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従業員エンゲージメントが高い企業の取組とは?組織を活性化させる事例を紹介

働き方改革や少子高齢化の影響を受け、企業は雇用環境の変化への対応と労働力不足が課題となっています。競争力を維持するためには、優秀な人材の確保と定着が不可欠です。

そのために重要なのが、企業への貢献意欲やチーム意識を表す「従業員エンゲージメント」です。従業員が自社に対して愛着を感じ、意欲的に仕事に取り組める組織づくりが求められています。

しかし、従業員エンゲージメントが大切だと認識しながらも、何から取り組めばよいか分からない人事担当者の方も多いでしょう。本記事では、従業員エンゲージメントを高める施策について、実際の企業事例を踏まえて解説します。

従業員エンゲージメントとは?

従業員エンゲージメントとは

従業員エンゲージメントとは、企業に貢献しようとする従業員の意欲や自発的な行動を指す言葉です。「組織の役に立ちたい」という意欲であり、企業と従業員の愛着の強さを表します。

ギャラップ社の調査によると、日本の「仕事に対して意欲的かつ積極的に取り組む人」の割合は約6%で、世界平均の23%を大きく下回る最低水準です。日本の企業では、やりがいをもって意欲的に働く従業員の割合が少なく、従業員エンゲージメント向上の必要性が叫ばれています。

従業員エンゲージメントについて、3つの構成要素や似ている用語について解説します。

参考:Global Indicator: Employee Engagement│Gallup

従業員エンゲージメントを構成する3つの要素

従業員エンゲージメントは、以下の3つの要素から構成されます。

  • 企業理念の理解と共通
  • 帰属意識
  • 行動意欲

企業理念の理解と共感

企業が掲げる理念やビジョンを従業員が「理解」し、自分の職務や役割に具体的な形で落とし込めている状態です。また、理解した理念に「共感」し、企業と従業員の方向性が一致していることも含みます。

帰属意識

帰属意識とは、従業員自身が企業の一員だという自覚を指します。ただ所属しているだけではなく、企業全体のミッション達成を自分ごととして捉え、チーム一体となって業務に取り組めている状態です。

行動意欲

企業の目標達成のため、求められる以上のパフォーマンスを行う意欲がある状態を指します。従業員の仕事ぶりに対するフィードバックを密に行い、「組織から必要とされている」と認識してもらうことが重要です。

従業員エンゲージメントと似ている用語

従業員エンゲージメントと似ている言葉として、ワークエンゲージメントや従業員満足度があります。それぞれの違いについて説明します。

ワークエンゲージメントとの違い

ワークエンゲージメントとは、従業員の仕事に対するポジティブな心理状態を表す言葉です。仕事に対するポジティブな態度であり、従業員エンゲージメントのように組織に貢献したい欲求や愛着は必ずしも含まれません。

いずれも積極的に仕事に取り組んでいる態度を表すため、表面上は同じに見えるかもしれませんが、行動の動機が異なります。

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従業員満足度との違い

従業員満足度とは、従業員の労働環境や給与条件、対人関係、仕事内容などへの満足度を指します。従業員エンゲージメントとの違いは、主体性や自発的な貢献意欲です。

例えば、「給与条件がよいため満足しているが、組織に貢献したいほどではない」という状態は、従業員満足度は高いものの、従業員エンゲージメントは高くないと言えるでしょう。

従業員エンゲージメントは、単なる満足度ではなく、自発的な意欲や行動を含めた概念であることが特徴です。

従業員エンゲージメントを企業にもたらす2つのメリット

従業員エンゲージメントを高めることで、業績アップやコスト削減といった2つのメリットがあります。

従業員のパフォーマンス向上と利益率アップ

上場企業66社を対象とした調査では、従業員エンゲージメントの向上が労働生産性や営業利益率にプラスの影響がある可能性が示されました。従業員エンゲージメントを高めることで、パフォーマンスの向上や利益率の改善にも影響するといえるでしょう。

参考:「エンゲージメントと企業業績」に関する研究結果を公開│株式会社リンクアンドモチベーション

離職率の低下による人材面のコスト削減

従業員エンゲージメントが高い組織は、自社でより質の高い仕事をしたいという意欲が高い従業員が多くなるため、離職率の低下につながるでしょう。優秀な人材の流出の防止や採用コストの削減が期待できます。

従業員エンゲージメントが高い企業の特徴5選

従業員エンゲージメントが企業にもたらす2つのメリット

従業員エンゲージメントが高い企業の特徴として、以下の5つが挙げられます。

  • 企業ビジョンが従業員に浸透している
  • 公正な評価制度により従業員の納得感が高い

  • ワークライフバランスを重視している

  • 従業員の適性に応じた職務を割り当てている

  • 管理職の教育・研修体制が充実している

1.企業ビジョンが従業員に浸透している

企業ビジョンが従業員に浸透しており、共感が得られている状態です。企業と従業員の方向性が一致しているため、どのような行動を取ればよいかを従業員が主体的に判断できます。

