復職面談で押さえるべきポイントとは?目的や重要な理由、確認事項について解説!
復職後の従業員が、健康的に業務を遂行するためにも復職面談は重要です。また訴訟のリスクを避けるためにも、安易に退職扱いにすることを避ける必要もあります。
復職面談を実施して主治医や産業医の意見を取り入れた上で、適切な復職判断を下すようにしましょう。
本記事では復職面談の目的や重要な理由、復職判断のポイントなどについて解説するので、参考にしてください。
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復職面談の目的
復職面談は、従業員の復職の可否を判断したり、復職後の仕事上の制限事項について検討したりするために行われます。
復職可否の判断
復職面談では、産業医が従業員の主治医が出した診断書や上司の意見をもとに、復職できるかどうかを判断します。
産業医は事業場の業務内容や職場環境も把握しているため、従業員が職場復帰した場合に業務を遂行できるかどうかを実情に基づいて判断できます。
復職後の制限事項や配慮についての検討
復職面談では、職場復帰した従業員の働く時間や負担を軽減するための配慮についても話し合われます。
復職して間もない従業員は、出勤時間や業務内容を調整することが一般的です。
復職してすぐは体力を消耗していたり、働くことに慣れていなかったりします。そのため、はじめは働く時間を調整しながら、従業員の体力に合わせて徐々に慣らしていく必要があるのです。
また職場復帰した従業員への負担が大きくなり過ぎないように、業務内容や職場環境への配慮も欠かせません。
復職面談が重要な理由
安易な復職や退職の判断によって、過去には法廷闘争にまで発展したケースも存在します。
復職面談は、復職後のトラブルを避けるためにも欠かせない取り組みです。具体的なトラブルについて解説します。
復職判断がトラブルにつながった事例
復職判断がトラブルにつながった事例として次の2つを解説します。
復職後の従業員の自死により企業が訴えられた事例
- 退職扱いに不服な従業員が損害賠償を求めた事例
復職面談の重要性を理解するためにも、具体的なトラブルの内容について確認しましょう。
復職後の従業員の自死により企業が訴えられた事例
平成27年に復職後の従業員が自死したことで、その従業員の遺族が損害賠償を請求した事案が発生しました。
本件は通称「市川エフエム放送事件」と呼ばれ、自死した従業員が勤めていた会社に約3,000万円の支払いが命じられました。
復職した従業員が自死した原因は、職場復帰後に多忙であることによる疲れや、人間関係についての悩みにあります。
職場の人間関係が悪くなっているのは、自分に責任があると考えるようになり、その責任をとるために自死を選んだと考えられています。
会社の代表が主治医の意見を聴かずに、独断で従業員の職場復帰や業務内容を決めたことについて、従業員への配慮に欠けていたとされました。
そのため、従業員の自死という結果を招いたことは安全配慮義務違反にあたるという判断が下されたのです。
判例のポイントとして、医師の助言を受けた上で、従業員の治療状況を確認したり、人間関係を調整したりする必要があったことが挙げられています。
参考:労災判例|産労総合研究所
退職扱いに不服な従業員が損害賠償を求めた事例
試し出勤中の従業員に対する退職扱いが、無効と判断された事案があります。
本件は、雇用主の企業が従業員に解雇通知書を出したことに従業員が疑義を申し出たことが発端です。雇用主が解雇通知書を出した理由は、試し出勤中に業務を遂行できるくらいに不調が回復できなかったと判断したからです。
しかし判決では雇用主側の主張は妥当性に欠けると判断され、退職扱いにしたことが無効となりました。
その理由は、試し出勤中の状況だけで回復できないと判断するのではなく、将来的な回復の見込みまで考慮して職務の遂行能力を判断する必要があるとされたからです。
さらに、休職の原因となった精神的不調の状況、回復の程度および回復の可能性については、医学的な見地から検討することが重要であると指摘されています。
つまり本件でわかったことは、復職の過程にある従業員の退職を判断する場合は、まずは主治医の診断を必ず確認する必要があることです。さらに、主治医の判断に疑義がある場合は産業医の意見を聴くことも大切です。
復職面談で押さえるべきポイント
復職面談で押さえるべきポイントは次のとおりです。
- 就業規則を確認する
- 企業に求められる配慮を理解する
- 主治医の診断書を確認する
- 産業医の意見を聞く
各ポイントについて解説します。
就業規則を確認する
就業規則を確認して、休職期間が残っているのかどうかを把握しましょう。
面談で復職が難しいと判断された際に休職期間が残っている場合は、休職期間の満了日まで休職を認める必要があります。
一方で休職期間が残っていない場合は、退職や解雇などを行うことになります。ただし、主治医の診断書で復職が可能と判断されている場合は、企業の判断で復職を拒否できないため注意しましょう。
この場合は、復職希望者が就業できるように配慮して、復職させることを検討する必要があります。
企業に求められる配慮を理解する
