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2025年施行|育児介護休業法改正のポイントと企業の対応【わかりやすい】
2024年に改正された育児介護休業法が、2025年4月と10月に施行されます。
就業規則の改定や制度設計など対応事項が多く、「何をいつまでに対応すれば良いのか分からない」と悩む人事労務担当者も多いでしょう。
本記事では、改正・育児介護休業法について、人事労務担当者が押さえておくべき事項と準備の進め方を説明します。具体的に何から始めればよいかお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
育児・介護休業法とは?
育児・介護休業法とは、少子高齢化と労働力人口の減少といった社会課題への対策として、男性・女性ともに家庭生活(育児・介護)と仕事の両立を目的とした法律です。1991年に制定後、時代の変化とともに何度も改正がされています。
2021年施行の改正法では「子の看護休暇」や「介護休暇」を時間単位で全ての労働者が取得できるようになり、2023年施行の改正法では、企業に対して育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられるなど、段階的に制度が見直されてきました。
施行日は2025年4月と10月
2024年10月にも一部が改正され、2025年4月と10月の2回にわけて施行されます。
4月の施行では、子の看護休暇の拡充や残業免除の対象拡大など、主に既存の制度拡充が中心です。
10月の施行では、フルタイム勤務と育児との両立を支援する新制度の創設など、体制整備が必要な改正内容が含まれます。従業員との協議や新制度設計に時間がかかるため、早めに準備を進めておきましょう。
【2025年4月1日施行】育児介護休業法の改正ポイント
2025年4月1日施行分のポイントは次の4つです。
- 子どもの成長過程に合わせた育児との両立支援の拡充
- 男性の育児休業取得状況の公表義務範囲拡大
- 介護休暇の取得要件緩和とテレワーク導入
- 介護離職を防ぐための個別対応の義務化
1.子どもの成長過程に合わせた育児との両立支援の拡充
育児中の従業員を支えるための制度の充実を目指し、次の3つの点が改正されました。
就業規則や労使協定等の見直しをしましょう。
- 子の看護休暇の対象範囲と取得理由
- 所定外労働の制限(残業免除)対象拡大
- 短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワーク追加
子の看護休暇の対象範囲と取得理由
出典「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(厚生労働省)
看護休暇を取得できる子どもの年齢が小学校3年生まで広がります。
また、「看護に限定されない」という意味で、子の看護等休暇に名称変更されることもポイントです。
病気やケガ、予防接種だけでなく、インフルエンザなどの感染症による学級閉鎖や、入園(入学)・卒園式でも取得可能となります。
さらに、継続雇用期間6か月未満の従業員は労使協定により休暇取得の対象外となっていましたが、改正後は週3日以上勤務している従業員であれば取得可能になります。
所定外労働の制限(残業免除)対象拡大
出典「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(厚生労働省)
残業免除の請求可能範囲が、小学校就学前までの子を養育する労働者に拡大されます。
ただし、残業時間を制限することで、事業の運営に支障をきたす場合はこの限りではありません。事業の運営に支障をきたすかどうかは、従業員の仕事内容や忙しさ、代替人員の有無などにより、客観的に判断する必要があります。
短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワーク追加
