【健康診断ってめんどくさい?】受診率アップのために会社ができること
健康診断は労働者本人だけでなく、企業にとっても大切なイベントですが、残念ながら受診しない方がいるのも事実です。
ここでは「なぜ、従業員は受診してくれないのか」という視点から、対応方法を紹介し受診率をアップさせることのメリットについても解説していきます。
※本稿では定期健康診断について記載しています。
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労働者が健康診断を受診しない理由と、企業に課せられる罰則
厚生労働省の統計から見た「労働者が健康診断を受けない理由」
厚生労働省が2017年に発表した調査結果によれば、労働者が健康診断(人間ドック含む)を受けなかった理由のランキングは以下のようになっています。
●働く人が健康診断を受けなかった理由
第1位「心配な時はいつでも医療機関を受診できるから」:33.5%
第2位「時間がとれなかったから(忙しいから)」:22.8%
第3位「めんどうだったから」:20.2%
そのほかには「結果が不安なため受けたくないから」などがあります。
出典:「平成28年 国民生活基礎調査」
■健康診断の実施は「義務」違反すれば罰則も
健康診断の受診は、労働安全衛生法(第66条)で定められた義務です。
条文には、企業と労働者に対して、以下の内容が記されています。
●企業の義務
「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(中略)を行わなければならない。」
●労働者の義務
「労働者は(中略)事業者が行なう健康診断を受けなければならない。」
出典:労働安全衛生法 第66条
つまり、健康診断を行うことは「企業と労働者それぞれの義務」であり、受診させない・受診しないことは義務違反となってしまうのです。
なお、健康診断を実施しない企業には罰則が設けられており、50万円以下の罰金が課せられます(第120条1項)。
「受けない理由」から考える、受診率アップのポイント~受診しない従業員へのアプローチ
「いつでも医療機関を受診できるから」という理由で受診を拒否されたら?
「心配な時は医療機関を受診できるから、会社の健康診断は受診しません」という従業員に対しては、健康診断が疾病予防の観点で大切なことや、職場で健康課題を把握するために必要であることを説明し、理解してもらうようにしましょう。
そして、健康診断が、企業活動だけでなく働く人個人の健康にとって大切であるということを、産業医による健康講話を通じて知ってもらうようにします。
「忙しいから健康診断を受診しない」従業員に企業はどう対応するか
健康診断の受診が法律で義務となっているとはいえ、実際には業務の影響によって受診しない従業員もいることでしょう。
前述したように、労働者が健康診断を受けない理由として上がっていたのは「忙しいから」「めんどくさいから」といったものでした。
これについて、企業としてできることには、以下の対応が考えられます。
・従業員へ仕事量や繁閑についてヒアリングし、健診日を設定する
・企業が閑散期になるタイミングで健診車を利用する
・健康診断の受診を就業規則で定める など
なお、従業員が会社の用意した健康診断を受診しない場合には、個人で医療機関を探し、健康診断を受けに行く必要があることもアナウンスしておきましょう。
その際には、健康診断の結果を会社に提出することもあわせてお願いしておきます。
「悪い結果が出るから受診しない」従業員への対応方法
もうひとつ、健康診断を受診しない理由としてあがっていたのは「健診の結果が不安だから」というものでした。
しかし、たとえ健康診断で悪い結果が出たとしても「あなたは不健康だから減給しますね」といったように、従業員に対して不利益な取扱いをすることは禁じられています。
従業員としては「健康診断で悪い結果が出たら、会社にいられないかもしれない…」という不安を抱えている可能性も考えられます。
そういった心配がないことについて、あらかじめ周知しておくことが受診アップにつながります。
また、思わしくない結果が出た場合にも、産業医や産業保健師といった産業保健スタッフからのフォロー(保健指導など)を必ず実施し、課題の解決に向けて進めていくことが大切です。
逆に言えば、産業医が健康診断の実施・実施後のフォローに積極的でない場合、見直しも必要になってくるでしょう。
「健康診断を受診するだけ」で企業と従業員が健康になる!?
健康診断の受診率をアップさせることのメリット~健康経営の視点
「健康経営」が注目される昨今では「従業員の健康診断受診率100%」をアピールしている企業が増えてきています。
その理由は、健康診断の受診率を上げることが「健康経営の第一歩」になるからです。
事実として、経済産業省の認定制度「健康経営優良法人」では、健康診断の受診率が高いこと(実質100%)が認定基準のひとつになっています。
つまり、健康診断の受診率を向上させることのメリットは「職場の健康課題を把握できること」のみならず、企業のブランディングにも非常に効果があるのです。
もちろん、労働者にとっては自身の健康と向き合う機会となりますし、生活習慣などを見直すきっかけになるという大きなメリットがあるのです。
健康診断の受診率が上がれば「企業全体の健康レベル」もアップする
「健康診断の受診率」と「企業の健康レベル」の関係について、興味深いデータがあります。
千葉産業保健推進センターの発表した調査結果によれば、健康診断の受診率が年々向上した企業では、比例して肥満の従業員が減少し、HbA1cや血糖値などの数値が改善された事例があります。
さらには、仕事中の事故(労災)の件数も減少しています。
これは、従業員が自身の健康状態に向き合うことができ、結果として職場のヘルスリテラシーが向上したからだと考えられます。
よって、健康診断の受診率を向上させることは、企業全体の健康レベルを向上させることと深く関係があるといえるのです。
ですので、従業員の健康に課題を感じている企業では「はじめの一歩」として、ぜひとも健康診断の受診率アップを目指していきましょう。
出典:千葉産業保健推進センター「定期健康診断受診率が算出不能から100%に向上したある企業における22年間の改善要因と健康診断成績等の調査」
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いかがでしたでしょうか。
もちろん、健康診断の受診は「従業員それぞれのヘルスリテラシー向上」「職場の健康課題の早期発見」という目的があります。
そして、健康経営や産業保健活動にとって欠かせない「一次予防」の観点で、とても大切なイベントです。
「受診する・しない」は、従業員個人の判断に任せるのではなく、必ず受診してもらうようにしましょう。
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