「企業側で配慮があれば復職可能」と主治医が判断している場合は、配慮の内容について詳しく確認しましょう。
たとえば、次の事項を確認するようにしましょう。
「どのような配慮が必要なのか?」
「どれくらいの期間配慮する必要があるのか?」
従業員への配慮を欠いた状態で復職させ、職務により不調が悪化した場合は、安全配慮義務違反となるため注意が必要です。
主治医の診断書を確認する
主治医の診断書は、復職面談の実施を判断する前に確認することが大切です。
主治医の診断書に復職判定が記載されていない場合は、従業員から復職希望があったとしても面談の実施には慎重になる必要があります。
また主治医の診断書で復職可能と判断されている場合も、それが会社の業務内容を理解して判断されたものであるかどうかを確認することが大切です。
主治医の診断書に疑問がある場合は、休職者と労務担当者が一緒に主治医を訪問して、診断書の内容について直接確認しましょう。
可能であれば産業医にも、意見を求めるとよいでしょう。
産業医の意見を聞く
産業医は主治医よりも会社の業務内容を詳しく把握しています。そのため、主治医の復職判断に疑義がある場合は、産業医の意見を聴くのも有効です。
必要に応じて、従業員の同意を得た上で、主治医の診断書の疑問点について産業医に直接尋ねてもらいましょう。
主治医よりも産業医の意見が合理的と認められた出来事として、次の事案を紹介します。
主治医よりも産業医の意見が合理的と認められた事例
主治医よりも産業医の意見が合理的とされ、雇用主側が判断した退職扱いの有効性が認められた事案があります。
本件は、雇用主が従業員の欠勤開始後1年4カ月後に休職命令を発し、休職期間満了の1年後に退職扱いにしたことが発端です。
休職中の従業員が雇用主に対して、退職扱いは違法であるとして訴えを起こしました。
裁判では従業員側の訴えが退けられ、雇用主側が判断した退職扱いが有効と判断されたのです。その理由として、主治医の復職判断よりも産業医の意見が優先されたことが決め手の1つとなりました。
次の理由により、主治医の診断よりも産業医の意見が優先され、退職扱いが不当とする従業員側の訴えは退けられました。
- 産業医は、主治医よりも従業員と会社のやり取りの内容を理解していた
- 不可解な理由により従業員が診療情報の提供を拒否したため、従業員の病状が回復していないとする産業医の意見は説得力があると判断された
- 従業員が休職期間の満了時以降も抗不安薬などを服用していた
以上により、産業医の意見が合理的であると認められ、雇用主側の主張通りに退職が有効と判断されたのです。
参考:LIBRA|東京弁護士会
復職面談での確認事項
復職面談で確認する内容として次の事項が考えられます。
- 通勤の可否
- 就業の意欲
- 職場への適応の可否
- 心身の状態
- 生活リズム
それぞれについて解説します。
通勤の可否
まずは通勤が問題なくできて、職場までたどり着けるかどうかを確認することが大切です。
精神疾患を患っていた場合は、通勤途中の人混みや満員電車でパニック障害などを起こして通勤が難しいこともありえます。
また服用中の薬によっては、車やバイクでの通勤が難しいケースも想定されるでしょう。従業員が自家用車などで出勤する場合は、運転の可否について主治医に確認しましょう。
就業の意欲
就業意欲のない従業員を無理に就業させると、精神不調の再燃や疾患の再発につながるため、事前に就業意欲の有無を確認しましょう。
その際に、経済的な面や周囲からのプレッシャーなどによる焦りから、無理に就業をしようとしていないか確認することも大切です。
就業意欲がないにもかかわらず無理に職場復帰すると、メンタルヘルス不調が悪化する恐れがあります。
焦らずに休職を続けるように伝え、意欲が湧いてから職場復帰させるようにしましょう。
職場への適応の可否
復職をした従業員が職場に適応できるように、職場環境が整っているか確認するようにしましょう。
職場の状況を把握している産業医の意見を参考にして、必要であれば配置転換などの処置を検討することも大切です。
心身の状態
休職者の病気やケガ、心身の不調について状況を把握するために、次の点を確認しましょう。
- 回復の程度
- 治療内容
- 服用中の内服薬
- 通院状況
- 症状が出やすい環境
- 仕事への不安
- 産業医がいる場合は、以上の内容について専門的な意見を求めるとよいでしょう。
生活リズム
生活リズムを確認する理由は、復職後に始業時間に合わせて起床して出勤できるかどうかを判断するためです。
就業時間内に問題なく業務を遂行するためにも、生活リズムが整っていることは重要です。生活記録表を休職者につけてもらうなどして、休職者の生活状況を確認して復職判定を実施しましょう。
適切な復職面談で従業員とのトラブルを防ごう
復職後のトラブルを防いだり、メンタルヘルス不調が再燃するリスクを抑えたりするためにも、復職面談を適切に行うことが重要です。
経営者や労務管理者の独断で復職を判断せずに、主治医や産業医の意見をもとに復職判断を下すようにしましょう。
復職面談で適切な判断を下すためには、産業医にも参加してもらい、専門的な意見を聴くことをおすすめします。
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