出典「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(厚生労働省)
業務の性質上、短時間勤務制度を適用できない従業員には、企業が代替措置を講じる義務があります。従来の育児休暇等の措置や始業時刻の調整に加え、テレワークが追加されました。
また、3歳未満の子どもを養育する従業員がテレワークを選択できる制度を整備することも、努力義務として課せられました。
2.男性の育児休業取得率の公表義務範囲拡大
育児・介護休業法では、男性の育児休業の取得状況を年1回公表することが義務づけられています。改正前は従業員数が1,000人を超える企業のみが対象でしたが、改正後は300人を超える企業からが対象となります。
公表前事業年度の終了後、おおむね3か月以内に、インターネットなど誰でも閲覧ができる方法で公表しましょう。「両立支援のひろば」や、自社ホームページでの公表が推奨されています。
3.介護休暇の取得要件拡大とテレワーク導入
出典「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(厚生労働省)
これまで介護休暇取得の対象外とされていた継続雇用期間が6か月未満の従業員にも、介護休暇の取得が認められるようになります。また、要介護状態の家族を介護する従業員が、テレワークを選択できる体制を整備することが努力義務となります。
4.介護離職を防ぐための個別対応と体制整備
家族の介護が必要となった従業員に対して、介護離職を防止するために個別の周知と意向確認が義務づけられます。周知する内容は、次の3つです。
- 介護休業に関する制度や両立支援制度の内容
- 制度を利用する際の窓口、担当者(例:人事部など)
- 介護休業給付金に関する説明
上記について面談や書面、FAX、電子メールなどの方法で周知し、意向を確認します。休暇取得や制度利用を遠慮させるような形で説明したり、伝えたりしないよう注意しましょう。
また、介護の必要が生じる前の早い段階からの支援として、40歳到達時に介護休業制度などの情報提供が義務化されます。次のいずれかの期間で提供しなければなりません。
- 40歳の誕生日前日に属する年度(1年間)
- 40歳の誕生日の翌日から1年間
さらに、介護休業・介護両立支援制度等が円滑に利用できるよう、体制の整備として以下の4つが義務づけられます。
- 研修の実施
- 相談窓口の設置
- 休暇や制度利用の事例収集と提供
- 利用促進についての方針周知
【2025年10月1日施行】育児介護休業法の改正ポイント
2025年10月1日の施行で義務化されるポイントは以下の2つです。
- 3歳~入学前までの育児を支援する働き方の整備
- 働き方の意向聴取と配慮
3歳~就学前までの育児を支援する柔軟な働き方の整備
3歳~小学校入学前の子どもを育てる従業員向けに、企業は次の5つから2つ以上の制度を選択し、整備することが求められます。
- 始業時刻などの変更(フレックスタイム制や時差出勤)
- テレワーク等(月10日以上/原則、時間単位で利用可能)
- 保育施設の設置運営等(ベビーシッターの手配や費用補助を含む)
- 養育両立支援休暇の付与(年10日以上/原則、時間単位で取得可能)
- 短時間勤務制度(原則として1日6時間の勤務)
また、3歳未満の子どもを育てる従業員に対して、制度の利用対象になる前に個別に周知し、意向確認を行うことが求められます。
周知時期は、従業員の子どもが3歳の誕生日を迎える1か月前までの1年間で行います。つまり、子どもが1歳11か月~2歳11か月になる翌日までに実施しなければなりません。
働き方の意向聴取と配慮
従業員から妊娠や出産の申出があった時点と、子どもが3歳になるまでの時期に、以下の項目について意向確認することが求められます。働き方の希望を尋ねるもので、可能な範囲で配慮することが必要です。
- 勤務時間帯
- 勤務地
- 両立支援制度等の利用期間
- 業務量や労働条件の見直し など
育児介護休業法改正で企業に求められる対応は?
