〈産業医コラム〉一歩進んだ健康経営 メタボ対策で終わらせない、女性の健康をサポートし女性活躍支援へ
医学博士 産業医
労働衛生コンサルタント 麻酔科専門医
升田 茉莉子
健康経営とういう言葉が定着して大分日がたちますが皆さんその定義は御存じでしょうか。
「従業員の健康保持・増進の取り組みが、将来的に収益性を高める投資であるとの考えのもと健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること(経済産業省提唱)」とされています。
この言葉を聞いてなるほどとは思っても
- 健康経営を取り組みたいが具体的に従業員の健康保持増進の取り組みとして何をしていけば効果的なのかわからない
- 健康経営の取り組みを始め、いくつか施策を実施しているが、成果を感じられない
と悩まれている企業担当者の方も多いかもしれません。
まず健康経営の手始めによく行われるのがメタボ対策として食堂のメニュー改善、運動啓発としてウォーキングイベントの開催といったところでしょうか。
これらの対策はもちろん意味があることですが、メタボ対策は継続しているが次に何をしていけばいいのだろうと考えている担当者の方もいらっしゃるのはないでしょうか。
そこで私がご提案したいのは
一歩進んだ健康経営として女性の健康支援に取り組んでいくことです。
肥満である割合は男性 33.0%、女性22.3%であり、この 10 年間でみると、女性では有意な増減はみられないが、男性は増加傾向、メタボ対策は男性の健康課題により重きを置いているといえるでしょう。1)
対して女性の健康課題というのは
- ホルモンのライフステージによる変化により様々な不調があること
- 比較的若い年齢からがんの発症リスクがある(乳がん、子宮頸がん)
などが男性との違いとしてあげられます。
現在日本の労働者は四割以上が女性であり少子高齢化が世界の中で最速で進む日本において女性がライフステージの変化による不調や働き辛さを乗り越えて生き生きと働き続けてもらうことは最優先な社会課題と言えます。
それにも関わらず女性労働者の半数以上が職場で女性特有の問題で困ったことがあるという調査結果があります。2)
女性への健康サポートは今すぐ取り組んでいく課題と言えるでしょう。
女性目線の健康経営として挙げられる具体的な取り組み事例としては
- 社内で女性の健康に対するリテラシーを高める(セミナ―開催など)
- 女性に限らず体調不良時休める仕組みづくりを行う
- 相談窓口の設置
等々色々とありますがまずは自社では何が取り組めるのか、初めの一歩を考えるところから始めてみませんか。
新たに予算を採らなくても既存の社内産業衛生スタッフ(産業医、保健師)をご活用いただくことですぐ取り組める取り組みもあるかもしれません。新しく書ける予算がないとあきらめず既存のスタッフや資源を生かして何が取り組めるか考えていただければと思います。
1)令和元年(2019)厚生労働省 国民の健康・栄養調査より
2)働く女性の健康推進に関する実態調査 2018
文章出典:株式会社イーウェル「健康コラム」より寄稿