ストレスチェックを「職場でやる目的」ってなに?制度とストレス予防策を解説

2015年にスタートし、50人以上の労働者がいる事業場なら毎年1回の実施が義務づけられている「ストレスチェック」。

開始から4年経ち、義務化されたからやっているけれど「そもそもなぜやっているのか?」という理解は、あまり進んでいないのではないでしょうか。

そこで、今回はストレスチェック制度が生まれた背景とその目的についてお伝えします。


目次[非表示]

  1. 1.ストレスチェック義務化の目的~精神障害・自殺者の対策として
  2. 2.ストレスチェックを無意味なものにしないために~「予防」の知識
    1. 2.1.1次予防:メンタルヘルスを未然防止する
    2. 2.2.2次予防:メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う
    3. 2.3.3次予防:メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰支援等を行う
  3. 3.「職場で」ストレスチェックを行う意味って?
  4. 4.〈まとめ〉ストレスチェックの目的についておさらい


ストレスチェック義務化の目的~精神障害・自殺者の対策として

まずはストレスチェック制度が作られた背景には、働く人の「精神障害」や「自殺」があるといえます。

2018年の労働に関する「精神障害」と「自殺」の状況について見てみましょう。

●働く人に関する「精神障害」「自殺」の状況

・厚生労働省が公開した平成30年度「過労死等の労災補償状況によると、2018年に精神障害の労災補償請求があった件数は1,820件(労災の支給決定件数は465件)で、2017年と比較すると88件増加している。

・警察庁が公開した「平成30年中における自殺の状況」では、2018年の1年間で働く人(被雇用者)の自殺は6,447件発生した(2017年は6,432件)。

・厚生労働省「労働安全衛生調査」(2018年)では、職業生活におけるストレスに関する質問で、【仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスとなっていると感じる事柄がある】と回答した労働者 58.3%(2016年は 59.5%)いることがわかっている。

以上の結果からも、労働におけるメンタルヘルスの問題は非常に深刻であり、企業が即座に取り組むべき課題であるといえます。

しかし、ストレスチェック制度の開始以前は、企業側から「積極的なストレス対策」が行われることは、残念ながら多くありませんでした

こうした背景を踏まえ、平成 26 年 6 月 25 日に公布された「労働安全衛生法の一部を改正する法律」(平成 26 年法律第 82 号)により、心理的な負担の程度を把握するための検査及びその結果に基づく面接指導の実施等を内容とした「ストレスチェック制度」が新たに義務化されました。

要するに、企業がメンタルヘルスの問題に取り組むきっかけとして、ストレスチェック制度がスタートしたのです。



ストレスチェックを無意味なものにしないために~「予防」の知識

ストレスチェックを「やっているだけ」の、無意味なものにしないためにも、ストレスチェックの目的を確認しておきましょう。

そこで重要になるのが「予防」という考え方です。

メンタルヘルス不調を予防するためには「1次予防」「2次予防」「3次予防」と、3つの段階があるといわれています。一つずつみていきましょう。

1次予防:メンタルヘルスを未然防止する

「1次予防」とは、メンタル不調が起こる前に、労働者と企業がまず「ストレス」の存在に気付くこと。そして、ストレスに対して対策をとり予防をする段階です。

ストレスチェックの「1次予防的な目的」として、以下の2つが挙げられます。

セルフケアの視点:従業員が自分自身のストレス状態に気づき「個人としてのストレスマネジメント」を行うきっかけ。

職場環境改善の視点:企業が職場のストレス状態を把握し「職場としてのストレスマネジメント」を行うきっかけ。

そして、ストレスチェック実施の目的はこの1次予防にあたります

つまり、従業員と職場の「ストレス状態」を測定することで、本格的なメンタル不調になる前に対策していくという目的があるのです。

2次予防:メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う

「2次予防」とは、ストレス不調者を早めに発見し対応する段階です。

従業員自身が自分の状態に気づき自発的に相談したり、いつもと違う同僚や部下の様子に周囲の人が気づくことで、産業医面談、医療機関への受診などの適切な措置を行います。

メンタルヘルス不調は発見が遅れるほど、改善に時間がかかるといわれています。

そのため「深刻化する前に」企業が支援を行い、本格的な不調に陥ることのないよう対策を講じることが重要です。

3次予防:メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰支援等を行う

「3次予防」とは、メンタルヘルス不調となって休職してしまった社員に、職場支援などを行う段階です。

残念ながらメンタルヘルス不調によって休職になってしまった場合も、復職をゴールに見据えた3次予防に取り組むことで、復職後の再休職を防止していきます。



「職場で」ストレスチェックを行う意味って?

繰り返しになりますが、ストレスチェック制度の主な目的は「メンタルヘルス不調の未然防止」である1次予防です。

ストレスチェックの目的が「労働者のストレス状況を企業が把握するため」と捉えられがちなのですが、本来の目的は労働者個人がストレスに対する気づきを促すことや、職場環境の改善をすることです。

その結果として「メンタルヘルス不調者を出さないよう未然に防止すること」。

つまり「働く人」と「働く環境」のストレス対策であるため、職場で行う意味があるのです。

単純に「労働者個人のストレス状況を把握するだけ」では、職場職場のメンタルヘルス対策にはつながりません

【補足】

厚生労働省のマニュアルでは「ストレスチェック制度の基本的な考え方」を、以下のように 記載しています。

事業者は、ストレスチェック制度が、メンタルヘルス不調の未然防止だけでなく、従業員のストレス状況の改善及び働きやすい職場の実現を通じて生産性の向上にもつながるものであることに留意し、事業経営の一環として、積極的に本制度の活用を進めていくことが望ましい。

※厚生労働省『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』より抜粋


〈まとめ〉ストレスチェックの目的についておさらい

以上を踏まえストレスチェック制度の目的を簡潔にまとめると、以下の3点です。

  1. 全ての事業場がメンタルヘルス対策を実施すること
  2. メンタルヘルス不調の未然防止(1次予防)をすること
  3. 働きやすい職場の実現により生産性向上につなげること

ストレスチェックの「目的」&「やる意味」について確認できましたか?

個々の従業員がどのようなストレス状態にあるかを把握することはもちろん、未然にメンタル不調の芽を摘むことが大切です。

そして、ストレスチェックを活用するためには「メンタル不調を起こさない職場環境づくり」に繋げていくことが重要です。

せっかく職場で行ったストレスチェックが、無意味な活動にならないようにしていきましょう。



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