変異することなども考えられますから、国・地方自治体・業界団体などを通じ、感染症に関する正確な情報を常時収集することも必須です。


(2)小売りの現場で押さえておくべきこと(職場環境と衛生教育)

新型コロナウイルス感染症の感染経路は、主として飛沫感染と接触感染ですから、その感染経路を断つことが重要です。

ただし、実際に販売を行う現場では、対人接触が必ず起こりますから、産業医による衛生教育や職場巡視などを通じて、さまざまな工夫を講じて対応することが求められます。

①従業員の感染防止対策

・出勤時の検温、手洗いの徹底

・朝礼・点呼などは小グループで実施し、一定以上の人数が集まらない

・マスクの着用

・職場(休憩スペースを含む)の消毒

・食事や休憩の時間をずらす

・体調の悪い場合は出勤しないことの徹底 など

※上記について、産業医に衛生講話を依頼することも効果的です。

②来店者を対象とした感染防止対策

・入口などに消毒用アルコール製剤を置く

・手洗いや咳エチケットなどを啓発するポスターの掲示や館内放送の実施

・店内の消毒(ドアノブ、エレベーターのスイッチ、カート、貸し出し用バギー、車いす など)

・店内環境の改善(フードコートなどでテーブル間隔を広くする) など

※職場巡視の機会を有効活用し、産業医から意見をもらうと良いでしょう。


おわりに

従業員が、「緊急事態宣言」で求められていることや、感染防止対策として実践するべきことを理解していなければ、小売り事業者の販売現場で安全を確保することはできません。

朝礼などの機会をとらえて、適時にさまざまな情報提供を行うことで、従業員の新型コロナウイルス感染症への対応力を高めていくことが重要です。

解説:本田茂樹

三井住友海上火災保険株式会社に入社後、リスクマネジメント会社の勤務を経て、現在はミネルヴァベリタス株式会社の顧問であり信州大学経営大学院にて特任教授も務める。

リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。

これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭を執るとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。

近著に「中小医療機関のための BCP策定マニュアル(社会保険研究所)」「いま、企業に求められる感染症対策と事業継続計画(ピラールプレス)」がある。

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2020年11月12日:新型コロナウイルス感染症流行下の防災とBCP ~想定外を作らない
2020年11月13日:地震、台風、感染症に備える、最新『BCP(事業継続計画)』の策定と見直し



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本田茂樹

本田茂樹

本田茂樹(ほんだ・しげき) 三井住友海上火災保険株式会社に入社後、リスクマネジメント会社の勤務を経て、現在はミネルヴァベリタス株式会社の顧問であり信州大学にて特任教授も務める。 リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。

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