「専業主婦は幻の職業」人材のプロに聞いた、女性が活躍できる職場の条件とは?

これまで「男性中心」だった日本の社会も、今や女性が活躍するのが当たり前になってきました。

しかし、いまだに多くの企業では、女性のキャリア形成やライフイベントになかなか対応できていない実情があるのも確かでしょう。

今回は、企業の代表取締役でありながらワーキングマザー、そして「人材のプロフェッショナル」である森本千賀子さんにお話を伺いました。(取材:「サンポナビ」編集部)

「スーパー営業ウーマン」が考える女性のキャリアと働き方

「スーパー営業ウーマン」として体現してきた女性の働き方

――本日は「女性の働き方」や「キャリア形成」といったテーマについて、人材のプロフェッショナル、森本千賀子さんにお話をお聞きしたいと思います。

まずはご経歴について教えていただけますでしょうか?

株式会社morichの代表取締役 兼 All Rounder Agentをしております、森本千賀子と申します。

プライベートでは、高校1年生と小学5年生の子どもたちのママでもある「ワーキングマザー」です。

経歴ですが、大学を卒業後、1993年にリクルート人材センター(現リクルートキャリア)に入社しました。

そこで転職エージェントとして2,000人以上の方の転職を支援。

リクルートキャリアを卒業した後、これまでの経験を活かして独立し、在籍時に起業していた株式会社morichにフォーカスして一人立ちしました。


――森本さんは「スーパー営業ウーマン」と呼ばれていらっしゃいますが、そのご活躍についてお聞きかせください。

リクルートキャリアでは、主に経営幹部・管理職クラスを求める企業ニーズに応えるべく、人材戦略コンサルティングや採用支援などを行ってきました。

その活動のアウトプットとしては、営業成績歴代トップは恐らくいまだに破られていないのではと思います。

新人の時から全社MVP賞をはじめ、30以上の賞を受賞し、受賞の常連になっていました。

仕事での業績にはこういったものがありますね。


――輝かしい業績を上げながらも、家ではしっかり“お母さん”というのはすごいですね

仕事でのキャリアだけでなく、プライベートでの「妻」や「母」としての顔(キャリア)も大切にし、両方の充実を目指しています。

とはいっても、家事や育児を完璧にこなしているわけではなく、アウトソースなどをフル活用して、家事・育児に関しても私がやりたいこととやるべきことにフォーカスし、それ以外は「家族外家族」でもある第三の家族のシッターさんや家事代行サービスに頼っています。

ここぞという「志事」にはしっかり向き合い、家事・育児と仕事とどちらか・・・という選択ではなく両方ともに大切にしています。

そんな生き方から、いつしか「スーパー営業ウーマン」と呼ばれるようになり、本の執筆依頼や、雑誌・テレビからの出演依頼もありました。


――NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」にも出演されていましたよね

2012年に放送された後、再放送もされましたね(笑)。

あの頃はリクルートキャリアに在籍していて、もちろんすでに子供もいました。

午前3時に起きることから1日がスタートすることや、仕事と家庭を両立させながら働く姿に反響があったようです。


――「午前3時起き」には驚きましたが、今でも変わらないのでしょうか?

もちろん、今でも毎朝午前3時に起床していますよ(笑)。

起きてから、各種メディアの連載記事や本の執筆をしたり、講演の資料を作成したりと右脳を使う「考える」とか「企画する」時間にしています。

実は、午後10時から深夜2時までがゴールデンタイムという最も睡眠の質が高い時間帯と言われており、その時間帯を睡眠に充てるようにしています。

そうすることで、起床後にはすっきりと脳をクリアにして集中できるようにしています。

1日の時間は24時間と限られています。それを上手に使って、生産性の高い時間活用を心掛けています。

数多くの書籍を執筆し、メディアに取り上げられることも多い。


雇用における“神話の崩壊”で、専業主婦は「幻の職業」になった

――近年、働く女性には特に注目が集まっていますが、その背景には何があると思いますか?

女性の活躍に期待が集まる理由は、単純な人手不足とは別に、男性の仕事とも大きく関りがあります。

それは、現代社会ですでに「終身雇用」と「年功序列」制度が崩壊しつつあることが原因だと考えています。

真面目にコツコツ働いているだけでは、右肩で収入が増える時代ではないということです。

ですので、女性もこれまでのように男性の収入に頼りっきりというわけにもいきませんよね。

言い換えれば、現代の日本で「専業主婦」は“幻の職業”になろうとしています(笑)。


――男性の昇格・昇給が保障されていないことに原因があるのですね。

そうですね。

今までであれば、パパが仕事を続けていれば、定年までお給料が上がっていって、ママは専業主婦として子育てをして…ということが出来ましたが、現代の日本は違いますよね?