また、自分の業務が企業のためにどう役立つのかを理解できるため、やりがいを持って仕事に取り組めるでしょう。

2.公正な評価制度により従業員の納得感が高い

従業員が納得できる公正な評価制度があることで、「組織に貢献した分だけ評価してくれる」という信頼感が醸成されます。
従業員の行動意欲を高めるためにも、曖昧な評価制度ではなく、明確に評価基準を設けることが重要です。また、上司から適切なフィードバックを受けることで、モチベーション高く業務に取り組めるでしょう。

3.ワークライフバランスを重視している

ワークライフバランスを重視した働きやすい職場環境では、心身の健康を維持しやすく、仕事へのモチベーションが高まりやすいでしょう。具体的には、リモートワークや休暇制度など、仕事とプライベートを両立しやすい仕組みが必要です。

4.従業員の適性に応じた職務を割り当てている

適性がない職務や望まない役職についていると、納得して仕事に取り組めず、従業員エンゲージメントが低下しやすいでしょう。従業員が自分の適性を生かして仕事ができると、意欲的に取り組めるようになります。

5.管理職の教育・研修体制が充実している

管理職の関わりは、従業員エンゲージメントに大きく影響します。例えば、管理職と部下のコミュニケーションが希薄だと、部下の意見が反映されにくくなり、やりがいを持てなくなるでしょう。

管理職には従業員のモチベーションを高める声かけやフラットに話せる関係づくりなど、コミュニケーション能力が求められます。そのため、コミュニケーション能力を高める研修体制が充実していることが重要です。

従業員エンゲージメントを高める6つの施策

従業員エンゲージメントを高める施策として、次の6つが挙げられます。

  • エンゲージメントスコアの測定
  • 企業ビジョンの共有と行動化
  • 感謝を伝え合う文化の醸成
  • 公平感のある人事評価制度の整備
  • 風通しのよい組織の構築
  • 1on1で従業員の動機付けを支援

1.エンゲージメントスコアの測定

従業員エンゲージメントを高めるには、数値化して客観的指標で把握することが大切です。数値として把握することで、現在の従業員の意識や組織への態度が明確化され、課題が見えてくるでしょう。

客観的な指標として代表的なのはエンゲージメントスコアです。測定した結果は部署単位で分析し、スコアが低下している部署があれば、課題を抽出し改善に役立てられます。

2.企業ビジョンの共有と行動化

従業員エンゲージメントの向上には、企業ビジョンへの理解と共感が重要です。ビジョンを共有して終わりではなく、具体的な行動指針に落とし込み、日々の業務と関連付けるように浸透させていきましょう。

例えば、「革新的な技術で人々の生活を豊かにする」というビジョンを持つ企業の例を考えてみます。商品開発職であれば、他の企業との協力開発の推進やメンバーの意見を否定せず話し合う場の設定など、イノベーションを産み出すための具体的な行動が求められるでしょう。

企業ビジョンに沿った具体的行動を部署や職種単位で共有することで、行動につながりやすくなります。従業員エンゲージメントが向上し、組織と従業員が同じ意識を持って行動できるようになるでしょう。

3.感謝や称賛を伝え合う文化の醸成

従業員同士が「ありがとう」などの感謝や称賛を伝え合うことで心理的安全性が高まり、チャレンジしやすい環境が生まれます。互いにポジティブな声をかけあうことで「チームの一員として貢献できている」という感覚が生まれ、帰属意欲が高まるでしょう。

サンクスカードなどの制度を導入し、社内に感謝や称賛を伝え合う文化を構築していくことが大切です。

4.公平感のある人事評価制度の整備

従業員が納得できる人事評価制度を実施することで、企業への貢献意欲を高められます。成果を重視しすぎると、評価に不満を抱く従業員が生じてしまうでしょう。また、従業員が失敗を恐れて自発性が損なわれる可能性もあります。

成果に至るプロセスや企業ビジョンの浸透度などを含め、多面的に評価する仕組みがあると従業員は評価に納得しやすくなるでしょう。失敗を恐れず挑戦もしやすくなり、従業員の自発的な行動を促進できるため、企業の成長にもつながります。

5.風通しのよい組織の構築

組織全体の風通しがよく、コミュニケーションが活発であることも、従業員エンゲージメントの向上には重要です。従業員の意見が経営層に届き、事業方針に反映されると「意見を聞いてもらえる」「貢献できている」という信頼感の形成につながります。

そのためには、従業員と経営層が積極的にコミュニケーションを取れる仕組みが重要です。ミーティングやプレゼンの機会を設けるなど、従業員の意見を吸い上げる場があればよいでしょう。

しかし、風通しのよい文化が醸成されるためには、従業員が安心して意見を言い合える心理的安全性の向上が不可欠です。心理的安全性の高い職場づくりのポイントについては、以下の関連記事も参考にしてみてください。


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6.1on1で従業員の動機付けを支援

従業員個人への関わりを密にすることで、組織から大切にしてもらえていると感じ、愛着が生まれやすくなります。管理職と部下が1on1を行い、従業員が適切な目標を持って取り組めるよう、動機付けを支援する関わりが必要です。

