〈保健指導を通じた改善事例〉企業における産業保健師の活動報告

企業の産業保健を「意義あるもの」にするため活動に取り組む産業保健師。

株式会社エムステージに所属する松本萌佳保健師は、4つの企業で保健師業務に従事し、健康診断の事後措置(受診勧奨や保健指導) というイベントを通じて産業保健活動の活性化に注力しています。

エムステージ社内の活動報告会についてレポートいたします。

※産業保健師の活動は契約内容・担当する保健師によって異なります。詳細については株式会社エムステージまでお問い合わせください。


産業保健師として、企業における産業保健の課題把握に努める

4つの企業における産業保健の体制づくり

今回の報告会では、企業における産業保健師の具体的な活動内容が紹介されました。

2021年の4月より、松本保健師が訪問しているA社、B社、C社、D社の4企業を例に、企業からのニーズと活動内容課題について発表。

4企業それぞれの従業員や産業保健体制は次のようになっています。


●松本保健師が訪問している企業4社の従業員数・産業保健体制等 



A社
B社
C社
D社
従業員数
約1,000名
約300名
約300名
約100名
産業医の活動
月1回訪問
訪問なし
(選任済)
訪問なし
(選任済)
訪問なし
(選任済)
保健師訪問頻度
月4回
月2回
月2回
月1回


産業保健師として訪問する企業では「産業医の活動状況」に課題あり

松本保健師が訪問する企業4社からのニーズは、健康診断の事後措置である保健指導であったのですが、産業保健活動をすすめるにあたって、大きな問題が発生していることがわかりました。

それは「産業医を選任しているものの訪問・活動の実態がない」という、いわゆる「産業医の名義貸し状態」が起きていること。


法令を遵守するために産業医の存在は欠かせませんが、企業に産業医を変更・交代してもらうことも簡単ではありません。

そして、こうした状態では意義のある産業保健活動には取り組むことが難しいと感じた松本保健師は、訪問先企業との関係性を構築し、産業医に活動してもらうことを考えました。

それは、健診の事後措置を通じた産業保健体制の再構築でした。


健診事後措置というイベントを通じて体制の再構築を目指す

活動報告会で取組みを発表する松本保健師(写真右)

訪問先の企業で最初に取り組んだのは「関係性の構築」

まずは、産業保健師としての存在を認識してもらうために、訪問時は「笑顔で明るく」を心がけて企業の担当者との会話する時間も大切にしました。

ごく当たり前のことに思われますが「うちの会社の保健師」という存在になるためには重要な取組みであると、松本保健師は言います。

また、松本保健師が自主的に取り組んだ事務活動として、保健師業務の開始時と終了時に業務内容を報告し、同時に、従業員との面談に関する業務の進捗状況を都度報告することにしました。


これらの活動は松本保健師が独断で取り組んだものではなく「限られた訪問時間のうち何を優先すべきか」ということを企業の担当者と話し合い、一つずつ進めたもの 。

つまり、保健師の活動ではなく、保健師を活用し、企業が産業保健活動を行っていると感じるよう働きかけたのです。 

都度報告することで、保健師が何をしているかの理解が進んだり、面談の効果を実感してもうことで、企業からは徐々に産業保健師の存在を認知してもらえるようになったといいます。


健康診断の「事後措置フロー」を提案

松本保健師が次に取り組んだのは「保健指導を通じて、具体的にどんな課題を解決したいのか」というニーズを企業へ事前にヒアリングしたこと。

企業が何となく考えている健康課題が明確になると、その解決に向かい、産業保健チームが活性化していくと考えたからです。

また、ニーズを把握した後は健康診断の「事後措置フロー」を作成し、健診後の流れと各担当者の役割を提案。担当者それぞれに役割意識を持ってもらうことで、産業保健体制の再構築を目指したのです。

また、産業医とのコミュニケーションにも工夫し、健康診断の事後措置に携わってもらえるように働きかけました。

各企業からヒアリングしたニーズと、各担当者・産業保健師が取り組んだ活動内容は次のようになっています。


●企業4社における事前ニーズと産業保健師の活動内容



A社
B社
C社
D社
事前
ニーズ

健診後保健指導の数をこなしてほしい。
健診後保健指導してほしい。
面談してほしい(健診やメンタル、女性社員面談)
保健師に何してもらえばいいかわからない。提案してほしい
保健師実施
健診事後措置体制づくり/健診スクリーニング/受診勧奨ヘルプ/保健指導
健診事後措置体制づくり/健診スクリーニング/受診勧奨ヘルプ/メンタル相談/保健指導
健診事後措置体制づくり/受診勧奨ヘルプ/メンタル相談/保健指導
健診事後措置体制づくり/昨年度健診保健指導/管理職面談/メンタル相談
担当者実施
健診スクリーニング/受診勧奨全社員へ周知/面談設定
受診勧奨メール送信/全社員へ周知/面談設定
健診スクリーニング/受診勧奨/全社員へ周知/面談設定
面談設定/健診データ準備/全社員へ周知/面談設定


産業保健師として訪問先の企業で実感している課題と効果

産業保健体制の再構築はまだ道半ばの企業もあり、課題を感じる部分もあると松本保健師は言います。

例えば、企業によっては活動が属人的となっていることや、社員の協力がまだ足りないといったケースもありました。

しかし、現在もさまざまな課題を解決するべく産業保健師の業務に注力しており、訪問を重ねる中で、これらの課題も改善に向かっています。

それと同時に、産業保健の分野に興味・関心をもってくれる担当者は増えており「今後はメンタルヘルス不調対策も効果のある活動に変えていきたい」という意見や、次年度の産業保健に関する予算を増額することを検討する企業も現れてきました。

こうした企業からのコメントから、産業保健活動が意義あるものに変化しているという手応えを実感しつつ、産業保健師としての今後の活動について意欲を語り、報告会は幕を閉じました。

株式会社エムステージでは、産業保健師のご紹介を行っています。

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松本萌佳

松本萌佳

大学病院等での看護師を経て、法人向け産業保健サービスを提供するエムステージに入社。産業保健師として、複数企業にて従業員の健康管理、予防医療に携わっている。

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