そうした理由もあって、生活をしていく上で女性が社会進出をしていくことはある種“当たり前”になってきているのです。

それに、キャリアを積んでこられなかった女性が「貧困女子」なんていう風に呼ばれてしまうような現状もあるわけです。

そんな風にして、女性たちも「働くこと」への意識が変わってきています。

しかし、残念ながら多くの企業では、女性のキャリアアップを見越した「働き方」の整備や、管理職への登用などについて、まだまだ対応しきれていない印象がありますよね。


――日本ではまだ女性の管理職が少ないイメージですが、どんな原因があるのでしょうか。

原因のひとつは「社内にロールモデルがないこと」だと考えています。

つまり、パフォーマンスの高い女性社員がいても「女性の管理職が今までにいないから」といった理由で、管理職へのチャレンジに二の足を踏んでいる女性が多いと感じています。

一方で企業サイドも、前例がないからということで女性管理職の登用に二の足を踏んでいるケースも多い。

しかし、成績や行動をしっかり評価して、男性社員と同様、適性があるのであれば、積極的に女性社員を管理職に登用していくこともこれからは必要でしょう。

ですが、その際には、女性従業員とよく話し合って、キャリアアップの意志や本人のライフプランを確認することも大切ですね。


女性の活躍を視野に入れた「働き方改革」が企業に求められている

――「働き方改革」と女性のキャリアアップはどう関係すると思いますか?

「働き方改革」を進める中で、クローズアップされているのは、残業の削減などの「労働時間短縮」です。

一方で、だからと言って業務効率を上げるような施策や対応を講じているわけではないので、働く時間は短くなるが、業務のアウトプットは変えるな・・・と言う矛盾です。

その点、女性はもともと育児などで時間短縮勤務制度などを活用しているケースが多く、いかに業務効率を上げるかということを常に意識しています。

今こそ、そんなワーキングマザーのワークスタイルが注目されるべきと感じます。

労働時間を削減しながらも仕事で成果を上げられるように、企業が施策を行っていくことが大切でしょう。


――職場の「働き方改革」、具体的にはどのような方法があるとお考えでしょうか。

理想的なのは、リモートワークを導入することです。抜本的な解決には、これが一番ではないでしょうか。

リモートワークを導入することで、通勤にかかる時間を圧縮でき、育児との両立もしやすくなります。そして、女性社員の離職防止にも期待ができます。

時間的な制約の少ないリモートワークの導入は、女性のキャリア形成にとても大切な制度だと思います。


――子育て中の女性だと、時短勤務が主流だと思いますが、時短勤務についてはどうでしょうか。

時短勤務についても、本人の意向とすり合わせて、フレキシブルに変えられるようにするのが良いと考えています。

具体的には、子供の年齢によって時短勤務とフルタイムを選べるような制度です。

例えば、子供は突然熱をだしたり病気になったりします。ただ、子供が保育園の年中から年長くらいになると、そういったこともひと段落してきます。

そうした時、単に時短勤務を継続するのではなく、育児が落ち着いたら本来のフルタイムに戻し、また「小一の壁」と言われるような小学校の低学年の時には必要があれば時短勤務に戻ることもできるような、フレキシブルな就業形態が選択できる制度があるといいと思います。


――家庭と仕事の両立、そしてキャリアアップとなると、女性のメンタルヘルスも気になります。

私の経験ですが、子供が小さい頃に、夫が出張族でほぼ平日は自宅を留守にしていたので、育児・家事をほぼ“ワンオペ状態”でこなしていました。

その時、やはり精神的にも大変なことは多かったです。

さらにハードな仕事もしなければならないとなれば、ストレスもたくさん抱えることになると思います。

ですので、職場には理解のあるメンターの存在が不可欠です。

人事部門の方や、キャリア相談やメンタルのフォローができるようなキャリアカウンセラーなどが配置されていて、各種の相談に乗ってもらえるような人がいれば、とても心強い存在になるはずです。


――最後に、企業の方へのメッセージをお願いします。

企業の方にお伝えしたいことは、女性の能力にもっと期待してほしいということです。

社会の潮流から「日本では女性が働かなくてはならない」のは確かです。

しかし、そんな後ろ向きの理由ではなく、建設的なマインドセットで女性社員に活躍の場を提供していただきたいです。

いわゆる多様な立場の女性が活躍することで、これまでとは違う事業のアイデアや視点が見いだされたり、女性ならではの共感型・サーバント型のリーダーシップの姿も今後期待されるポイントだと感じます。

また、働く女性の方たちも一歩踏み出す勇気をもって、キャリアアップにチャレンジしていただきたいと思っています。

プロフィール

森本千賀子(もりもと・ちかこ)

リクルートにて、人材戦略コンサルティング、採用支援サポートを手がけ実績多数。2012年NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。2017年3月株式会社morichを設立しさらに活動領域を広げる。


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