終身雇用制が一般的でなくなった現代では、従業員のキャリアプランは多様化しています。そのため、仕事のやりがいがどこにあるかは、従業員によって異なるでしょう。

1on1を実施することで、従業員の仕事へのニーズや展望を把握し、個人に合わせた支援を行えます。従業員は「この企業では成長できる」という実感を持ちやすくなり、組織への帰属意識が高まるでしょう。

エンゲージメント向上に取り組む企業の事例

エンゲージメント向上に取り組む企業の事例

エンゲージメント向上に取り組む企業の事例を3つ紹介します。

株式会社小松製作所

小松製作所は、従業員の自律的なキャリア形成を促す制度や、公平な人事評価を徹底し、エンゲージメント向上に取り組んでいます。

従業員のキャリア支援のため、資格取得の奨励や社内公募制度、留学制度など、自律的なキャリア形成を支援しています。また、従業員の技能を競う「オールコマツ技能競技大会」を毎年開催し、相互研鑽へのモチベーションを高める施策が特徴的です。

また、人事評価を公平に行うため、管理職と一般社員を対象に評価者訓練を実施しています。労働組合と共同で、事業所単位で評価委員会を開催し、複数人での多面評価や相対評価を重視するなど、徹底した公平評価を行っています。

参考:多様な能力開発機会の提供とエンゲージメントの向上 | 人と共に | 環境・社会活動(CSR)|小松製作所

株式会社サイバーエージェント

サイバーエージェントでは、企業ビジョン重視の人材採用や挑戦しやすい組織づくりから、エンゲージメント向上をはかっています。

人材採用においては、企業のビジョンやミッションに共感できる人材を重視した採用計画を推進しています。

また、同社が組織づくりとして重視しているのが、「失敗してもセカンドチャンスがある」という風土です。従業員が安心して挑戦できる風土を重視しており、若手従業員が役員に抜擢されるケースもあります。

さらに、同社独自のエンゲージメントサーベイツール「GEPPO」では、天気になぞらえて現在の自分の状態を5段階で評価を行っています。「GEPPO」に変更する前は、毎回20問ほどの設問に回答しなければいけなかったところ、毎月3問の簡単なアンケートになったことで、回答率が高く定着しています。
天気の大幅な変化のある従業員には担当部署が声かけを行い、必要があれば人事部から改善や異動を提案する仕組みとなっています。

参考:ワークエンゲージメント向上取組事例(株式会社サイバーエージェント)│働き方・休み方改善ポータルサイト

株式会社福井

株式会社福井は、大阪府にある刃物の製造と卸売業を中心とする企業です。社内コミュニケーションの改善を目的にエンゲージメント向上への取組を始めました。

具体的には、エンゲージメントサーベイ活用による課題の把握と1on1の実施という2つの施策を実施。エンゲージメントサーベイの活用により「暑い、寒い、忙しい」というエンゲージメント低下の要因を把握し、設備投資や休暇制度、出張時の前泊許可などで対応しました。

1on1については、漫然としたミーティングにならないよう、社員に話してもらうことを重視。「デスクでできない話をする」「社員のための時間」「腹を割って話す」を原則として、社長が全社員を対象として実施しました。

取組の結果、従業員同士のコミュニケーションが増え、失敗を奨励する文化も醸成されつつあります。また、社長と管理職の一体感が高まり、管理職が当事者意識を持って部署を自律的に管理できるように変化しています。

参考:ワークエンゲージメント向上取組事例(株式会社福井)│働き方・休み方改善ポータルサイト

従業員エンゲージメントの向上には心身の健康管理が必要

従業員エンゲージメントの向上には、企業理念の浸透や従業員の安心と成長を支える組織づくりが大切です。従業員が組織の中での役割を認識し、貢献意欲を高めることで、生産性の向上につながります。

しかし、従業員一人ひとりが組織の中でエネルギーを発揮するためには、心身の健康を維持することも重要です。組織のために貢献しすぎた結果、健康障害が生じていては人材の損失につながるでしょう。

産業医や保健師などの専門職と連携しながら、従業員の心身の健康をチェックできる体制も整えておく必要があります。ストレスチェックや健康診断結果、エンゲージメントサーベイを活用し、従業員個人の健康状態を把握しましょう。

株式会社エムステージが提供する健康管理システム『HealthCore』は、個人と組織の「ココロとカラダ」の健康状態を見える化。ストレスチェックの『Co-Labo』と、エンゲージメントサーベイの『Qraft』を標準装備しており、従業員の健康情報を1つのシステムで一元管理ができます。

資料ダウンロードは無料ですので、ぜひお気軽にお役立てください。

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サンポナビ編集部

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企業の産業保健を応援する『サンポナビ』編集部です。産業医サポートサービスを提供している株式会社エムステージが運営しています。 産業医をお探しの企業様、ストレスチェック後の高ストレス者面接でお困りの企業様は、ぜひお問い合わせボタンからご相談ください。

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