【2021年】改正への対応は?「事務所則」と「安衛則」の要点まとめ
最終更新日:2021年12月1日
2021年12月「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則 の一部を改正する省令」が公布されたことにより、事務所則と安衛則が部分的に改正となりますが、職場の準備・対応はお済みでしょうか。
本記事では「改正でどこが変わるの?」という部分について、要点をまとめて紹介します。
目次[非表示]
事務所則と安衛則の改正では「照度」が要点に
2021年、なぜ「事務所則」「安衛則」は改正されるのか
2021年、事務所則(事務所衛生基準規則)と安衛則(労働安全衛生規則)が一部改正され、同年12月上旬から施行されることとなりました。
事務所則は、主にオフィス職場において労働者が健康的に働くための「衛生のルール」が定められたもので、1972年に制定されました。
事務所則はおよそ50年前に制定された規則です。よって、制定当時と現在の社会状況の変化に合わせ、改正されることとなったのです。
改正された事務所則では「照度の基準」が変更された
改正前の事務所則の第10条1項(※)には、事務所・オフィスにおける明るさの基準が3つの区分で定められており、「精密な作業」で300ルクス以上。「普通の作業」では150ルクス以上。「粗な作業」で70ルクス以上とされていました。
改正後は、この3区分を「一般的な事務作業」と「付随的な事務作業」の2区分へと変更。
また、照度の基準についても「一般的な事務作業」で300ルクス以上、「付随的な事務作業」で150ルクス以上となり、2021年12月上旬以降はこちらの区分・数値が基準となりますので、この数字を覚えておきましょう。
事務所則改正の要点・照度の基準「ルクス」はどう測定する?
「ルクス」とは、照明の明るさを示す単位です。この数値が高いほど明るい状態であることを表しています。
また、このルクスという単位は、照らされた箇所の明るさでありますので、オフィス全体が明るい感じがしていても、デスクの上や執務のスペースが暗い場合等には、基準値を満たせていない恐れがあるため注意してください。
なお、事務所則に定められているルクスは照度計で計測することが出来ます。
その他にも、スマートフォンアプリで簡易的に照度計測ができるものもありますので、これらのツールを用いて測定してみましょう。
2021年:事務所則の改正で変わった「トイレの設置基準」
改正された事務所則では、トイレの設置にも新ルール
事務所則と安衛則にはトイレに関するルールがあります。
トイレに関しては男女の区分けやその個数が定められていますが、改正によって新たに「独立個室型の便所」(※1)について法令で位置付けられているのです。
改正前の事務所則の第17条1項(※2)には、トイレ(便所)の設置に関する以下のよう規定されていました。
※1 「独立個室型の便所」とは?
男性用と女性用に区別しない四方を壁等で囲まれた一個の便房により構成される便所。
※2 事務所則:改正前のトイレ(便所)設置に関する規定規程
・男性用と女性用に区別すること。
・男性用大便所の便房の数は、同時に就業する男性労働者60人以内ごとに1個以上とすること。
・男性用小便所の箇所数は、同時に就業する男性労働者30人以内ごとに1個以上とすること。
・女性用便所の便房の数は、同時に就業する女性労働者20人以内ごとに1個以上とすること。
男性用・女性用トイレの区別は必要だが、少人数のオフィスでは例外も
改正後には、男性用と女性用で区別する原則は維持されています。
しかし、少人数の事業場においては例外のルールもできおり、常時働く従業員が10名以内の場合は「独立個室型の便所を設けることで足りることとする」となっています。
つまり、従業員10名以内のオフィス等であれば、男女で区分けする必要が無い代わりに、独立した個室のトイレを設置することで改正事務所則の規定をクリアすることができます。
また、男性用と女性用に区別したトイレを設置した上で、独立個室型のトイレを設置した場合には「男性用大便所の便房、男性用小便所及び女性用便所の便房をそれぞれ一定程度設置したもの(※)として取り扱うことができるものとする」とされています。
※男性用大便所又は女性用便所の便房の数若しくは男性用小便所の箇所数を算定する際に基準とする
当該事業場における同時に就業する労働者の数について、独立個室型の便所1個につき男女それぞれ十人ずつ減ずることができることとすること。
安衛則の改正では「救急用具」の規定変更が要点に
安衛則の改正で定められた「救急用具」に関するルール
次に「救急用具」に関するルールの変更(安衛則の改正)についてです。
救急用具については、安衛則の第633条にて主に準備と周知(備付け場所・使用法)、救急用具を清潔に保つことが定められており、第634条には「揃えておくべき救急用具の内容」が規定されていました(※1)。
しかし、事業場ごとに負傷や疾病の発生状況が異なることから、安衛則の改正によって第634条は削除となりました。
また、第633条の救急用具の準備についても「事業場において労働災害等により労働者が負傷し、又は疾病にり患した場合には、その場で応急手当を行うことよりも速やかに医療機関に搬送することが基本である(※2)」へと改正になります。
※1 労働安全衛生規則における救急用具の規定
救急用具
事業者は、負傷者の手当に必要な救急用具及び材料を備え、その備付け場所及び使用方法を労働者に周知させなければならない。
2 事業者は、前項の救急用具及び材料を常時清潔に保たなければならない。
救急用具の内容
事業者は、前条第一項の救急用具及び材料として、少なくとも、次の品目を備えなければならない。
一 ほう帯材料、ピンセツト及び消毒薬
二 高熱物体を取り扱う作業場その他火傷のおそれのある作業場については、火傷薬
三 重傷者を生ずるおそれのある作業場については、止血帯、副木、担架等
※2 出典:厚生労働省「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案概要」
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改正となる事務所則と安衛則のポイントについて紹介しました。
なお、これらの規則については、産業医による職場巡視を活用し、ルールに適合しているかをチェックしてもらうことも有用です。
従業員が安全・快適に過ごせるよう、これを機に職場環境を見直してみてはいかがでしょうか。
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