専属産業医から「辞めたい」と言われたら、どうすればいい?

専属産業医から辞任の意向を示されたらどうしますか?

従業員1000人を超えた事業場(特定の有害な業務の場合は500人)は、専属産業医を選任する義務があります。また、産業医を解任したら、14日以内に次の産業医を選任しなければなりません

後任の専属産業医をスムーズに探すためにはどうすればいいのでしょうか。また、産業医交代に伴う必要な手続きは何でしょうか。確認しましょう。

目次[非表示]

  1. 1.一定規模以上の事業場は、専属産業医の選任が義務付けられている
  2. 2.産業医の辞任から14日以内に後任を選任しなければならない
  3. 3.専属産業医の採用力を高めるには、待遇とサポート体制がかぎ


一定規模以上の事業場は、専属産業医の選任が義務付けられている

労働安全衛生法で、従業員50人以上の事業場は、産業医を選任することが義務付けられています。

従業員が999人以下の事業場は、月1回程度訪問する非常勤の嘱託産業医で問題ありませんが、従業員1000人以上の場合は、専属産業医を選任しなければなりません。また、特定の有害業務の場合は、従業員500人以上から専属産業医の選任が必要です。


専属産業医は常勤で、週4日程度事業場で勤務することが一般的です。

専属産業医の選任が義務付けられている事業場で、現在専属産業医を選任していても安心はできません。専属産業医から、辞任を申し出られることは珍しくないからです。


専属産業医が自ら辞任する主な理由としては、以下のものが考えられます。

・自身の高齢化のため

・年俸などの待遇に不満を持っているため

・サポート体制が十分でなく、業務がハードなため

産業医が不満を抱いている点がわかれば、待遇やサポート体制などの交渉をして、引き留めることができるかもしれませんが、それが難しい場合はほかの専属産業医を選任することになります。


産業医の辞任から14日以内に後任を選任しなければならない

産業医を交代するためにはどのような手続きが必要なのでしょうか。

労働安全衛生規則には「事業者は、産業医が辞任したとき、または産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨およびその理由を衛生委員会、または安全衛生委員会に報告しなければならない」とあります。「遅滞なく」とは、おおむね1カ月以内を指します。

このルールは、産業医の身分の安定性を担保し、その職務の遂行の独立性・中立性を高める観点から定められています。

また、厚生労働省労働基準局長の通達では「産業医の辞任または解任の理由が産業医自身の健康上の問題であるなど、産業医にとって機微な内容のものである場合には、産業医の意向を確認した上で、『一身上の都合により』、『契約期間満了により』などと報告しても差し支えない」としています。


辞任や解任などで産業医に欠員が出た場合は、14日以内に次の産業医を選任する必要があります。さらに、選任後おおむね1カ月以内に所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。


専属産業医の採用力を高めるには、待遇とサポート体制がかぎ

専属産業医の辞任が決まったら、任期終了時期まで余裕がある場合でも、早めに次の産業医を探しましょう。非常勤の嘱託産業医と比べて、常勤となる専属産業医の採用に苦労する事業場は少なくありません。


産業医を探す方法としては、

・医師人材紹介会社に産業医の紹介を依頼する

・地域の医師会に相談する

・健康診断を実施している健診機関に紹介を依頼する

・社員の人脈で探す

などが考えられます。


日本の産業医の多くは嘱託産業医で、専属産業医として働く医師は限られていますので、産業医側の売り手市場だと考えていいでしょう。

当然のことですが、よりよい条件を提示する事業場ほど、産業医の採用力は高まります。


専属産業医の年俸は、年間1000万~1500万円が相場です。採用がうまくいかない場合は、提示する待遇を見直すことが必要かもしれません。

ただ、社内の給与規定などで、待遇の変更が難しい場合もあるでしょう。待遇以外にアピールポイントとなるのは、産業医に対するサポート体制です。


専属産業医が選任される事業場は従業員規模が大きいため、面談やストレスチェックの対応など産業医の業務量が多くなります。

業務過多になることを懸念する産業医側が、選任の条件として企業によく確認するのは、産業医以外の産業保健スタッフの有無です。

具体的には、産業医の活動をサポートする保健師や産業保健関係の事務を補助するクラークの配置や充実を求められます。


専属産業医のスムーズな交代のためには、早めの準備が必要です。

今の職場は、産業医が安心して業務に取り組める環境でしょうか。交代を機会に、企業の産業保健体制を顧みてみましょう。


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