〈産業医コラム〉コロナ禍で遅れるがんの発見、検診は受けましょう

解説:升田茉莉子 先生(産業医)

がんと診断されたら仕事はどうするーがん治療と仕事の両立支援―


さわやかな秋風が気持ちの良い季節がやってまいりましたね。

今回は著者が力を入れているがん治療と仕事の両立支援に関してのお話です。

自分ががんになるなんて縁起でもないので考えたくもないかもしれません。しかし生涯で日本人の二人に一人がなる病気です。自分が、家族が、同僚が診断されたらと少し考えてみませんか。


コロナ禍でがん発見が遅れています

著者プロフィール  升田茉莉子
医学博士 産業医 労働衛生コンサルタント 麻酔科専門医 
がん治療と仕事の両立支援、医師の働き方改革を研究テーマとしている。
大学卒業後麻酔科としてのキャリアを積みながらNTT東日本で専属産業医としての経験も積む。
現在がん研有明病院で臨床医として働きながら産業衛生の現場でも嘱託産業医として働きつつ研究にいそしんでいる。企業規模が小さい企業でも治療と仕事の両立ができる世の中になることが夢。


実はがんと診断された外来患者のうち41.5%が「自覚症状がなかった」と回答しています。自覚症状がないのに受診した理由は「健康診断や人間ドックで(詳しい検査を受けるよう)指摘された」が最多です。※1

日本のがん治療は、検診などの定期的な検査ではっきりした自覚症状がまだ現れない早期のがんを発見することで、治癒率や生存率を引き上げてきました。

コロナにより検査を受けない人が増えれば、より進行した状態になるまで発見できないがんが増え、比例して重症化や治療が難しい人も増えてしまいます。(がん研有明病院院長佐野より)※2

現在検診機関、医療機関はきちんとした感染対策をとって診察しています。昨年は手控えた人も今年はきちんと健康診断、がん検診を受けましょう。


がんの診断はある日突然 落ち着くまで重要な決断はしないこと

先ほども述べましたが診断をうける人のうち4割は自覚症状がありません。

自覚症状がなく受診しがんを告知されると強いショックを受け、頭が真っ白になり、医師が何を言ったか全く覚えていないとか、やはり聞きたくなかったとか、こころは大きく動揺します。大事なことはここで大きな決断はしないこと

著者も乳がんの検診のエコーで引っかかったことがあるのですがその時の動揺は想像以上のものがありました。

がん専門病院に勤める医師であり一定の正しい知識をもっているはずなのに自分が死ぬこと、残していく子供のことまで想像してしまい、追加で受けた詳細な検査の結果がでるまでそれこそ生きた心地がしない日々を送りました。

がんと診断を受けて退職・廃業した人は就労者の19.8%、そのうち、初回治療までに退職・廃業した人は56.8%つまり約11%の人が治療を始める前に仕事を辞めてしまっているのです。

動揺する心情は自身の体験も踏まえよくわかりますが繰り返しになりますが大きな決断は心がある程度落ち着き検査結果がでそろって主治医の治療方針が固まるまでしないことです。


会社で誰にどこまで報告するか

がんと診断され会社で誰にどこまで報告しようか悩む方も多いのではないでしょうか。

がんと一括りにいってもがんの種類、ステージにより治療方法は様々です。

例えば内視鏡でがんを取り除き治療終了の人もいれば化学療法、手術、放射線治療と長くかかる治療が必要になる人もいます。

すぐ終わる治療で済む人は有休消化などで十分対応できる場合も多いですが長くかかる人は会社と情報を共有したほうが働きやすい環境が得られると私は考えております。

がんと報告すると働き辛くなるではと色々考えてしまうかと思いますが、知ってもらうことで、自分も職場も助かることは多いと思います。会社が最も知りたい治療期間の見込みや、治療に伴う副作用それが続く期間を適切に職場に伝えましょう。

とはいえ患者さん本人も初めてのことなのに治療の計画を主治医から聞き、そこから自分の体の状態がこれからどうなるか把握し、人に説明するのは難しいです。是非全国の「がん診療連携拠点病院」に併設されている相談支援センターなどで相談してみてください。

相談支援センターでは、がんの診断および治療方針の説明を受ける際に、主治医に確認することを、患者さんと一緒に整理するお手伝いをしてくれます。そして国もがん治療と仕事の両立をサポートする制度を保険適応で用意しています。


保険診療で主治医意見書(診断書)をかいてもらい会社に適切な情報を伝えよう

がん患者さんが適切な配慮を受けながら仕事を続けるには情報が正しい範囲で共有されることが大事です。

患者さんが職場で産業医などの産業衛生スタッフや衛生管理者と勤務情報提供書(職場での仕事の内容、勤務時間、職場で利用できる制度などを記入します)を作成し病院に出すと主治医が就労に関する主治医意見書(診断書)を書き職場、本人が必要なとしている情報、今後のみこみや必要な配慮とその期間を入れた書類を作成してくれます。

これらは保険適応で作成されるので職場から復帰時診断書を求められた際こちらを利用したほうが本人負担は小さくなります。ぜひこうした制度も利用し、治療を続けながら働くことをあきらめないで欲しいと切に願います。

※1(平成23年受療行動調査(確定数)の概況(厚生労働省)

※2 がん研有明病院佐野院長の言葉よりhttps://medical.jiji.com/topics/195

※文章出典:株式会社イーウェル「健康コラム」より寄稿

升田茉莉子

升田茉莉子

医学博士 産業医 労働衛生コンサルタント 麻酔科専門医  がん治療と仕事の両立支援、医師の働き方改革を研究テーマとしている。大学卒業後麻酔科としてのキャリアを積みながらNTT東日本で専属産業医としての経験も積む。現在がん研有明病院で臨床医として働きながら産業衛生の現場でも嘱託産業医として働きつつ研究にいそしんでいる。企業規模が小さい企業でも治療と仕事の両立ができる世の中になることが夢。

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