法改正により、企業に求められる3つの対応について解説します。
- 就業規則や労使協定の見直し
- 育休取得状況の調査
- 社内体制の整備
1.就業規則や労使協定の見直し
休暇や勤務制度の変更が必要となるため、就業規則や労使協定の改定が必要となります。具体的には、以下の改正内容を就業規則に反映させることが求められます。
- 子の看護休暇
- 所定外労働の制限対象
- 介護休暇の取得要件
- 柔軟な働き方制度の新設
厚生労働省のホームページでは、育児・介護休業等に関する規則の規定例が掲載されていますので、参考にしてみてください。
2.従業員数の把握と育休取得状況の調査
男性の育児休業取得状況を公表することが義務化されます。そのため、まずは自社が公表義務の対象に該当するか、従業員数の把握を行いましょう。従業員数は、以下の「常時雇用する労働者」の数でカウントします。正社員だけでなく、雇用期間によってはパートやアルバイトも含むため、注意しましょう。
【常時雇用する労働者の条件】
- 雇用期間の定めがない従業員
- 1年以上にわたって雇用されている従業員
- 雇用時から1年以上継続して雇用される見込みのある従業員
公表義務対象の企業であることが確認できたら、育児休業の取得状況を確認しましょう。取得状況は、次の2つの指標のいずれかで把握し、事業年度ごとで公表することが必要です。
出典「2025年4月から、男性労働者の育児休業取得率等の公表が従業員が300人超1,000人以下の企業にも義務化されます」(厚生労働省)
3.社内体制の整備
改正で変更が求められる事項に関する社内体制の整備も必要です。
まず、個別周知と意向確認の実施について、誰がどの方法で行うのか、運用フローを決定します。例えば、従業員から妊娠の報告があった場合、制度や申出先をまとめた書類と働き方の希望を申請する用紙を渡して説明するなどの方法です。
また、新たに導入する制度について、管理職への教育も必要です。新制度の理解と部下からの相談への適切な対応方法を学べるよう、研修を行いましょう。
さらに、介護との両立支援のための体制構築も求められます。相談窓口を設置し、40歳に到達する従業員への情報提供の仕組みを整えます。介護休業を取得しやすい職場環境づくりに向けた施策も検討することが必要です。
従業員に周知する書面の書式
従業員への周知や意向確認を書面で行う場合、厚生労働省で公開されている以下の様式を参考にするとよいでしょう。
- 育児:妊娠・出産申出時
- 育児:子どもが3歳になる前まで
- 介護との両立支援制度
出典「育児・介護休業等に関する規則の規定例」(厚生労働省)
育児介護休業法改正への対応で得られるメリットは?
法改正に対応することで得られるメリットとして、次の3つが挙げられます。
- 従業員の離職防止
- 両立困難による不調の予防
- 企業イメージの向上
従業員の離職防止
両立支援の体制が整うことで、従業員の離職防止につながります。法改正で求められる制度の整備と運用を通して、従業員が気兼ねなく育児や介護のための休暇取得ができる社内風土を構築できます。
また、企業から定期的に働き方について意向を確認することで、従業員は長期的なキャリア形成について話しあう機会が生まれるでしょう。働く意欲があっても、育児や介護のためにやむを得ずキャリアを諦めたり、離職してしまったりする状況を防ぎ、離職防止につながります。
両立困難による不調の予防
育児や介護があっても、十分に休みを取れずに業務を抱えすぎることで生じる心身の不調を予防できます。心身の不調をきたす従業員が増加すると企業の生産性にも影響します。
法改正への対応により、育児や介護による休業が「当たり前」という社内風土が醸成されると、従業員は休暇を取得しやすくなるでしょう。また、休業する従業員がいても業務に支障をきたさないよう、標準化や情報共有が進み、生産性の向上にもつながる可能性があります。
企業イメージの向上
育児や介護と仕事の両立支援は、健康経営の指標の一つとして注目されています。そのため、対外的に「働きやすい企業」であると企業イメージの向上につながるでしょう。人材採用での優位性を確立でき、従業員の定着率も高まる効果が期待できます。
また、子育てとの両立支援を重視している企業は、一定の要件を満たせば、くるみん認定やトライくるみん認定を受けられます。厚生労働大臣の認定であり、子育てサポート企業として、対外的にも評価されるでしょう。
改正育児介護休業法の運用に向けて、早めの体制整備を
2025年施行に向けて、就業規則の見直しや従業員への周知、研修の実施など、人事労務担当者は事前の準備が必要です。
従業員が働きやすい環境づくりのため、企業は健康経営を推進することが重要視されています。そのためにも、育児介護休業法を適切に運用できる体制を整えることで、従業員の満足度や生産性向上につながります。
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