「五月病」は正式な病名ではありませんが、誰にでも起こりうる不調と考えられおり、長期化・深刻化すると適応障害やうつ病といった精神疾患に発展してしまうおそれがあります。

また、一部の専門家によれば、６月にもメンタルヘルス等の不調者があらわれる傾向があり、５～６月は若手社員等の不調対策が重要となります。

本記事では、五月病の症状や対応について取り上げています。

五月病とは？基礎知識と注意点

大型連休後に注意が必要な五月病とは

例年、ゴールデンウイークが終わる頃、メディアやSNSなどでよく「五月病」という言葉に触れる機会が多いと思います。

また、特に新卒入社後の若手社員等が５月病の症状に悩むケースもあるようで、その背景には四月という新年度の環境変化による影響があるとされています。

環境変化については、就職・転勤、異動といった仕事に関するものや、プライベートにおける子供の受験、入学といった家庭環境も関連があり、新たな環境での生活がスタートする節目です。

そんな新生活を経験する四月も終わりに差し掛かると、そこから五月の初めにかけて大型連休があり、緊張の糸が切れることで五月病の症状が引き起こされると考えられています。

なお、「五月病」という名称は有名である者の、医学的な病名ではありませんが、一般的にメンタルヘルス不調のような症状があらわれることを指しています。

五月病の症状と長引く際の注意点

続いて五月病の症状についてです。五月病は軽いものとして捉えられがちですが、症状が長引くと本格的な不調につながる恐れがあるため十分な注意が必要になります。

五月病の症状には、軽いうつ症状の出現が一般的なものとして挙げられますが、身体面では不眠や朝に起きられないこと、動悸、疲れやすさ、食欲不振、頭痛、腹痛などの症状もあるようです。

また、特に心理面では不安感・無気力、イライラとした感情や思考能力の低下および「仕事に行きたくない」と考えてしまうようなケースが当てはまるとされています。

これらの症状が長期化してしまうと、うつ病や適応障害をはじめとした精神疾患に発展してしまう可能性があるため、人事担当者や部下を持つ管理職の方は早めの対策を行うことが必要です。

なお、こうした症状の重さは人によって様々ですので、本人としても「五月病だろう」程度にしか感じていなくとも、実際には症状が深刻化してしまう方もいることが考えられています。

そのため、「仕事に遅刻・欠勤することが多くなった」「体調がすぐれない」といった従業員がいる場合には、精神科・心療内科などの専門機関にて受診してもらうようにしましょう。

五月病対策で人事担当者・管理職等ができること

五月病が疑われる社員で気を付けたい項目（チェックリスト）

五月病の症状については前述したようなものが代表的ですが、こうしたメンタルヘルス等に関する不調を抱えている従業員本人は、その深刻さについて気づいていないケースや、誰かに相談しづらいと考えている場合もあります。

そのため、特に五月病が疑われるシーズンでは、人事担当者や管理職といった周囲の人が部下の体調などの変化に気を配り、適切な対応を行うことが大切です。

具体的には、以下のチェックリストのような様子がある場合、またはこれらの症状が続いている人がいるようなケースでは、社内の産業保健スタッフ（産業医、保健師）などといったスタッフに相談してみてください。

• □仕事の能率が低下している
• □仕事のミスが増えている
• □（特に月曜日等）遅刻や欠勤が増えた
• □なんとなく元気ない
• □食欲がなさそうな様子
• □服装が乱れている　など

人事担当者・管理職等が取り組める五月病対策

五月病の症状が長期化・深刻化しないために企業の人事担当者や管理職ができることは、部下と適切にコミュニケーションをとり、改善に向けた施策に取り組むことです。

また、中でも最も取り組みやすい対策として挙げられるのが「長期休暇明けは上司から積極的に声掛けを行うこと」と言われています。

上司や管理職等からのこうした声掛けによって、従業員は「職場に受け入れられている」「自分も職場の一員として認められている」と感じることができると考えられています。

こうしたコミュニケーションを行う中で、部下が話を聞いてほしそうであれば積極的に耳を傾けるようにします。ただし、不調の内容や休日の過ごし方など、根掘り葉掘り聞き出そうとすることは止めましょう。

話を聞く中で、必要であれば業務に関する助言を行うことや、一時的に仕事を分担する、締め切りを伸ばしたりといった対応を行いましょう。

一方で、過度なコミュニケーションは逆効果になる恐れがあります。例えば、無理やり飲み会に誘うことや、過剰な叱咤激励は避けた方が良いとされています。

いずれにせよ、相談の内容や症状が深刻である場合は、その場での対応は避け、必ず専門家に相談するようにしてください。

五月病について理解を深めることが対策になる

五月病対策として有効なセルフケア

五月病対策でもう一つ大切なのが、従業員が自らが行う対策、「セルフケア」とされています。

具体的には以下１～６の取組みがあげられますが、これはメンタルヘルス不調対策において基本となる「セルフケア」とも呼ばれるものであり、効果が期待できます。

セルフケアの例

１．ストレスから距離を置く：休日はゆっくり休む。また、趣味の時間を持つ。

２．ストレスを受け入れる：「頑張らなくて良い」と思い、とりあえず出社してみる

３．人と交流する：ネガティブな感情や孤独、退屈を和らげる効果がある

４．運動の習慣化：ウォーキングやヨガ等、適度な運動の習慣化で身体をリラックスさせる

５．日光を浴びる：「セロトニン」が分泌され、体調や体内時計が改善される効果がある

６．呼吸を整える：深呼吸を行うことで緊張を緩和する

五月病とその対策に関する理解を深める

前述したように、五月病は正式な病名ではないものの、決して看過できない健康課題といえます。

五月病の症状が深刻化することで、適応障害やうつ病といった精神疾患に発展してしまうおそれがあるため、企業としても早めに改善施策に取り組むことや、場合によっては専門医を受診することが欠かせないものになります。

自分で取り組める対策についても取り上げましたが、決して無理をせず、不安に感じた場合は会社の産業医や専門機関へ相談するようにしてください。

また、職場においてこうした不調に関するリテラシーを高めておくことも大切な要素です。

当ブログSanpo Naviでは、五月病をはじめ産業保健に関するさまざまな教材を提供していますので、人事担当者や産業医などの専門スタッフの方は、よろしければご活用ください。

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