〈インタビュー〉産業保健師が果たす役割とは?2社担当の保健師に話を聞いてみた
従業員の健康維持をサポートする存在として、産業保健師が企業で果たす役割はさまざまです。
エムステージ所属の髙木美里さんは、現在2社の安全衛生業務を担当。
保健指導や産業医のスケジュール調整、安全衛生の推進に役立つ企画立案など、幅広い業務に携わっています。
本記事では、髙木美里さんに産業保健師が企業で果たす役割や、具体的な活動内容について、お話をお伺いしました。
私が産業保健師になった理由
これまでの経歴について教えてください。
産業保健師の髙木美里と申します。
大学を卒業して看護師になって以降は3年にわたり、救命救急センターで働いていました。
救急の中でも、生活習慣病の重症化やお仕事中の事故などによって、高度な救命治療を要する患者さんへの対応が主な業務内容です。
看護師時代は命の瀬戸際の患者さんたちが回復される姿を見て、やりがいを感じていましたね。
現在は医療機関を離れ、エムステージで保健師として働きはじめて、2年目になります。
看護師から産業保健師を目指そうと思った理由をお伺いしてもよろしいでしょうか。
重症化した患者さんに対応する中で、「どうしてこうなっちゃったのかな」という疑問を抱えるようになりました。
検診をずっと受けなかった結果、重症化してようやく病院の受診につながった方を見ると、病気になる前になんとかしたいという思いが強くなったのです。
それで、産業保健師を目指すようになりました。
看護師と産業保健師の働き方には、どのような違いがありますか。
看護師と産業保健師では業務内容が、かなり違うと思っていまして、看護師の場合は医療者側として、どんどん患者さんを引っ張っていくイメージでしたね。
今は産業保健師として、社員さんのお仕事を妨げないように陰からサポートするような感覚で仕事をしています。
仕事に対する価値観や目線の違いはすごく感じていて、自分でもガラッと変えなきゃいけないと思いますね。
それと、看護師の場合は病気になってしまった方の回復を支えることが主な役割でした。
それに対して、産業保健師は病気の予防や重症化の回避が業務の目的となっている点でも違いがあります。
産業保健師の業務内容はさまざま。企業の課題に柔軟に対応
訪問企業で担当している具体的な業務内容をお伺いしてもよろしいでしょうか。
現在、担当している企業は製造業と小売業の2社で、それぞれまったく異なる業務を担当しています。
製造業では一般的な産業保健師の仕事をメインに担当して、従業員の安全衛生をサポートをさせていただいています。
週2回の訪問で午後の3時間を使って、健康診断の有所見者に受診を勧める内容が書かれたお手紙を送ったり、産業医面談のスケジュール調整をしたりしていますね。
従業員に対して、保健指導のための面談も行っていますよ。
今の11月の時期は、ちょうど健康診断やストレスチェックの結果が返ってくるので、結果を従業員の方に伝えたり、有所見者に病院受診を促したりしていますね。
もう一方の小売業では、人事部の担当者と一緒になって安全衛生を推進するための企画を考えています。
複数のグループ会社を抱える企業なので、グループ全社が無理なく採用できることを意識して企画を練っていますね。
たとえば、厚生労働省が運営する「こころの耳」と呼ばれるサイトにあるツールや資料などを有効活用した啓発活動を企画しました。
公的機関が提供する無料のツールや資料を活用して、コストをかけずに安全衛生教育を届けられるように工夫しています。
企業ではどのように健康相談を受け付けていますか。
小売業の会社では企画のみに携わっているので、健康相談を担当しているのは製造業の会社ですね。
工場内にある社員食堂の脇に医務室があるので、そこで健康相談を受け付けています。
私から呼び出して従業員さんに来てもらうときは、15分くらいで面談を行っています。
従業員さんから相談に来られることもあって、その場合は時間制限を設けていないので、30分以上話すこともありますよ。
自由に相談してもらえる状況を整えているので、学校の保健室のような感じです。
腰痛や筋肉痛などのフィジカル面の相談が多くて、製造業の工場内で働かれている方ならではの悩みについて聴くことが多いですね。
企業が産業保健師を導入すると、企業にとってどのようなメリットがありますか。
産業保健師はさまざまな課題に柔軟に対応できるので、導入企業の状況によって受けられるメリットも異なると思います。
実務ですと、産業保健師が産業医面談のスケジュール調整もできるので、人事や労務管理の担当者の負担を減らせます。
それと医療や健康に関する専門知識を活かして、健康診断やストレスチェックの結果を従業員にわかりやすく説明できることもメリットだと思います。
健康診断の結果は、専門的な数値ばかりで一般の方が見てもわかりづらいことが多いのですよ。
そのわかりにくい数値を専門的な立場から読み解いて、将来的な病気のリスクについて従業員に伝えてあげます。
そうすると従業員に健康意識が芽生え、生き生きと働けるようになり、企業にとってもプラスになるのではないでしょうか。
企業に役立つ産業保健師として日々の自己研鑽に注力
エムステージに出勤した日は、どのような活動をなさっていますか。
エムステージへの出勤日は、Sanpo保健室(※)というサービスで、健康相談を受けています。
それと、保健師で集まって安全衛生関連の資料作りや各担当企業の業務に関する情報共有などを行っています。
安全衛生関連の資料や研修で得た情報は、それぞれの保健師が各担当企業の安全衛生活動にも役立てているのですよ。
最近ではエムステージ内の研修の担当者にもなったので、女性の健康に関するテーマで研修会も開きましたね。
※エムステージでは、「Sanpo保健室」と呼ばれる産業医や保健師、心理職などの産業保健専門職によるオンライン面談サービスを提供しています。詳しくは、こちらをご覧ください。
スキルアップのためにご自身で取り組まれていることはありますか。
私自身でも、学会発表をオンラインで視聴したり、資格取得のための勉強に取り組んだりしてスキルアップに努めています。
たとえば、日本産業衛生学会やメンタルヘルス学会などで発表されている安全衛生関連の論文や資料をチェックしたり、メンタルヘルスケア検定の資格取得を目指したりしていますよ。
専門的な学会から有益な情報を得て、それを日々の業務に活かすことで、担当企業のお役に立てればと考えています。
産業保健師としての今後の目標や展望を教えてください。
先ほど、お話したメンタルヘルスマネジメント検定の1種を取得することですね。
そのためにも、まずは3月に実施される2種の取得に向けて、現在勉強に励んでいるところです。
エムステージにも資格取得のために補助してもらっているので、ぜひとも資格取得の目標を達成したいですね。
産業保健師の導入を検討している企業へメッセージ
保健師は会社全体の安全衛生管理や従業員の健康管理の専門家です。
人事の皆さんと一緒に協力して、少しでも会社の未来に繋がるような活動ができればと思っています。
安全衛生面の課題については幅広く相談に乗りますので、もし産業保健師と一緒に働く機会があれば、しっかり活用していただきたいですね。
従業員が50名を超えると、様々な産業保健活動が義務化されます。
株式会社エムステージでは企業の産業保健活動を網羅的にサポートできるよう、サービスを展開しています。ぜひ一度お問い合わせください。