〈前編〉12万件のメンタル相談に応えてきた専門家に聞く、コロナ禍のストレス対応法
2021年は1月から緊急事態宣言が出されました。
不安の多いコロナ禍、個人・企業にはどのようなストレス対策が必要になるのか。
横浜労災病院のメンタルヘルスセンター長として、20年間にわたりメール相談に応えてきた山本晴義先生にお話しを伺いました。
※オンラインによる取材
20年にわたり、12万件以上のメール相談を受けてきた
最初に、山本晴義先生のご活動について教えていただけますか。
独立行政法人 労働者健康安全機構 横浜労災病院 勤労者メンタルヘルスセンター長の山本晴義と申します。
2000年より、労災病院の社会奉仕活動として「勤労者 心のメール相談」を開始しました。
「勤労者」とありますが、働く方だけでなく、働く方のご家族の方、職場の方、産業医、安全衛生スタッフなど、様々な方からのメール相談を受け付けています。
「勤労者 心のメール相談」の利用は無料で、すべて私がお返事を出しています。
このようにして、2020年の開始以来、20年間で12万件以上、メンタルヘルスの相談を受けてきました。
また、私は厚労省が運営している「こころの耳」のスーパーバイザーも務めています。
出典:横浜労災病院「勤労者 心のメール相談」より
新型コロナウイルスが世界的に流行していますが、メール相談の件数や内容にはどのような変化がありましたか。
新型コロナの流行前と比べ、寄せられるメール相談の件数は増えています。
特に、ここ最近では月に1,000件を超えるメンタルヘルスの相談メールが届くようになりました。
やはり新型コロナウイルスに関連した相談も非常に多く、例えば「新型コロナウイルスの影響で仕事を失ってしまった」「感染が怖くて出勤することが出来ない」といったものがあります。
また、働き方がテレワーク等に切り替わり「生活習慣が乱れ、昼夜が逆転してしまった」「仕事とプライベートのオン・オフの切り替えが難しくなってしまった」そういった相談も増えています。
新しいライフスタイルの中で、ストレスと上手に付き合うには?
メール相談について、先生はどのような対応をされているのでしょうか。
相談内容によって対応は様々ですが、いただいたメールは24時間以内に返信することを心がけています。
中には「もう死にたいです」といったメッセージも寄せられますので、そういった場合には、メールの中で、まず「死なないこと」を約束してもらいます。
また、相談される方は、上司・同僚・友達・家族といった頼りにできる人が身近にいないケースも多く、精神的なサポーターを求めていることもあるのです。
ですので、メンタルヘルスの状況をヒアリングし、主治医や産業医等に相談することを勧めることもあります。
また、その際に「過去と他人は変えられないけれど、未来と自分は変えられるのです」というメッセージを添え、希望を持ってもらえるようアドバイスしています。
新型コロナとメンタルヘルス不調、両方の対策が求められていますね。
メール相談を通じて、新型コロナとストレスが深く関係していることを実感しています。
一つは、コロナ禍によりライフスタイルが大きく変わってしまったことで、ストレスの発散が上手くできなくなってしまったことにあります。
例えば、スポーツが好きな方、旅行が好きな方が、外出自粛によってストレスを溜め込んでしまうといった相談もあります。
かくいう私も、週3日スポーツジムに通って汗を流していましたが、今はそれも止めています。
また、コロナの流行前は、講演やセミナーで日本全国を飛び回っていましたので、各地で温泉巡りをするのも好きでした。
しかし、新型コロナの流行によって講演のほとんどがオンラインに切り替わり、それも出来なくなってしまいました。
ですが、そこで出来ないことを悔やむだけでなく、それに代わるストレス発散法を見つけ、個人でもストレスと上手に付き合っていくセルフケアに取り組んでいくことが大切になります。
後編へつづく
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