メンタルヘルス不調対策に重要な「睡眠」の質を高めるには?
IT技術の発達やリモートワークの普及など、現代の働く人は昼夜を問わず仕事に追われるような場面も増え、いわゆる”眠れない社会”の到来が話題になりました。
睡眠は身体的な疲労の回復だけでなく、メンタルヘルス不調の予防においてもとても重要なものとされています。本記事では、睡眠の基礎的な知識と快適な睡眠をとるためのポイントを紹介しています。
目次[非表示]
- 1.睡眠の質・役割・種類の基礎知識
- 1.1. 睡眠の「質」と「役割」について
- 1.2.睡眠の種類「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」
- 2.起床時間と睡眠時間の関連性
- 2.1.日本人は世界一眠っていない
- 2.2.睡眠ホルモン「メラトニン」について
- 3.良質な睡眠のための2つのポイント
- 3.1.良質な睡眠を実現するためのポイント①
- 3.2.良質な睡眠を実現するためのポイント②
睡眠の質・役割・種類の基礎知識
睡眠の「質」と「役割」について
厚生労働省の実施した「令和元年 国民健康・栄養調査」では、睡眠に関する調査を行っていますが、その結果から睡眠の「質」が低いことがわかりました。
同調査の睡眠に関する「質」の回答として最も多かったのが「日中、眠気を感じた」というものであり、男性の32.3%、女性の36.9%となっています。
また「夜間、睡眠途中に目が覚めて困った」という回答も多く、体調回復のための適切な睡眠がとれていない恐れがあります。
睡眠には休息・休養をはじめ、老化防止や疾病予防など様々な役割があるため、睡眠の質を高めることは、生活を送るうえで欠かせないものです。
▼睡眠の主な役割
- 脳を休息させ、判断能力や記憶力が向上する
- がんや動脈硬化、認知症の予防の役割があるといわれている
- 肌や骨の老化を防ぎ、傷・病気等の治癒力を促進する
- 免疫力が向上する 等
睡眠の種類「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」
睡眠には「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の2種類があるということは良く知られていますが、脳や身体の休息状態やリズムについても知っておきましょう。
睡眠の種類の一つ「ノンレム睡眠」はいわゆる”深い眠り”であり、脳が休息でき、リラックスしている状態といわれています。この深い眠りの状態の時には、成長ホルモンが分泌され、身体の修復が行われるといわれています。
もう一方の「レム睡眠」は”浅い眠り”の状態であり、夢を見ることが多いとされています。そして、レム睡眠中は身体が休めている状態であるともされています。
ノンレム睡眠とレム睡眠、この2種類の睡眠は交互に訪れ、そのリズムはおよそ90分のサイクルになっています。
また、起床後に眠気を感じず、すっきりと目覚めるためにはレム睡眠時に起きることがポイントとなっていることから、睡眠時間は90分の倍数でとることが良いといわれているのです。よって、6時間(360分)・7時間半(450分)睡眠が適していると考えられます。
そして、入眠にはメラトニンという睡眠ホルモンが深くかかわっています。メラトニンについては後述しますので、確認しておきましょう。
起床時間と睡眠時間の関連性
日本人は世界一眠っていない
OECD(経済協力開発機構)の調査「Gender Date Portal 2019」によると、アメリカの平均睡眠時間は8時間48分。それに対して、日本人の平均睡眠時間は7時間22分と、1時間以上も短いことが分かっています。
これは、OECDに加盟する30か国の中でも最下位の短さであり、睡眠によって十分に休養がとれていない人の割合についても、2009年以降は有意に増加していることが分かっているのです。
前述した厚生労働省の調査「令和元年 国民健康・栄養調査」では、日本人の1日の睡眠時間は6時間以上7時間未満の割合が最も高く、男性で32.7%。女性では36.2%となっています。
また、睡眠が6時間未満の方も多く、男性で37.5%、女性では40.6%の人が比較的短い睡眠時間ということが分かっています。
睡眠ホルモン「メラトニン」について
メラトニンは「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、自然な眠りを誘う作用があります。
起床から15~16時間ほど経過すると、脳の松果体と呼ばれる器官からメラトニンが分泌され、眠気が訪れます。
つまり、毎朝の7時頃に起床する人は、22時から23時頃に眠気がやってくるということになります。規則正しい睡眠習慣のためには、決まった時間に起きることが大切だということが分かるかと思います。
なお、太陽や照明などの光を浴びることは、メラトニンの分泌が抑制されてしまいます。これは、テレビやパソコン、スマートフォン等の画面から発せられる光を浴びることも同様です。
メラトニンが抑制されることは目が覚めることにもつながるため、就寝前のパソコン操作等には注意しましょう。
このように、メラトニンの分泌は起床時間や光を浴びることと関連しています。そのため、健康的で規則正しい生活リズムをつくるには、決まった時間に毎朝目覚めることから始めることができます。
良質な睡眠のための2つのポイント
良質な睡眠を実現するためのポイント①
厚生労働省は、良質な睡眠を実現するための要点や取組を「健康づくりのための睡眠指針」にて公表しています。
その中では、良質な睡眠が重要視されており、その理由として様々なものが上げられています。具体的には、体調の維持・改善や生活習慣病の予防、業務の面では生産性の向上や労働災害の防止といったものがあります。
また、睡眠とメンタルヘルスには深い関連性があると考えられていますので、メンタルヘルス不調対策としても欠かせないものになります。
良質な睡眠のためは、就寝前の行動に注意することが大切です。前述した「寝る前の光を避ける」ことのほか、コーヒーやエナジードリンク等でカフェインを摂取しないこと、アルコール類を飲まないことも重要です。
カフェインの作用は摂取した後3時間ほど持続するといわれています。また、成分による利尿作用は快適な睡眠の妨げとなるおそれがあります。
同指針では、睡眠に関する以下の内容が掲げられています。
▼健康づくりのための睡眠指針における「睡眠12箇条」
- 良い睡眠で、からだもこころも健康に。
- 適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
- 良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
- 睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
- 年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
- 良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
- 若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
- 勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
- 熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
- 眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
- いつもと違う睡眠には、要注意。
- 眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。
良質な睡眠を実現するためのポイント②
睡眠に適した環境づくりが良質な睡眠の実現につながります。
まずは寝具についてですが、ベッドや布団、枕などは自分の体形に合ったものを選びます。また、照明器具・カーテン等で静かさや明るさ・暗さを調整し、リラックスできる空間を構築していきましょう。
もし上手く眠れない時に無理に眠ろうと意気込むことは逆効果と言われています。適切な対応策としては、一度、床を離れることが良いとされています。そして、自然な眠気が訪れたら寝床に就くようにしましょう。
前述したように、光を浴びることでメラトニンの分泌が抑制されてしまうため、眠れないからといって、横になったままスマートフォンやタブレット等を操作することは避けてください。
なお、特に注意が必要となるケースは、「何日間も眠ることができない」といった状況になった場合です。
「上手く眠れなくなってしまった」「眠っても熟睡感がない」「日中に強烈な眠気を感じる」といった場合は、不眠症をはじめとした病気の可能性もあります。このような場合は、専門医を受診するなど、医師へ相談するようにしてください。